12話:不穏な空気
どうも、眠れぬ森です。
まだまだ慣れないこの執筆作業ですが、未熟者故温かい目で見ていただけると嬉しいです。
今回も拙い文章ではありますが、よろしくお願いします。
魔法研での魔力測定から一週間後、俺は入院生活を終え学園に復帰していた。本来ならば完治に数ヶ月は要すると言われていたが、リアスの上級治癒と俺の見せた驚異的な回復力で傷はほぼ治っていた。
魔力測定から二日後、カインが測定結果を持って病院を訪れた。結果はやはりと言うか、多少魔力の上昇は見られたものの、やはり常人より少し多いくらいの値を示していた。
「ライアー君はまだ若い。伸び代は十分にあると思いますよ。」
落胆などしては居なかったが、カインに慰められてしまった。自分に魔力が少なく、才能はほとんどないと初めから分かっていたので余計な心配は無用だと答えてその日は帰ってもらった。
(まぁ、分かりきっていたことだ。)
そう思いつつ、俺は学園へ続く道を歩いていた。すると、誰かに肩を叩かれた。
「おはようライアー!」
「ライアー君おはよう!」
振り返ると、サーシャとサリアが居た。二人とも嬉しそうな顔で挨拶をしてきた。
「ああ、おはよう。」
俺も二人に挨拶をすると、三人で学園へと向かった。しばらく歩くと、サーシャが俺に近づきながら問いかけてきた。
「そういえば、ライアーは魔法研で魔力測定したんでしょ?結果どうだった?」
「あ、私もそれ聞きたい!」
サーシャの言葉にサリアも近づきながら聞いてきた。そんな言葉に俺は二人に一枚の紙を見せた。それを見ると、サーシャが驚いた様な顔でこちらを見てきた。
「嘘!ライアーの魔力ってこれだけしかないの?」
「ちょっとサーシャ!ライアー君に失礼だよ!」
サリアの言葉にサーシャはしまったと言う顔で口を抑えた。そんな彼女らを見ながら俺は答えた。
「別に大丈夫だ。自分の実力は自分自身でも知っている、2人とも気にするな。」
そう言うと、二人はホッと胸を撫で下ろした。その様子に苦笑しながら学園の正門前へと向かうと、女子生徒の人だかりが出来ていた。その中心には前髪を流した金髪の男子生徒が居た。
「あれは…」
サリアが呟くとその男子生徒はこちらに気が付き、歩み寄ってきた。そしてサーシャとサリアの前に立つと、突然二人の手を取りながら話しかけてきた。
「お久しぶりです、サーシャ様にサリア殿下。今日もお美しいお姿です。朝からお二人の姿を見れて、僕はとても幸運です。」
彼はそう言うと跪き、二人の手の甲に口付けをしようとしてきた。
「ひっ!!」
「スティルブ様!!」
その瞬間サーシャは小さい悲鳴、サリアは大きな声を出して彼の手を振り払った。直ぐにサーシャはサリアの後ろに隠れながら、サリアは彼を睨みつけた。そんな二人の姿を見ながら、金髪の男子生徒は笑いながらサリアの髪に触れながら言った。
「おやおや、せっかくの美しいお顔が台無しですよ。」
「いきなり淑女の身体に触れるような方に言われたくありません。それと、ここでは私も生徒ですので皇女と呼ばないでください。」
「美しいものに触れたいというのは人間の性、そして僕の美学です。」
サリアは彼の手を振り払い答えた。しかし、それでも彼は悪びれる様子もなく今度はサリアの頬へ手を伸ばそうとした。
「その辺にしておけ、嫌がる相手に触れるのもお前の美学なのか?」
俺はサリアの前に出ると伸ばされた男子生徒の腕を掴み言った。すると、彼はその手を振り払いながらこちらを睨みつけ叫んできた。。
「ライアー・ヴェルデグラン!!貴様のような紛い物が僕のような高貴で崇高な魔法士に触れるな、汚らわしい!!大体、貴様のような者どもがこの魔法学園に足を踏み入れること自体間違っているのだ!!」
「スティルブ様!!」
「大体、なぜ貴様のような屑がサーシャ様とサリア皇女と一緒に居るのだ!!屑は屑らしくしていろ。」
サリアの制止も聞かずに俺を罵倒する男子生徒は、手に魔力を集め始めた。そして、彼の手からスパークが発される。それを見ながら俺は彼に問いかけた。
「何をするんだ。」
「決まっているだろ、ゴミ掃除だ!!魔術士なんざこの世にいらないからね!!」
「止めて!!」
「殺してやる!!」
サーシャの声を無視して彼はそう叫ぶと、手の中のスパークが集まり雷球となった。ここで魔法を使う気らしい。先程まで彼の周りに集まっていた女子生徒も正門を潜り校内へと避難していた。そして彼が魔法を放とうとした瞬間、声が響いた。
「一体何をしているのかしら?」
その瞬間、彼の魔法音を立てて崩れた。俺たちが驚き声のしたほうを見ると、男子生徒が悔しそうな声で呟いた。
「リアス学園長…」
視線の先に居たのはリアスだった。彼女はいつもの笑みとは正反対の厳しい顔をしながら言った。
「生徒同士の戦闘は許可された場合のみよ。ここで辞めるなら未遂として見逃すけど、どうする?」
「くっ!!」
リアスの言葉に男子生徒は悔しげな顔をした。
「覚えておけよ、ライアー・ヴェルデグラン…」
憎々しげに俺に呟くと、校舎へ向かって歩いて行った。その背中を見送ると、俺はリアスへと声をかけた。
「リアス、助かった。」
「いいのよ、学園の秩序を守るのも私の仕事だもの。さ、そろそろ始業の時間だわ。遅刻するわよ。」
リアスはそう言うと、手を振りながら校舎へと帰って行った。その姿を見届けていると予鈴の鐘が鳴り、俺たちは急いで講堂へ向かうのだった。
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「ごめんねライアー君。」
昼休憩に入ると、サリアが俺の席にやって来ていきなり謝ってきた。
「ん、サリア、どうかした?」
俺の隣で寝ていたアイリスもいつの間にか起きてサリアに問いかけていた。その言葉に、サリアは表情を曇らせて俯いた。
「サリア落ち着いて。」
「ありがとう、サーシャ…」
「とりあえず場所を変えよう。」
サリアの様子を見たサーシャが声をかける。只事でない雰囲気を感じ、俺たちは他生徒の目がある教室から校舎裏へと場所を移した。
「それで?サリアが謝った理由は?」
「朝の件だけど…」
俺が問いかけると、サリアはそう答えた。朝の件と言うと、知らない男子生徒に絡まれたことだろうか。それがなぜサリアが謝る理由になるのだろうか。
不思議に思っていると、サリアはゆっくりと話し始めた。
「あの人はクレイ・スティルブ先輩。スティルブ家の次期当主なんだよ。」
「スティルブ…マルコ・スティルブの血縁者か?」
「ライアー君知ってるの?スティルブ先輩はマルコ・スティルブ伯爵の長男だよ。
スティルブ家。どこかで聞いた事のあると思った、魔法至上主義の定説者の息子だったのか。
「それで、それが何故サリアが謝る事になるんだ?」
「……」
俺の問いにサリアは一瞬黙る。しかし、恐る恐るといった様子で語り始めた。
「スティルブ先輩は、私の許嫁なの。」
「え、ちょっとどういう事よサリア!!」
サリアの突然の告白に、サーシャは取り乱す。しかしサリアは淡々と続けた。
「苗字で分かると思うけど、私はこの国の第三皇女なの。でも、私は側室の娘で王位継承権も無ければお姉様達のような魔法の才も無い。皇女なんて肩書きしか無いの。」
「サリア…」
悲痛そうなサリアの表情に、アイリスもかける言葉を無くしている。
「なんの価値も無い私だけど、一応王族の身だから婚約を結びたいという申し入れは沢山あって、その中から選ばれたのがスティルブ家のクレイ・スティルブ先輩なの。」
「話は分かった。だがサリアが謝る必要はどこにも無いだろう。」
サリアの話を黙って聞いていた俺は再び問いかける。婚姻を結び各家同士の結び付きを強め、魔法士としての血を後世に残す、それは貴族や王族としては陶然の責務だと思う。しかし、まだ結婚もしていないサリアには無関係な話なのだ。サーシャもアイリスも心配そうに見つめる中、サリアは続けた。
「あの時私がちゃんと止めに入っていれば、ライアー君があんなに言われることもなかった。ううん、それ以前にスティルブ先輩まで魔法士至上主義者だとは思わなかったから。もっと早く気がついていれば…」
「だとしても、悪いのはあのスティルブ先輩なんだから、サリアが謝る必要なんてないわよ!」
「ん、サーシャの、言うとおり。あんな色情魔、居なくなればいい。」
悔しそうに目に涙を貯めるサリアをフォローするサーシャと、朝の出来事を見ていた様子のアイリスに、俺も同意する。
「そうだな、アイツの為にサリアが謝ることなんて無いぞ。」
「でも…」
否定しようとするサリアを手で制すると、俺は校舎の影に向かって声をかけた。
「いい加減出てきたらどうだ、聞いているんだろ?」
突然の俺の行動に三人が驚いていると、校舎の影から一人の人物が現れた。その人物を見て、サリアとサーシャの顔が青ざめる。
「盗み聞きとは感心しないな、クレイ・スティルブ。」
「ライアー・ヴェルデグラン…」
そこには、こちらを憎々しげに睨みつけているクレイ・スティルブが立っていた。しかし、直ぐに朝と同じ笑顔になると、サリアとサーシャに話しかけてきた。
「サリア皇女にサーシャ様、こんな所で何をしていたのですか?美しい貴女方がこのような場所に居ては毒にしかなりませんよ?それに、近くに汚い鼠が二匹もいますから。」
「言わせて、おけば…」
クレイの言葉にアイリスが駆け出す姿勢を見せるが、それを俺は手で制する。そんな俺達を無視するかのように、クレイはサリアとサーシャに手を伸ばす。しかし、その手は二人に弾かれた。
「おや、一体どういうつもりですか?」
クレイの問いに、サリアとサーシャは震えた声で答えた。
「二人は…私達の友人…です。謝って…ください。」
「そうです…いくら私の婚約者とはいえ…友人を貶す事は許せません。」
そんな二人の言葉を聞いたクレイは一瞬驚いたような顔をした後、顔を抑えて笑い始めた。
その姿を恐怖の表情で見つめるサリアとサーシャに、クレイは笑いを堪えながらいった。
「サリア皇女にサーシャ様、お言葉ですが友人とは人同士に使われる言葉ですよ!!こんな汚らわしい屑同然のゴミに使う言葉ではありませんよ!!」
そう言うと、クレイは再び笑い始めた。その様子を見て、流石の俺でも気分が悪くなった。隣にいるアイリスは今にも飛びかからんとしている。
耐えるのはここまでにしようか、そう思った矢先にそれは起こった。
パシィィン!!
乾いた音が校舎裏に鳴り響く。その音の先を見つめる俺とサーシャとアイリス。
その視線の先には、クレイの右頬に平手打ちをするサリアの姿があった。
「…え?」
いまいち状況が飲み込めないクレイは、はたかれた右頬を抑えながらサリアのほうを見る。すると、サリアは泣きながらクレイに叫んだ。
「二人に謝ってください!!」
すると、クレイの顔が憤怒の表情に染まっていき、突然サリアの首を掴んだ。
「かはっ!」
突然の事に驚き目を見開くサリアに対して、クレイは言った。
「いけませんよサリア皇女、未来の夫の頬を叩くなどしては。」
「!!サリアを離せ!!」
そんなサリアを見てサーシャがクレイに向かって飛び込んでいく。しかし、クレイはそんなサーシャをいなすと彼女の首も掴んだ。
「ぐっ!!」
「サーシャ様も、おてんばはやめにしましょう。」
そう言うとクレイは二人の首から手を離した。二人はその場に跪き、苦しそうに咳き込む。そんな様子を見ながらクレイは言った。
「お二人とも、お痛はあまりなさらないように。サリア皇女は未来の私のつま、サーシャ様も側室として向かい入れようと考えておりますので、その美しい身体にお気遣い下さい。さ、行きましょう。」
下卑た視線を送るクレイに、ビクッと体を震わせるサリアとサーシャ。そんな二人をクレイは腕を上げ掴み連れて行こうとする。
「あっ!!」
「きゃっ!!」
二人の短い悲鳴が校舎裏に木霊する。その瞬間、サリアと俺の目があった。その時、彼女の口が動いた。声は出なかったが、確かに言った。
たすけて
その瞬間、俺はクレイに向かってわざと聞こえるように言った。
「貴族と言っても、三下がいるんだな。」
俺の言葉にクレイの歩みが止まる。そしてこちらを振り向いて問いただした。
「なんて言った?」
「聞こえなかったのか?三下って言ったんだ。」
俺の言葉に、クレイは二人から手を離しオレに近づいてきた。そして憤怒に染まった顔で俺の胸ぐらを掴み言った。
「取り消せ、ライアー・ヴェルデグラン。」
「何も取り消す必要は無いだろ?事実なのだから。」
そう答えると、クレイの手に魔力が集まり、スパークが飛ぶのが見えた。恐らく無意識なのだろう、その事に気が付かず、彼は続けた。
「汚らわしい魔術士ごときが、この僕に三下だと?あまり僕を舐めるなよ。」
「三下を三下と呼んで何が悪い。魔力を自分で制御出来ないで居るやつは魔術士よりも程度は低いだろ?」
その言葉に、クレイはハッと自分の手を見る。そこでようやく魔法が発動しかかっているのを把握し、俺から手を離すと、今度はサリアに向かって言った。
「サリア皇女、今日はこれで失礼します。」
そう言って俺たちに背を向けて歩いていくクレイだったが、ふと立ち止まると振り向きシャツを捲り、左の脇腹を見せてきた。
「っ!!」
そこには酷い火傷の痕が残っていた。そして、それを見て動揺するサリアを見ながら告げた。
「そうそうサリア皇女、この傷の件をお忘れ無いようにお願いしますね。」
シャツを元に戻すと、今度は俺のほうを向いて言ってきた。
「覚悟しろよ、ライアー・ヴェルデグラン。」
そう言うと、今度こそクレイはその場から立ち去ったのだった。
クレイが立ち去ったのを確認したところで、俺とアイリスはサリアとサーシャに駆け寄った。
「サーシャ、大丈夫?」
「ええ、私は大丈夫よ。それよりもサリアが…」
サーシャは問題なさそうだったが、それよりもサリアだった。クレイからあの傷を見せられてから、目の焦点も定まらず呼吸も荒い。
「大丈夫か、サリア。」
「っ!?……あ、ライアー君。」
俺の言葉にビクッと体を震わせた後、俺を確認すると焦点も呼吸も落ち着いてきた。そして、話し始めた。
「彼との婚約なんだけど、あの傷が原因なの。」
幼い頃の話だそうだ。サリアは魔法の才に秀でた二人の姉に追いつこうと魔法の勉強をしてきたらしい。そして十歳の誕生日の事だった。パーティーで魔法を披露する際に制御に失敗し、運悪く近くに居たクレイに当たってしまったという。生命に別状は無かったようだが、彼には消えない傷が残ってしまい、その贖罪のして婚約が決まったのだという。
そう話すと、サリアは俺に問いかけてきた。
「ライアー君は、私が戦闘している時に違和感を感じないかな?」
そう問われると、確かにある。基本防御と支援の後衛役だが、敵が隙を見せても攻撃をしない時がある。その事を告げると、彼女は乾いた笑い声を上げて言った。
「私はね、怖いんだよ。また、魔法の制御を誤って誰かを傷つけるのが。自分でもどうしていいか分からないのに、こんな状況になって…」
そう言うと、彼女は俯いて静かに涙を流した。それを見て俺はジャンの言っていた事を思い出し、伝えた。
「確かに戦闘に置いて味方への誤射はあってはならない。だけど、それよりもダメな事を知ってるか?」
「ダメな事?」
「それは味方を信頼しない事だ。味方を信頼しなければ、背中を預ける事も、預けられる事も出来ない。」
「……」
俺の言葉に俯くサリア。そこで俺はサーシャとアイリスに問いかけた。
「二人はサリアについてどう思ってる?」
「ギルド登録した頃からのパーティーだから、信頼してないわけないわよ。」
「アイリスも、一緒の事、まだ少ないです。でも、サリアの支援、助かります。」
その言葉に、サリアは目を丸くする。それを見て俺は告げた。
「戦闘怖くて当たり前だ。だけど、味方に信じて貰えない方がよっぽど怖いんだ。だから、抱え込まずに俺たちを頼れ。」
俺の言葉に、サリアは一瞬大津部の涙を流したが、直ぐにそれを拭き言ってきた。
「みんなありがとう!!」
そう言うサリアの目は、いつもの目に戻っていた。
それを見ながら、俺は考える。クレイは必ずまた接触してくるはずだ。それがいつなのかは分からない。だが早ければ今日明日にでもしてくるはずだ。
(対策は取っておくか。)
そう思っていると、予鈴の鐘がなったので俺たちは急いで授業中へと向かったのだった。
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ライアー達が居た校舎の屋上から、彼らを見下ろす人物が居た。学園長のリアスだった。
「ライアーくんもかなり学園に馴染んで来たわね。」
そう呟くと彼女は振り返り考える。魔法士至上主義の浸透が学園まで入り込んできていることはエドガルドを見ていれば分かる。しかし、今回の件は明らかに異常だ。明確な殺意まで持っているのが見て分かった。かと言って、個人の思想など学園長権限でどうにか出来るものでは無い。
そう思っていると、二人の男女がリアスの前に姿を現した。
「ごめんね、昼休憩なのに呼び出しちゃって。」
「大丈夫ですわ、学園長様のご命令とあらばどこでも参上致しますわ。」
「ホントに勘弁して貰いたね。オレの昼寝時間が少なくなっちゃうよ。」
それぞれ異なった答えに苦笑いしつつ、本題に入った。
「あなた達二人に仕事をお願いしたいの、頼めるかしら?」
「理事長様のご命令なのでしたら、喜んで受けますわ!」
「いいけど、内容は何で報酬はどのくらいでるのかな?」
快諾してくれた女性とは正反対に、男性のほうは目を光らせて問いかけてくる。そんな彼に呆れつつ、私は説明した。
「内容は学園内での特定生徒の監視よ。一人はライアー・ヴェルデグランくん、もう一人はクレイ・スティルブくん。報酬はこのくらいでどうかしら。」
「へぇ、スティルブ伯爵家のドラ息子に、噂の〈黒コートの無謀者〉か。」
男性の呟きを耳に、リアスは二人に依頼書を渡した。女性はそれを直ぐにポケットにしまいニコニコと笑っていたが、男性は依頼書を一生懸命見て言ってきた。
「あと報酬単位、二コマ追加できる?」
「出来るわけないでしょう、あなたはもっと真面目に勉強しなさい。」
「やっぱりダメか〜、でも割といい仕事だし、学園長には恩もあるから引き受けるよ。」
そういい、男性のほうも快諾してくれた。そして二人は、依頼を受注するためにギルドへと向かった。その後ろ姿を見送りながら、一言呟いた。
「杞憂に終わればいいのだけれど…」
その言葉の意味は、彼女しか知りえないものだった。
ありがとうございました。
魔法士至上主義、自分で考えておいて少しムカつきました。
新たに登場したクレイ・スティルブの学園長から依頼を受ける謎の男女、そしてサリアの過去と未来。様々なことが交差してきました。
宜しければ、次回もぜひよろしくお願いします。