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0話:プロローグ

初めまして、眠れぬ森です。

小説というものを初めて執筆したので至らぬ点があるかと思いますが、ご了承ください。

 魔法士と魔術士


 似て非なる存在がこの世には存在する。 

 魔法士は体内の魔力をそのまま発動出来るのに対し、魔術士は魔法術式を介して魔法を発動する。


 魔法を使うという行為に置いてさほど違いは無い。しかし、魔法士と魔術士の間には大きな差が存在する。持つものと持たざる者、まるで貴族と平民のような、深海よりも深い圧倒的な差が……


「起きろライアー、時間だ。」


 暗闇の中、頭を小突かれながら声をかけられる。そうして俺はゆっくりと目を開けた。どうやら座ったまま眠ってしまっていたらしい。嫌な夢を見ていたのか妙な胸のざわめきを感じたが、直ぐに頭を切り替え、声をかけてきた男、ジャンの方へ向かった。


「ジャン、目標は?」


「なんだ、ちゃんと起きたのか。ガキらしくグズると思ってたんだが?」


「御託はいい。」


 軽口を叩くジャンを睨むと、やれやれといった様子で肩を竦めたが、直ぐに真面目な顔になりランタンの灯ったテーブルの上に地図を広げた。


「今回の目標はとある盗賊団の殲滅だ。奴らは複数のアジトを転々としていてなかなか足が掴めなかった。だが…」


 そう言いながら、数箇所にバツ印を付けていく。そして最後に大きく丸を付けた。


「今日、ギルバートとアラン達がアジトの場所を突き止めた。ここから二キロの位置にある洞窟だ。」


「二キロか…」


「巧妙に隠されていたそうだが、6人ほどの足跡があったそうだから間違いないだろうな。それともなんだ?狙撃距離に問題あるか」


「いや…」


 そう呟きながら横を見る。そこには黒光りしている俺の魔術兵器(マジック・ウェポン)、遠距離狙撃用銃《シムエスMk.II》がある。

 傭兵団に入って3年を共にした銃である。この3年で一体何人殺してきただろうか。そんなことをふと思った瞬間、寝起きに感じた胸のざわめきが蘇ってきた。

 立ち上がり銃を手に取り構える。普段と変わらない感触だが、なんとも言えない引っ掛かりを感じる。


「大丈夫なのか?」


 いつもは感じたことの無い違和感に駆られ、ジャンに問いただす。すると一瞬顔を強ばらせたが、直ぐにいつもの顔に戻りニヤリと笑う。


「不安か?珍しくガキらしい所見せるじゃねえか。」


「別に…」


 そう言いながらも不安が無いわけではなかった。最初に戦場に出た時は怖かったが、数をこなすうちに慣れていった。いつしか恐怖も躊躇いも感じなくなった。それだけに、今日の仕事には何かを感じた。

 すると、不意に頭をガシガシと撫でられた。


「今日よりもデカいヤマに当たったこともあるし、今日まで生き抜いてきた。それに、お前は俺たちの中で唯一まともに魔術兵器を扱えるんだ。それだけの腕があるから自信にしろ!それと…」


 そう言いながらジャンは俺の首に何かをかけてきた。手に取ってみるとネーム入りドッグタグのネックレスだった。


「これは?」


「忘れたのか?お前今日で十三歳だろ?俺からのささやかなプレゼントだ。」


 俺の入っている傭兵団では誕生日にドッグタグを送る風習がある。そこで気がついた、今日が誕生日だと言うことに。


「誕生日にまでこんな仕事をするなんてな…」


傭兵(おれたち)らしいじゃ……!?」


 そんな会話をしていると、急にジャンの顔が強ばらせて静かになる。それに反応して、俺も臨戦体制を取る。

 耳をすませると、遠くから微かにする爆発音と発砲音。そして何者かが近づいてくる足音。

 銃を構えながら待ち構えると、


「ハァッ…ハァッ…お、俺……だ…」


「ギルバート!?」


 現れたのは肩で息をし、全身血まみれで満身創痍になったギルバートだった。

 身体中に怪我を負っているが、どう見ても刃物や銃弾ではない傷が多い。抑えている左腕は所々炭化している。


「おい!何が起こってんだ!!状況は!?アラン達は!?」


 ジャンはギルバートを支えながら問いただす。しかしギルバートはジャンの言葉を遮るようにして話し出した。

 

「奴らは…雇っ……ていやがった……アラン達は……賊を倒した……けど…アイツは……無理だった……アイ…ツ…に…やられた……」


「おい!!しっかりしろ!!アイツって誰だ!!」


「は…ぐれ……魔法士……ーーーーーー」


 ギルバートはそれを伝えると息を引き取った。

 しかしギルバートの言葉に俺たちは声を失った。


「はぐれ魔法士だと…!?」


 魔法士とは本来その豊富な魔力と魔法術式を使用しない魔法であらゆる立場で優遇され、重宝されている。

 故に政府機関やギルド職員、はたまた冒険者パーティーといった方面で活躍をしている。しかし、一部の魔法士は己の力に酔い、快楽を求めて犯罪に走る者もいる。それらをはぐれ魔法士と呼んでいる。

 対する魔術師は魔法士ほどの魔力を有していない。下級魔法士の三分の一の魔力があれば高い方である。

また、魔法を発動させるのに魔法術式を必要とするため、発動まで時間が掛かる。

 それほど魔法士と魔術士の差は大きい。


「ライアー…」


「分かりました…」


 ジャンの言葉は最低限だったが、直ぐに理解した。

 作戦は失敗、撤退ということだ。

 最低限の装備を確認し、撤退の準備を進める。


「こっちは問題ない。」


「こっちもクリアだ、撤退す「どこに行くんだい?」……!?!?」


「初めまして、傭兵諸君。俺様は魔法士のアルベルト・ディランだ。」


 最悪の状況になった。俺とジャンは撤退の為に周囲をクリアリングして問題ない事を確認した。それにのなにアイツはそこにいた。否、突如として俺たちの前に現れたのだ。そして感じた。俺たちには無い、強力な魔力の放出を。

 全身が泡立つのを感じる。今まで感じたことの無い、圧倒的な力の差による恐怖だ。


「いつからそこに居やがった!!」


「いつからも何も、最初からさ。この俺様が獲物を逃すと思うか?」


 ジャンが叫ぶように問う。しかしアルベルトはまるで動じることも無く答えた。そしてあろう事か、事切れたギルバートの顔を蹴飛ばした。


「てめぇ!!」


バガガガガガガガガガガガン!!!!!

ピン、カランコロコロ……ドガァァァン!!!!


 その瞬間、ジャンは持っていた銃をフルオートで発射した。それと同時に俺は腰に付けていた手榴弾を投げつけた。それと同時に背後にあった岩にバイポッドを立てて狙撃体制に入る。相手までは二十メートルほどの位置である。スコープの倍率を調節し、相手の頭の位置にポイントを添える。

 硝煙と爆発の土煙が立ち込める中、じっと息を潜める。恐らくだが、この連射と爆発ではアルベルトは手負いになるはずだ。


「なっ!?!?」


「全く品の無い攻撃だな。そんなものでは俺様には通らないよ。」


 煙が晴れていく。するとそこには一歩も動かずにいる相手の姿があった。しかも、怪我を負うどころか衣服に塵一つ付いていない。

 その姿に呆然としている俺たちを見て、アルベルトの口元が歪んだ。


「その様子だと。防御魔法を見るのは初めてかな?今のは物理の壁(リフレクト・ガード)といって、鉛玉や金属片くらいなら届かないよ。」


 余裕のある笑みを浮かべる。

 俺たちだって職業柄、防御魔法は見たことがある。だが、今まで見てきた防御魔法はどれも魔術士が魔法術式を使ったもので、ある程度の攻撃で砕けるものだった。

 しかし、今回は違う。本物の魔法士による魔法だ。

 身体中が冷えていき、息が上がる。本能的に狩られる恐怖が込み上げてくる。


「仕掛けるから合わせろ!!」


 叫び声でハッと我に帰る。ジャンを見ると、懐から魔法術式が書かれた紙を取り出しているのが見えた。物理の壁(リフレクト・ガード)を破るために魔法を放とうとしているのだろう。それに合わせて再度スコープでアルベルトの頭を狙う。


「遅すぎるな、雷の刃(サンダー・エッジ)。」


「ぐ…がァァァァァァァァ!!!」


 スコープを覗いていない左目には、肩口から切られたジャンの右腕が飛ぶのが見えた。そして一呼吸置いて叫び声。そのままジャンは肩口を押えて蹲る。おびただしい量の出血だ。このままでは失血死してしまうだろう。


「ジャン!!!」


「逃げろ!!!」


 手当に向かおうと、岩陰を飛び出そうとした俺にジャンは叫んだ。その声に俺は固まった。逃げる?どうやって?ジャンは?

 そんな考えがグルグルと頭を巡る。どうすればいい?どうすれば切り抜けられる?


ボン!シュゥウウウウウウウウ!!!


「くっ、煙幕か!!」


 突然視界を白い煙が覆う。その中をジャンが走って俺の方まで寄ってきた。その顔を青白く、額には脂汗が流れていた。


「聞け、俺はどの道助からない。だがこのままやられるのも癪だ、一発お見舞いしてやる。」


 そう言いながら、魔法術式が刻まれた玉を見せてきた。


――自爆用魔法術式――


 相手に捕らえられた際、最後の切り札として用意されている魔術兵器(マジック・ウェポン)。飲み込むと体内の魔力が強制的に放出され、爆発を引き起こす。これを使う意味を理解せざるを得なかった。


「時間が無いから手短に行くぞ。奴に物理攻撃は効かない、だが魔力を直接ぶつければ話は別の筈だ。後は任せた。」


「ジャン…」


 そう言うと、ジャンは丸薬を口に含んで俺の背中を押した。それをきっかけにジャンは岩陰を飛び出した。


「長く生きろよ。」


「ありがとう。」


 別れる直前の言葉。それを交わして俺は後ろの森へと駆け出した。刹那、後ろから大爆発とアルベルトの悲鳴が聞こえた。




 一体どれほど走っただろうか。俺は森を抜け、山道を下り、セリエス王国近くの平原へと抜けた。

 息が切れる。喉からは血の味が込み上げる。だが足を止めることは出来ない。もう少しで王国なのだから。そこに行けばアルベルトも追って来れないはず。そう考えて走っていると、突然左足に痛みが走ってそのまま倒れ込んだ。

 何かと思い見てみると、太もも付近を何かが貫通したようで、穴が開き血が溢れている。


「ぐ…あああああああああああ!!!」


 何が起こった?攻撃を食らったのは確かだ、しかしどこから?


「傭兵ごときが…良くも俺様に傷をつけやがったな…」


 後ろから声がする。振り返ると、全身血や埃で薄汚れたアルベルトが立っていた。所々服が破けて傷があるのはジャンの自爆攻撃のせいだろう。だが、そんな状態でもアルベルトは追ってきたのだ。

 相手も手負いだが、こちらも重症だ。動脈を傷つけたのか、押さえても押さえても血が溢れ出てくる。


「やりやがったな…やりやがったなやりやがったな!!」


 アルベルトは叫びながら手に電気を帯びた魔力を集め始めた。

 

(ここまでか…)


 そう思いながら俺もシムエスMK.IIを構える。倒せるかどうかは関係ない。攻めて最後の抵抗だけでもと、無意識だった。


「傭兵風情が!!くたばれ!!雷撃の槍(ライトニング・ランス)


 鋭い雷撃の槍がこちらへ飛んでくる。食らったら即死は間違いないだろう。その瞬間、頭の中で声が響いた。


《生命の危機を確認しました。これより、防衛行動に入ります。》


 刹那、周りの景色が白黒になった。そして、以上にゆっくりと見えた。飛んでくる雷撃の槍も凄くスローだ。

 死ぬ時はゆっくりと見えると言うが、こういう事なのだろうか。そんなことを思いながら見ていると、雷撃の槍の先端から光の線が見えた。それは真っ直ぐ心臓のある位置に伸びている。恐らく軌道だろう。しかし、俺の身体はシムエスMK.IIを構えたまま動かない。

 そしてまた、頭の中に声が響いた。


《フェーズI解除を確認。身体の行動不能を確認しました。これより、フェーズIIへ移行します。》


 一体なんなのだろうか、さっきから頭の中で誰かが喋っている。これが走馬灯というものだろうか。そんなことを考えているうちに、雷撃の槍はもう銃口近くまで来ている。


(ジャン、みんな、ごめん…)


 もうすぐ死ぬというのに、怖さはなかった。いや、無かったと言えば嘘になるかもしれない。しかし、考えるより先にまた声が響く。


《フェーズII解除を確認。これより防衛行動を開始します。》


 瞬間、身体から魔力が溢れ出るのを感じた。今まで感じたことの無い魔力量だ。それがどんどんシムエスMK.IIに入っていく。経験のない魔力、そして不可思議な現象。しかし、今の俺には何故かそれが当たり前のように感じた。

 これがなんなのか、俺は知っている。そして使える。


《充填完了。獄炎の(プロミネンス)弾丸(・ショット)発射準備完了。》


 その声が頭に響いた瞬間に、俺は引き金をひいた。その瞬間に世界が色を取り戻し、銃口から爆炎とも言える炎を吹いて弾丸が発射された。雷撃の槍をも飲み込んでしまう炎だ。


「な!?俺様がこんなこ……ーーーーーーーー」


 その爆炎は雷撃の槍諸共アルベルトを飲み込み、平原の一部を削りながら空へと消えていった。

 残ったのは削り取られた大地と、銃口から煙を吐くシムエスMK.II。そしてそれを構えた俺だけだった。

 そして地平線から朝日が登ってくるのが見えた。


「ははっ…ジャン、やったよ…生きたよ…」


 そう言うと俺はどさりと倒れ込んだ。血を流しすぎたのかもしれない。身体が寒い、力が入らない。


「お………大丈………か!!生………いる………!!!!」


 遠くから声が聞こえる気がする。だがもう限界だ。沈んでいく意識の中でも、例の声は頭に響いた。




《防衛行動完了。フェーズIを起動したままフェーズIIの起動を停止。お疲れ様でした。》

己の妄想を文字にするってとても難しいですね。

プロットというものが無く、思い立ったら少しずつ書こうかと思っていますので、期間が空いたら申し訳ございません。

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