23話:パーティーの絆
どうも、眠れぬ森です。
二人組みの訓練をクリアしたライアー達はパーティーでの訓練に入ります。
拙い文章ですがよろしくお願いいたします。
ジェームスとリーネの訓練から数日後、次の訓練段階に移るとの事で二人にギルドへと呼び出されていた。
ギルドへ入ると二人が既に待っており、俺たちが来たのを見てジェームスとリーネが話し出した。
「それじゃあ、今日からの訓練について説明をするよ。今日からは四人パーティーで魔物討伐で訓練を行う。とりあえず目標はEランククエストのコボルト討伐から始めようと思う。」
「今回の訓練はあくまで様子見ですわ。四人が私とジェームスの訓練で学んだことを活かしてて戦えるかの確認です〜。」
その言葉に俺たちは頷く。二人一組の訓練をクリアした後、俺たちはジェームスとリーネにパーティーの動きの再確認を言われていた。そこで、この数日は学園の自主訓練時間を使いパーティーの動きを確認した。それを試されるのだろう。
「前回も倒している相手とはいえ、油断せずにクエストを進めてもらいたい。っと、忘れてたけど、ライアー君に話があるんだけどいいかな?」
「どうした?」
ジェームスは俺に話を振ると、リーネを見て頷いた。すると、リーネはポケットから一つの皮袋を取り出して俺に渡してきた。
「これはなんだ?」
「収納袋ですわぁ。」
俺が問いかけると、リーネは微笑みながら答えた。意味が分からずにジェームスに視線を向けると、俺を見ながら言ってきた。
「ライアー君は自分の武器が何か分かっているかい。」
「当然だ、シムエスMk.IIにブラックホーク、ガーディアン、霧雨、あとは対物ライフルだな。」
本来は対魔物ライフルなのだが、そこは言わないほうがいいと思いそう答えた。すると、ジェームスが肩を竦めながら言ってきた。
「初めのコボルト戦の時から思っていたけど、その武装は普通は担いで戦闘するのに向いていないよね?君は確かに後方支援だけど、それ担ぎながら戦うのって凄く効率悪いと思うよ。」
ジェームスの言葉に俺は一瞬呆気に取られたが、考えてみたらそうだろう。長物を二丁担ぎながら戦闘して、更に前に出ることもある。傭兵時代は狙撃兵として任務を行っていたので考えた事もなかったが、言われてみれば相当動きにくいかもしれない。
そんな俺を見たジェームスは困ったような笑顔を浮かべながら話を続けた。
「だからさ、君にこの収納袋をあげるよ。リーネのお下がりだけど、無いよりはマシだろ?」
「どうぞお使いくださいませ〜。」
「ありがとう、使わせてもらう。」
リーネの言葉にそう答えると、俺は早速長物二丁を収納袋に入れた。二丁はすんなりと入ったが、取り出し方が分からない。
「リーネ、これはどうすれば取り出せるんだ?」
「お使いの武器の持った感じを頭に浮かべながら手を入れるとそれが出てきますわ〜。」
その言葉に、試しにシムエスMk.IIを頭に浮かべながら手を入れると、触りなれた感触がした。握って引き抜くと、それはシムエスMk.IIだった。再び手を入れ、今度は対魔物ライフルを思い浮かべ、手に感触を感じると共に引き抜くと対魔物ライフルが姿を見せた。
「なるほど、確かに使い勝手がいいな。ありがとう、リーネ。」
「いえいえ〜、お気に召したのなら良かったですわ〜♪」
俺の言葉に笑みを浮かべながら答えるリーネ。俺はそれを見ながら二丁を仕舞うと、腰の邪魔にならない位置に袋を取り付けた。それを確認したてからジェームスは言った。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
その言葉と共に、俺たちは訓練のコボルト討伐へと向かったのだった。
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俺たちはコボルト討伐のため、南の草原へと来ていた。
しばらく歩くと、俺は前方にコボルトの姿を発見した。
「前方五百メートルの位置に目標発見、数は五だ。」
「索敵を使うね。」
俺の言葉にサリアは直ぐに魔法を使い索敵を始める。すると、サリアは俺に向かって言ってきた。
「敵は確かに五匹だよ。」
「気を抜かないで、前みたいに伏兵がいるかもしれないわ。」
「ん、警戒。」
サーシャとアイリスもそう言うと、戦闘態勢に入った。それを確認すると、俺は全員に声をかけた。
「いつも通り、二百メートル前後で俺が狙撃をする。そうしたら作戦開始だ。」
俺の言葉に全員が無言で頷く。そしてゆっくりと近づいていき、残り二百メートルを切るところで、俺はシムエスMk.IIを取り出し近くの岩場にバイポッドを立てる。そしてスコープを覗き敵に照準を合わせていく。そして、コボルト二匹の頭が重なった瞬間に俺は魔力を込めて引き金を引いた。
ガガァァァン!!!
二発の銃弾が魔法術式によって加速され亜音速で飛んでいく。そしてコボルト二匹の頭を吹き飛ばすと、残りの三匹が慌てふためいたように警戒を始めた。
「行け!!」
俺の声と共に、三人が駆け出した。コボルトはその三人を見ると、牙を剥いて襲いかかってきた。
ズドォォン!!
俺はその内の一匹の頭を撃ち抜く。コボルトが脳漿を撒けながら倒れると同時に、襲いかかって来ていた残り二匹のコボルトは踵を返して逃げようとする。
「その手にはもう乗らないわ!!」
「逃がさないよ!!火の壁!!」
それを見てサリアがコボルトの目の前に火の壁を発動させて行く手を阻む。
「グ、グギャァ!!」
行く手を阻まれたコボルトはこちらを振り返ると、大声で鳴き声をあげた。すると、近くの草むらから更に二匹のコボルトが姿を現して四匹となった。
「やっぱり隠れていたわね!!」
「思ったとおり。」
それを見てサーシャとアイリスが声を上げる。
「油断するなよ、サーシャアイリス、行け。」
「ん!」
「分かったわ!!」
その声と共に二人はコボルトへ向かって駆け出した。そこにコボルトたちが牙を剥いて襲いかかる。しかし、コボルトたちの攻撃は届くことはなかった。
「やらせないよ!火の弾丸!!」
「やらせるか。」
ズドォォン!!
「ギャッ!?」
「ガギュァ!?」
サリアと俺の攻撃により二匹のコボルトが倒される。すると、一瞬コボルトの動きが止まった。それを見逃さず、サーシャとアイリスが動く。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
「んっ!!」
二人はそれぞれコボルトの首を跳ね、全てのコボルトが倒された。
「警戒だ。」
俺の言葉に三人は周りの警戒を始めた。そして敵が居ないことを確認すると、俺たちは武器を納めた。
「いや、凄いね。経った一ヶ月でここまで動きが良くなるとはね。」
「素晴らしいですわ〜。」
俺たちが警戒を解くとジェームスとリーネが話しかけてきた。
「俺たちの動きはどうだった。」
「最初の頃に比べたら天と地との差だったね。個人の動きもパーティーとしての動きも悪くなかったよ。」
「そうですわね、それぞれがしっかりと役割をこなして降りましたわね〜。」
ジェームスとリーネの言葉を聞き、サリアたちが顔を赤くしていた。
「今日のクエストは合格点と言ってもいいだろうな。キミたち、よくやっ……!?!?」
ジェームスが言葉を告げている途中、言葉を途切れさせ糸目を少し開いた。リーネもいつもの笑みを消していた。その瞬間、俺は背後から殺気を感じ振り返った。それに続きサリア、サーシャ、アイリスも振り返る。
「グルルル…」
そこには唸りながらこちらを見つめる一匹の大型の魔物が立っていた。その魔物はこちらを威嚇するように頭を低くしながら牙を剥いてくる。それを見ながらジェームスは冷や汗を流しながら呟いた。
「驚いたな、こんな所まで出てくるなんてね…コボルトの匂いにでも誘われたか、タイガーバイパー。」
タイガーバイパー、体長二メートル程の巨大な四足歩行の魔物だ。特徴はパワーとその体毛と牙の麻痺毒だ。スピードはそこまで高くは無いが、やっかいな麻痺毒のせいでDランクに分類される魔物だ。
「ライアー君、キミたちにもう1つ課題を出してもいいかな?」
「あれを倒せと言うのだろ?」
ジェームスの問いに俺は口を歪ませながら答える。俺の言葉にジェームスは冷や汗を流しながら頷く。それを見た俺はサリアたち三人に声をかけた。
「サリア、サーシャ、アイリス。今から俺はあのタイガーバイパーを倒す。協力してくれるか?」
その言葉に三人は間を挟まずに頷いた。
「ライアー君のやりたい事に付き合うよ。」
「ライアーの力になりたいわ、やるわよ。」
「ん、ライアーに、付き合うよ。」
「ありがとう。」
その答えに俺は感謝の言葉をかけると、戦闘態勢に入った。すると、ジェームスは俺たちに声をかけてきた。
「タイガーバイパーの麻痺毒は強力だけど、触れなければ毒になることは無い、気をつけろよ。」
その言葉に俺たちは頷くと、俺はブラックホークとガーディアンを抜き、タイガーバイパーに向かって言った。
「行くぞ、いいか。」
「ガアァァァァァァ!!!」
それを合図にタイガーバイパー牙を剥いて襲いかかってきた。それに対し俺はガーディアンに魔力を込め発砲した。SMG特有の軽い発砲音と共に銃弾が発射され、タイガーバイパーに当たり斬撃の魔法術式で被弾した箇所に傷が入る。しかし、皮膚を少し切っただけで、勢いは止まらない。
「させないよ、火の壁!!」
それを見たサリアがタイガーバイパーの目前に魔法で火の壁を展開した。
サリアの魔法により、一瞬タイガーバイパーの動きが止まる。
「今だわ!!」
「行く、です!!」
その隙を見逃さず、サーシャとアイリスがタイガーバイパーへと接近し、前脚へと切り込む。
「グガァァァ!?」
タイガーバイパーは二人の攻撃に対して前脚を振り回して攻撃を行う。しかし、二人ともその攻撃を上手くいなしながら離脱する。それを確認すると、俺は収納袋からシムエスMk.IIをを取り出しタイガーバイパーに狙いを定めた。
ズガォォン!!
「ガァォォォォ!?」
シムエスMk.IIが火を噴き、タイガーバイパーの前脚の関節を貫く。倒れはしなかったものの、こちらを驚異と感じたのか、後退りをすると踵を返して逃げ出そうとする。しかし、今の俺たちは逃がすなどしない。
「サリア!!」
「うん、火の壁!!」
俺はサリアに向けて声をかけると、彼女はタイガーバイパーの眼前へ再び魔法を発動させる。その瞬間にサーシャとアイリスが再び駆け出し、後脚へと切り込んで行った。
「グ、ガアァァォァァァァ!!!」
流石のタイガーバイパーも攻撃に悲鳴を上げる。すると、逃げられないと悟ったのかタイガーバイパーは再び俺へと振り返ると、牙を剥き飛びかかってきた。それを見ながら俺は言った。
「いいのか?俺に向かってきて。」
そう言うと、タイガーバイパーの顔の右側に攻撃が当たりバランスを崩し倒れる。
「火の弾丸、やっと普通に攻撃が出来るようになったんだよ。」
その攻撃はサリアによるものだった。攻撃自体は強力なものでは無く、本当にバランスを崩すための威力しか無かったが、その攻撃は俺たちにとって大きな隙を作ることとなった。
俺はシムエスMk.IIを魔法袋に仕舞うと、そこから対魔物ライフルを取り出し、タイガーバイパーへと向けた。
「ガァァァァァァ!!」
そんな俺を見てタイガーバイパーは威嚇するように吠えてくる。しかし、それの選択は大きな間違いであった。
「知っているか?口の中って結構柔らかいんだ。」
「ガァァグボガッ!?」
俺は開かれた口に対魔物ライフルのバレルを突っ込んだ。
「俺たちの勝ちだ。」
そう言いながら、俺は引き金を引いた。
ドグン!!!
鈍い発砲音と共に銃弾が発射される。その銃弾はタイガーバイパーの体内を引き裂きながら進み、心臓を引き裂きいた。
タイガーバイパーはしばらくもがいた後、ゆっくりと体を倒し、動かなくなった。しばらく様子を見てみたが、動き出す気配は無い。
「倒したのか?」
俺はジェームスに問いかける。すると、彼はタイガーバイパーに近づき確認すると答えた。
「あぁ、心臓が撃ち抜かれているから、死んだね。」
「本当ですか!!ライアー君!!」
「やったわよライアー!!」
「ん!!ライアー、強い!!」
ジェームスの言葉を聞いたサリア、サーシャ、アイリスは、余程嬉しかったのか俺に飛びついてきた。
「おい、しつこいぞ。」
俺は三人に言ったのだが離れる気配は無い。仕方ないので、ジェームスに視線を移すとやれやれと言った感じで話しかけてきた。
「ほらサリアちゃんたち、イチャイチャするのは帰ってからにしてね。」
ジェームスのその言葉に、自分のしている事を自覚したのか顔を真っ赤にして離れた。俺は開放されたのを確認して話を続けた。
「で、どうだった。」
「そうだね、格上クラスの魔物にも良いコンビネーションでパーティー線を行っていたと思うよ。僕の予想通りだね。」
「また嘘をついたな。お前はわかりやすい。」
「…そんなことないよ。今のは本心さ。」
「まぁいい。」
俺はジェームスの言葉に胡散臭さを感じながらも会話を切り上げ、タイガーバイパーの魔石の剥ぎ取りへと向かっていったのだった。
「リーネ、どう思う?今の彼らの戦いは。」
俺はライアー君たちがタイガーバイパーを倒したのを見た後、彼からが魔石の剥ぎ取りなどをしている最中、リーネに尋ねた。
オレの問いかけに、リーネは少し考えながら答えてきた。
「そうですわね、私は思っていた以上に強くなっていると思いますわ。」
「なぜそう思うんだい?」
再び問いかけた俺に対してリーネは続けた。
「私たちはあくまで対人戦闘を教えてきましたわ。しかし彼らは魔物相手に、更にはランクが上の魔物にさえも学んだことを上手く応用して戦っておりました。次の段階で教えるはずでしたのに、彼らは自分自身でそれを学びましたわ。」
オレはそれを聞いて息を吐きながら言った。
「確かにな、彼らはオレたちが思っていたよりも強くなるかもしれないな。」
「そうですわね、もしかしたら私たちよりも強くなるかもしれませんわね〜。」
「それはライアー君がかい?それとも全員かな?」
「もちろん、全員ですわぁ〜♪」
リーネが微笑みながら言った言葉に、俺は軽く笑うと、可愛い後輩たちの方を眺めるのだった。
ありがとうございました。
次回、交流模擬戦開始です。ライアー達はマルコの息のかかったかもしれない組織にどう立ち向かうのか?
お時間があればよろしくお願いいたします。