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18話:炎雷と暴風の乙女

どうも、眠れぬ森です。

今回は少し短いです。

拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。

「ライアー君、戦い方を教えてくれない!?」


「あたしたちもライアーみたいに戦えるようになりたいわ!!」


 王城での一件の数日後、俺がアイリス、サリア、サーシャの三人と昼食を取っていると、突然サリアとサーシャから告げられた。聞けば、俺と行動を共にするにあたり自分たちの未熟さを痛感したらしい。

 正式にパーティーを組むようになってから何度かギルドクエストを受けたのだが、彼女たちの動きに俺が合わせる形を取ると、基本的に後方支援を得意とする俺が前に出ることになってしまい陣形が崩れてしまう。俺たちのパーティーはアイリスを含めると前衛二人、後衛二人とバランスがイマイチだ。戦い方も、一撃離脱戦法で上手く立ち回るアイリスは良いのだが、敵を前にすると突っ込んでいってしまうサーシャと、魔法で後方支援役ながらテキを攻撃するのに躊躇してしまうサリアは少し問題だった。


「サーシャ、前に出過ぎ、少し、頭使って戦う。」


「う…分かってはいるわよ…」


「サリアも、クレイの一件で攻撃魔法を使うのを躊躇うのは分かるが、戦いでは命取りになるぞ。」


「あはは…そうだよね…」


 俺とアイリスの言葉に二人はたじろぐ。確かにこのままという訳にはいかないが、戦闘を教えるに当たって一つ問題があった。


「俺が教えられるのは対人戦闘だけだ。魔法兵器(マジック・ウェポン)を使うならまだしも、魔法での戦闘は専門外だ。」


 そう、いくら異能者(イレギュラー)認定されたとはいえ、俺は攻撃魔法を使うことが出来ない。それに、俺が使える知覚限界突破(ブーストアップ)も俺以外使えなかった。もちろん特級魔法士のリアスやエルハルトでさえもだ。

 同じ魔術士として戦うアイリスはともかく、魔法士のサリアとサーシャとは戦い方がまるで違う。その事を二人に伝えると、落胆した表情を見せた。その時、俺たちに話しかけてきた人物が居た。


「こんにちは、何やらお困りのようだけどどうしたのかしら?」


 声を掛けてきた人物はこの魔法学園の学園長、リアス・エルドラドだった。俺は挨拶をした後、リアスに状況を話した。すると、彼女はしばらく考え込んだ後ニヤリと笑いながら言った。


「あなたたち、今日の自主訓練時間は何をするのかしら?」


「いや、まだ決めていないが俺はギルドクエストでも受けようかと思っている。」


「私も特に決めていないです。」


「あたしもです。」


「アイリスも。」


 俺たちの言葉に、リアスは腕を組みながら言った。


「じゃあ、あなたたちに紹介したい人がいるのだけれど、時間大丈夫かしら?」


「俺は問題ない。」


 俺の言葉に、三人も頷く。


「じゃあ決まりね、自主訓練時間になったら訓練場に来てちょうだいね。」


「分かった。」


 俺の返事と同時に予鈴の鐘が鳴ったので、俺たち急いで午後の授業へと向かったのだった。




 午後の授業が終わり、自主訓練時間になった。俺たちはリアスに言われた通りに訓練場へと足を運んでいた。しかし、まだリアスは来ていないようだ。


「そういえば、あたしたちに紹介したい人が居るって学園長はいっていたけれど、誰かしら?」


「そうそう、私も気になっていたの!!」


「アイリスも、知らない。」


「確かに、来たのはいいが呼んだ本人がいないとはな。」


 そう言った瞬間に俺は後ろに気配を感じ、ブラックホークを抜いて振り返った。しかし、構える寸前に俺は腕を抑えられてしまった。一呼吸置き、三人も驚いた様子で振り返る。すると、俺の腕を抑えたままその人物は言った。


「学園長が言っていたのはやっぱり君たちだったんだね。うんうん、予想通りキミはただの学生じゃないね。」


 声を掛けてきたのは、糸目の長髪茶髪の青年だった。学園の制服を着ているあたりこの学園の生徒なのだろう。


「学園長様のお話通り、面白そうな方たちですわぁ〜!」


 すると、今度は振り向いた俺たちの後ろから声がした。驚き振り返ると、そこにはウェーブのかかった薄紫色の髪をした女性が立っていた。こちらも学園の制服を来ているので生徒なのだろう。


「お前たち、いつからそこに居た。」


 俺は緊張の眼差しで問いかける。確かに俺たちが訓練場に来た時には誰も居なかった。出入口の扉も閉めたので、入ってくるには扉を開ける必要がある。なのに、俺が気が付かない内に二度も背後を取られてしまった。実践なら死んでいただろう。

 そんな視線をよそに、二人は話し出した。


「いつからも何も、オレたちは普通に扉から入ってきたんだよ。」


「そうですわぁ、あまりにも気が付かないので少々いたずらをいてしまいました〜。」


 そう言いながら、糸目の青年は扉を指差す。そちらに目を向けると、閉めたはずの扉が開かれたままになっていた。


「お前たちは一体誰だ。」


 警戒するように問いかけると、糸目の青年笑いながら言った。


「おいおい、キミの為に法廷で助けたのを忘れたのかい?あぁ、オレはとっても傷ついたよ。」


「仕方ありませんわぁ、前回は一度顔を合わせただけ。挨拶もしませんでしから。」


 その言葉に、俺は思い出した。法廷でマルクの前で俺の無実の証拠を話してくれた人物の事を。


「<炎雷>と<暴風の乙女>か…」


「正解!でもその呼び方は好きじゃないかな。」


(わたくし)もですわね。」


 その時、訓練場の入口からリアスの声が聞こえてきた。


「どこにもいないと思ったら、もう来てたのね。それで、挨拶は済んだのかしら?」


 その声に、俺の腕を掴んでいた糸目の青年が手を離して答えた。


「挨拶も何も、彼が武器を抜こうとして話まで行かなかったよ。」


「どうせ、またあなたたちが余計な事をしたのでしょ?」


「学園長様、余計なこととは酷いですわぁ。(わたくし)たちは可愛い後輩の為にちょっといたずらをしただけです〜。」


 薄紫髪の女性の言葉にため息を吐きながら、リアスは俺たちの元へ歩いてきて言った。


「ごめんなさいね、二人とも少しやりすぎるところはあるけど悪い人では無いわ。」


「それは俺が決めることだ。」


「言うと思ったわ。」


 俺の返事に肩を竦めて答えると、リアスは青年と女性のほうを向いて言ってきた。


「彼らは四十八期生のジェームス・ハルトマンとリーネ・セシエルトよ。今日からあなたたちに戦い方を教えてくれる先輩方よ。」


「えぇ!?あのハルトマン先輩とセシエルト先輩がですか!?」


「ちょっとサリア落ち着いて!!でも本当なんですか!?」


「…だれ?」


 リアスの言葉に、サリアとサーシャは興奮気味に話す。俺はアイリスと同じ気持ちだ。


「悪いが、俺は二人のことを知らん。」


 そう言うと、サリアとサーシャが俺にも詰め寄ってきて話してきた。


「ライアー君知らないの!?ハルトマン先輩は史上最年少でCランクまで上り詰めた天才魔法士なの!!繰り出される炎と雷の魔法から<炎雷>の二つ名を持ってる凄い先輩なんだよ!?」


「ライアー知らないの?セシエルト先輩は入学の時から強力な魔法の使いてで、ハルトマン先輩と同じく最年少でCランクまで行ったのよ?強力な風魔法を放つ様子から<暴風の乙女>の二つ名を持つ強い先輩よ!?」


「いやぁ〜、少し違うけどこんな可愛い後輩に褒められるとお世辞でも嬉しいね。」


「あらあら、褒めても何も出ませんわぁ〜。」


 サリアとサーシャの言葉に二人は照れながら答える。そんな様子を見て、俺はリアスに問いかけた。


「それで、俺たちに戦い方を教えると言っていたがどういうことだ?」


「言葉通りの意味よ。今日、ライアーくんはサリアちゃんとサーシャちゃんに戦い方を教えて欲しいって言われてたでしょ?だったら一緒にライアーくんとアイリスちゃんも先輩たちに教えて貰って強くなればいいと思ったのよ。」


 リアスの言葉に、俺は頭を抱える。確かに、二人に教えてもらえばサリアとサーシャは強くなるだろう。しかし、それは()()()()()()だ。魔術士の俺とアイリスにはあまり意味が無い。


「リアス、気持ちはありがたいがオレとアイリスは魔術士だ。魔法士から教わることはほとんど無いと思うぞ。」


「アイリスも、そう思います。」


「だったら試してみるかい?」


「それは良いアイデアですわね〜。」


 俺とアイリスの言葉に、ジェームスとリーネが言った。その言葉に、リアスも続けた。


「それはいいわね。彼らの力が魔法士だけではないというのを実際に体験してみたらどうかしら?」


「どういう意味だ。」


「言葉通り、二人と模擬戦をするのよ。()()()()()ね。」


 リアスの言葉に、俺は耳を疑った。魔法士とは基本的に魔法による中長距離からの攻撃をメインとする。しかし、遠距離支援が得意とはいえ対人戦も行える俺と、近距離攻撃を得意とするアイリス相手に魔法無しで模擬戦なんて、普通では考えられない。


異能者(イレギュラー)と言われていても、やっぱり戦いに自信が無いのかな?」


「そうですわね、こちらのお嬢様もあまり強くなさそうですわぁ。」


 俺たちを煽るように、ジェームスとリーネが言う。その言葉を聞き、アイリスが反応する。


「魔法の使えない、魔法士は、敵じゃ、ないです!!」


 アイリスは挑発に乗ったようで、見た事の無いほど二人を睨みつけている。魔術士は魔法士と比較して、戦い方から身体能力で勝る場合が多い。そこを突かれたのがよっぽど気に触ったようだ。それを見て、リアスも俺に声を掛けてきた。


「アイリスちゃんはやる気満々だけど、ライアーくんはどうかしら?元傭兵として馬鹿にされたままでいいのかしら?」


「いいだろう、その挑発に乗ってやる。」


 本来ならば無視してもいいのだが、最年少でCランクまで登った実力も知りたい。何より、仮に敵対した際に相手の情報の有無は大きい。それを考慮して俺はあえて挑発に乗った。


「決まりね。じゃあ始めるから準備してちょうだい。」


「アイリス、負けるんじゃないわよ。」


「ん、サーシャは、黙って、見てて。」


「ライアー君、気をつけてね。」


「あぁ。」


 俺とアイリスは、サリアとサーシャに声をかけてもらいながら訓練場の模擬戦スペースへと移動した。そして双方位置に付くと、リアスがルールを説明のした。


「今回の模擬戦は魔法は無しね。もちろん魔法術式も禁止よ。分かったかしら?」


 その問いに双方頷くと、リアスは戦の檻(ウォー・ゲージ)を展開した。一般教員が複数で展開するそれを一人でやってのけたリアスに感心しつつ、ブラックホークと霧雨を抜きつつ構える。アイリスも切り裂きの双剣(ツイン・リッパー)を構える。


「なるほどね、それがキミたちの武器か。」


「それでは(わたくし)たちも準備しましょうか〜。」


 そう言うと、ジェームスは腰に刺していたソードを抜き、リーネは小さな袋を取り出した。


「それがお前の武器なのか?」


 俺がリーネに問いかけると、彼女は微笑みながら答えた。


(わたくし)の武器は少々持ち運びに不便ですので、収納袋(マジックボックス)に閉まっておりますの〜。」


 そう言いながらリーネは袋の中に手を入れ、中から武器を出す。


「っ…!!」


「…嘘だろ?」


 取り出された武器を見て、俺とアイリスは絶句する。それは、リーネの背丈を超えるほど巨大な鋼鉄製の戦鎚だった。二メートル程のそれをリーネは片手で振り回すと、頷きながら構えを取った。それを見て、俺はアイリスに静かに呟く。


「アイリス、リーネは危険だ。先にジェームスを倒す。」


「ん、分かった。」


 戦の檻(ウォー・ゲージ)の中が静まり返る。そして、お互いの準備が整ったのを見計らって、リアスが声をあげた。


「それじゃあ、模擬戦スタート!!!」


 その掛け声と同時に模擬戦の火蓋が切って落とされた。

ありがとうございました。

<炎雷>と<暴風の乙女>の正体が徐々に明かされてきました。次回の模擬戦の結果やいかに!?

次回もよろしくお願いいたします。

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