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14話:破滅への序章

どうも、眠れぬ森です。

前回からいろいろ詰め込みすぎ、伏線張りすぎだなと少々反省しております。

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

「夜遅くに呼び出してごめんなさいね。」


 ライアーとクレイの模擬戦の日の夜、私は学園長室に二人の男女を呼び出した。例のライアーとクレイの監視任務に当たっている二人だった。


「構いませんわぁ、これも学園長様のご命令ですから〜。」


「ホントに勘弁して欲しいよ。眠くて仕方がないのにさ。」


「突然でホントに悪いわね。それで、何か変な動きはあったかしら?」


 それぞれ正反対の反応を示す二人だったが、リアスの言葉で雰囲気を変えた。そして、それぞれの監視対象についての報告を行った。


「学園長様の言う通り、ライアー様は何か特別な力を手に入れたようですわ。あの模擬戦以降、男子寮まで後をつけて見たのですが、時折立ち止まり魔力を放出しておりました。」


「それって魔法を使ったってこと!?」


 リアスの言葉に、彼女は首を横に振る。


「いいえ、ただ魔力を放出するだけで何も起きませんでしたわ。本人もその事を不思議に思っている様子でしたので。」


「そう…分かったわ、ありがとうね。」


「いえいえ〜。」


 私がそう言うと、女性はニコニコと笑いながら話を終えた。

 次に、男性の方に視線を向ける。彼は元から細い目を更に細め、言ってきた。


「オレの方はちょっとマズい状況だな。模擬戦後からクレイの奴を尾行して一応屋敷までついて行ったんだが、そこで面倒な奴らと接触された。」


「面倒な人って一体誰かしら。」


 私が聞き返すと、少し目を開いて答えた。


「オレも詳しくは知らないが、喋り方から西の帝国の人間だろうな。」


「西の帝国の人間がどうして!?」


「それは分からないが、厄介なものをクレイに渡したようだ。」


「何かしら。」


呪いの(カース・)魔道具(マジックアイテム)だよ。」


「なんですって!?」


 彼の言葉に思わず声を上げてしまう。そんなものがどうしてクレイに渡したのだろうか。最悪の状況が頭をよぎる。それは何としても阻止しなければならない。

 私は目の前の男女を見る。力は申し分ないが、まだ学生の身分だ、あまり危険な目には合わせたくない。


「ありがとう、助かったわ。報酬は後で届けさせるわ。」


「これでお仕事は終わりですの?」


「乗り掛かった船だ、最後までやっても良いんだぜ?」


 私の言葉に彼女らは首を傾げる。しかし、元より依頼内容はあくまでも監視だ、これ以上は依頼の範囲外だ。それを伝えると、二人は頷き部屋を出ようとした。その時、男性が振り返り私に言った。


「可愛い後輩の為に少し手助けをするのは問題ないだろ?」


「まあ!それは良いアイデアです!」


 彼の言葉にそばにいた女性も手を合わせて賛同する。その様子を見て、私は苦笑しながら答えた。


「そうね、本当に危なくなった時はそれでもいいわ。」


 私の言葉に納得したのか、二人は部屋を出ていった。

 二人が退室したのを確認すると、私は各方面に連絡をした。クレイの手に渡った呪いの(カース・)魔道具(マジックアイテム)の使用を阻止するためだ。


(間に合えばいいけど…!!)


 しかし、運命の時計の針は既に動き始めていたのだった。






ーーーーーー

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー






 クレイとの模擬戦の翌日、学園が休日出勤の為、俺はアイリスからシムエスMk.IIの修理が完了したとの連絡を受けてクラントン商会へと向かう準備をしていた。すると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。俺は若干デジャブを感じつつ扉を開けた。


「やっほー、ライアー。」


「おはよう、ライアー君。」


 そこにはやはりと言うか、当たり前だと言うかのようにサーシャとサリアが立っていた。二人とも休日だからか、私服姿である。


「こんな朝から何の用だ。」


「何よ、用がなきゃ来ちゃいけないわけ?」


「ライアー君、それはあんまりだと思うな。」


 俺の問いに二人は不満を露わにする。それを見て溜息をつきながら言う。


「…今日は俺の武器の修理が終わったらしいからそれを受け取りに行く。」


 そう言うと、二人は声を合わせて言った。


「「(あたし)も行くよ(わ)!!」」


「…分かった。」


 その声に俺は頭を抱えつつ答えるのだった。



 俺たちはクラントン商会へ向かいながら歩いていると、サリアが話しかけてきた。


「あの、ライアー君に話したい事があるんだけどいいかな?」


「なんだ。」


 俺が答えると、サリアは何故か顔を赤くしながら呟いた。


「昨日、スティルブ家から連絡があって…その…私の婚約の話が白紙になりました……」


「そうか、良かったと良いっていいのか分からないが、それを俺に言ってなんのつもりだ。」


「だから…えと…今、私はフリーです!!」


「じゃあ良かったな、お前の枷が一つ外れたという事だな。」


 俺が言うと、何故かサリアは涙目になりサーシャに泣きついた。


「うぅ…さーしゃぁぁぁ…」


「サリア、よく頑張ったわね。悪いのは全部ライアーだから気にしないでいいのよ。」


 そう言いながらサーシャは俺を睨んでくる。


「一緒に頑張りましょ!」


「ぐすっ…サーシャありがと!」


 よく分からないが二人で何かを頑張ろうと言うらしい。


(女心は理解できないな)


 そう思いながら歩いていると、いつの間にかクラントン商会へと着いていた。

 扉を開け中に入ると、アイリスが出迎えてくれた。


「ライアー、いらっしゃいませ、サリアも。そして、どうして、サーシャまでいる?」


「何よ!!あたしが居たらダメな訳!?」


「二人とも落ち着きなよ。」


 店に入るなりいつもの口喧嘩を始めた二人とそれを宥めるサリアをよそに、俺はカウンターへと足を運んだ。すると、ガンツが声をかけてきた。


「よう、ボウズ。今日も女連れとはいいご身分だな。」


「うるさいぞ。それよりシムエスの件で来たんだ。」


 挨拶を交わしながらそう言うと、ガンツは待ってろと良い店の奥へと戻った。そしてしばらく待つと、シムエスMk.IIを持って現れた。それをカウンターの上に置くと、説明を始めた。


「まずは注文通り、修理を行った。歪んでいたバレルはマナス山脈で取れた鉱石をベースにしたオリジナル配合の合金で作った、鍛造削り出しのワンオフ品だ。前のより耐衝撃性、耐摩耗性、魔力伝達率が上がっている。」


「ほう、いい仕事だ。」


「次にストックだが、こっちは元の素材のままチークピースとバットプレートを合皮からゴムプレートに変更した。若干だがクッション性が上がっているから使いやすいと思う。」


「なるほどな。」


 ガンツはそこまで言うと、一呼吸置いて続けた。


「問題はスコープなんだが、同じ型がアルザスで既に廃盤になっててな。一応探したんだがどこにも無くて、新型のスコープに変えたんだ。今までのと少し見え方が違うかもしれねぇ。」


「少し、構えてみても良いか?」


 俺はガンツに許可を取ると、シムエスMk.IIを持ち構える。確かにガンツの言う通り、スコープ越しに見える風景が以前の物とは少し違う。しかし、新型だからか前のものよりも若干見える風景が鮮明に思えた。

 俺は構えを解くと、緊張した面持ちのガンツに言った。


「問題ないな。確かに見え方が少し違うが、誤差の範囲だ。俺が慣れた方が早い。」


「そうか!良かったぜ!」


「それで、いくらだ?」


 嬉しそうなガンツを見ながら俺は代金を支払おうとする。しかし、その手はガンツに止められてしまう。


「どういうつもりだ?」


 俺はガンツに問いかける。すると、ガンツは神妙な面持ちで言った。


「アイリスから聞いた。お前、命の危険を晒してまであの娘らを守ったってな。うちのアイリスもかなり危なかったそうだな。これはうちの娘を守ってもらった礼だ。」


 ガンツの言葉に、俺は答えた。


「ガンツ、言いたいことはわかるがそれとこれとは話が別だ。お前は商人であると同時に技術屋だ。なら、代金をしっかりと受け取り、その仕事に責任を持て。」


「ボウズ…そうだな、じゃあ代金はしっかりいただくぜ!!」


 そう言いながら代金を受け取ると、それを妻のテレーゼに任せるとガンツは店の奥から一丁銃を持ち出してきた。それは無骨なマットブラックのSMG(サブマシンガン)だった。


「これは?」


「その説明はアイリスから聞いてくれ。」


 俺が聞くと、ガンツはアイリスを呼んだ。サーシャとサリアとじゃれ合っていたアイリスはその声に気が付くと、彼女らとカウンターへやってきてSMGを見ながら話し始めた。


「これは、守ってくれた、ライアーへのお礼。お父さんと、一緒に考えて、アイリスが術式を刻んだ魔法兵器(マジック・ウェポン)。」


「親としてお礼のひとつもしないのはやっぱり悪いと思ってな。受け取ってくれや。」


 そう言うと、俺にそれを手渡してきた。魔力を込めると、ぼうっと魔法術式が浮かんだ。


「これは、斬裂の魔法術式か?」


「そう、アイリスのと、同じ。弾が当たると、そこから斬撃が、入る。」


 俺の問いにアイリスが答える。


「すごく綺麗な術式ね。」


「確かに、私じゃ刻めないかも。」


 それを見たサーシャとサリアが呟く。それを聴きながら、俺はアイリスとガンツに言った。


「それで、この魔法兵器(マジック・ウェポン)の名前は?」


「ガーディアン、だよ。」


 なるほど、守護者(ガーディアン)とはこれまた俺には荷が重そうな名前だと思った。しかし、せっかくの武器だ。中距離攻撃の手が少ない俺にはピッタリだろう。


「ありがとう、使わせて貰う。」


 そう言うと、アイリスとガンツは嬉しそうに笑った。ガンツからガンホルスターを受け取り早速装備してみる。武装的に、右腰にガーディアン、左腰にブラックホーク、後ろ腰に霧雨に落ち着いた。


「かっこいいよ、ライアー君!」


「うん、様になってるじゃない。」


 装備した姿を見てサリアとサーシャも声をあげる。その時、思い出したかのようにガンツが言った。


「そういえば、ボウズに貸してた対物(アンチマテリアル)ライフルも受け取ってくれ。」


「そこまでしてもらうのは流石に悪い。」


 そう言うとガンツは首を横に振り、返したはずの対物(アンチマテリアル)ライフルを持ってきた。それは、俺が初めに見た黒色から鈍く光るワインレッドに変わっていた。


「塗り替えたのか?」


 そう聞くと、ガンツは否定した。


「いや、お前から帰ってきた時にはこの色になってたんだ。それで、不審に思って魔法研に鑑定に出したんだ。そしたら、こんな結果になってたんだ。」


 そう言うと、一枚の紙を俺に見せてきた。それは武器の鑑定結果が書かれた紙だった。それを見て、俺は驚愕した。


呪いの魔兵器(カース・ウェポン)対魔物(アンチモンスター)ライフルだと…」


「どうしてかは分からないが、魔法研の奴ら曰く魔物の血と魔石を取り込んで変化した可能性が高いらしい。物凄く稀なケースらしいがな。」


 その言葉に、俺は心当たりがあった。エレファントブルを討伐した際、俺はそいつの心臓をコレで撃ち抜いた。その時に魔石も破壊してしまったのだろう。


「すまなかった。」


 俺は事情を説明し、ガンツに謝罪した。しかし、彼は笑いながら答えた。


「気にするな、道具は主人を選ぶって言う話もあるんだ。それでコイツはお前を選んだ、それだけの話だ。」


「そうか、ありがとう。」


 ガンツの言葉に俺は感謝を伝えた。それを聞いたガンツは、シムエスMk.IIと対魔物(アンチモンスター)ライフルをガンケースにしまい俺に渡してきた。そして一言伝えてきた。


「また来いよ。」


「ああ。」


 俺は返事をすると、サーシャとサリアと共に店を出た。



 俺たちはクラントン商会を出ると、寮への帰路に着いていた。当初より多くなった荷物を持ちながら歩いていると、サーシャが声をかけてきた。


「良かったわね、武器が治って。」


「そうだな、三年も使ってると愛着も湧く。買い換えずに治したのは正解だったな。」


「それ分かるかも、私も小物とか長く使ってると愛着が湧くんだよ。」


 俺の答えに、サリアも賛同してきた。そんな会話をしながら歩き続け、商業区から中央広場へと入った時だった。俺の視界にこちらへ飛んでくる物体が映った。それは、俺もよく知る閃光音響爆弾(スタングレネード)だった。


「目と耳を塞げ!!」


「「え?」」


 俺は咄嗟に二人に叫んだ。しかし、彼女らは突然の事に反応出来ていない。

 その瞬間だった。


パギィィィィィィン!!!!


 激しい閃光と耳をつんざく爆音を上げてそれは破裂した。


「くっ…!!」


 街中で突然襲われるとは思ってもいなかった俺は、自分の目と耳を守ることしか出来なかった。

 閃光が止み二人の無事を確認しようとすると、目の前にサーシャとサリアを抱えた仮面を被った二人がいた。


「二人を離せ!!」


 そう言いながら腰に装備したブラックホークを抜こうとした時だった。


「そう焦んなや、短期は損気やで。」


 男の声と共に俺の首元に感じる冷たい感触。気が付かないうちに、ナイフを当てられていた。こうなると抵抗しても無駄なので、一旦手を挙げて問いかけた。


「お前は誰だ。」


「みんなの魔法士お助けマンや。」


「ふざけるな、真面目に答えろ。」


 俺がそう言うと、男はおもしろくないなぁと呟いた後、答えてきた。


「あんさんと同じ、異能者(イレギュラー)と言えばピンと来るやろ?」


異能者(イレギュラー)?」


 男の言葉に訝しげな視線を向ける。初めて聞く単語と、俺と同じ。情報が少なすぎる。

 そんな俺を見て、男は残念そうに言った。


「なんや、なんも聞いとらんのかいな。これはおもろないで〜。」


「二人をどうする気だ。」


 俺は男に問いかける。それを聞き、男は淡々と答えた。


「ワイらはあのお嬢さん方をこれ以上どうこうする気は無い。ただ困った魔法士がおってな、お前をお呼びなんや。ようするにパーティーへの招待やな。」


「どういう意味だ。」


「ほな、クレイ・スティルブと言えば分かるかいな。」


 その名前を聞いて、俺は頭に血が上るのを感じた。その様子を見て、男は嬉しそうに言った。


「ええ顔になったな。」


「どうすればいい。」


「簡単なことや、今から街の外れの倉庫街に来い。そこでクレイ・スティルブと共に、お嬢ちゃん達と待っとるから。」


 そう言うと、サリアとサーシャを抱えた二人が走り去った。


「ほな、待っとるで。」


 二人が見えなくなるのを見届けると、男は俺の首からナイフを離した。瞬間、俺はブラックホークを抜き後ろを振り返る。しかし、そこに男の姿は無く、地面に一枚の紙切れが落ちているのみだった。

 紙切れを拾い見てみると、そこには倉庫の番号が書かれていた。俺はそれをくしゃり握りつぶし呟いた。


「クレイ・スティルブは生かしておけない。絶対に殺す。」


 そして、俺は倉庫街へと走り出した。

ありがとうございました。

再び現れたクレイ・スティルブと謎の男、そして学園長の依頼をこなす謎の男女の正体とは。

お時間があれば、次回もよろしくお願いいたします。

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