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エッセイ

待たない時代

作者: 江古左だり

ネットの普及で、待たない時代になりましたなぁ〜!!


というエッセイ。


「予約は取られていますか?」


 聞かれて私は戸惑った。耳鼻科だったのである。


「いえ……初診ですが……」


「初診でも予約はいただいております。時間がかかりますがお待ちになりますか?」


 私はうなづいた。確かにこの病院。私以外に患者がいない。


 病院といえば鮨詰(すしづ)めという認識だっただけに、がらんどうの待合室には不思議な気持ちになった。


 次回からは予約を取った。「10時しか空いておりませんが」といわれやはり戸惑う。


 がらんどう。しかし患者でいっぱいなのである。


 ■□■□


 こういうことが増えた。小児科も予約が基本なので、高熱の子供たちがソファーに寝そべっている風景を見なくなった。


 子供という『待つことが苦手な人種』を何時間も待たせる。絵本を読んだり、病院備え付けのおもちゃで遊ばせたり、Switchを持っていかなくてよくなった。


 病院のアプリを入れているので、予約が取れる時間も1発でわかる。便利な世の中だ。


 ■□■□


 テイクアウトもすごい。

 アプリで食べたい物を打ち込んでおけば、時間までに出来上がってる。会社員なんか便利だろう。帰りの電車の中で注文しておけばほぼ待つことなく弁当屋で弁当を受け取れる。


 びっくりしたのがマクドナルド。

 アプリを発見したのでウキウキで打ち込みさて注文……となったらできなかった。


『注文ボタンはお店でお願いします』


 !?


 仕方なくマクドナルドまで出向き、注文ボタンを押した。

 1メートル先に注文カウンターがある。


 なんでやねん。


 ここで私は思い出した。


 かつてマクドナルドと言えば注文するまでに結構待つ場所だった。小さい子と並んでいるとドキドキしてくる。


 途中で『おしっこしたい』と言われたらどうしよう〜。

 1人で行かせられる年でもないし、列を抜けて、トイレ行ってまた並び直し……。


 ああどうか。子供の尿意が持ちますように。


 ドキドキハラハラ込みの『ハッピーセット』だった。


 ある時など店の外まで列が出来ていた。


 中に入ってびっくり。対応しているカウンターが1つなのである。


 カウンター増やせよ〜。


 というわけにもいかないのだ。カウンター以外のクルー(従業員)も必死に働いている。

 『超速・出来立て』を提供するためにカウンターはあえて1つにしているわけだ。


 これがね。アプリを使うと列に並ぶことすらいらなくなる。


 もちろんマクドナルド内にいなければならないが、列に並ばないというのは楽である。カウンターの負担も大幅に減るだろう。


 ■□■□


 もうみなさんお忘れかもしれないが、かつて電車に乗るには切符が必要だった。


 駅に行く→路線図で駅の運賃を確認→ボタンを()()()()押して該当の金額を買う→駅員にハサミ(!)を入れてもらう→降りる時に駅員に渡す(金額が足りない場合精算をする)


 な〜〜〜〜〜〜〜〜んて時代があったんですよ。良くできたウソじゃないよ。


 駅員さんがハサミをカチャカチャさせている音。平成キッズも令和キッズも聞いたことないでしょ。


 それが今や、改札ゲートにカード(またはスマホ)を当てるだけで自動的に電車賃を計算してくれるようになりました。精算する必要だってないんだよ〜。


 たまにカードを忘れると(子供がよくやる)モタモタモタモタしてしまう。ああ。もうあの時代には戻れない。


 ■□■□


 信じられないかもしれないが、昔は『乗換案内』なんてアプリはなかった。


 どうしてたと思いますか?


『路線図』を持ち歩いてたんですよ。

 自宅最寄駅の時刻表も持ち歩いてた。


 自分で路線図をたどり、どの電車に乗り換えるか調べてメモに書いたのです。


 信じられないでしょ!


 今はまだ駅構内のダンジョンに苦労するが(東京駅・新宿駅・池袋駅)(あと下北沢貴様もだ)そのうち空中に矢印がでてたどると到着できるようになるんじゃないかなぁ。

 すっごい小さいVRが出来てさ。


 ■□■□


 スーパーにセルフレジが投入された。


 今まで店員さんがやってくれたレジ業務をおのれ1人で完遂かんすいせよということである。


 スーパーの怠慢だ!! 誰がやるか!!


 な〜〜〜〜〜〜〜〜んてことはなく並んでまでセルフってるみなさん。気持ちわかるよ。


 牛乳1本でもうあの長〜〜〜い行列に並ばなくて良くなったもんね。


 ピッとバーコード読み込んで、『会計』をタップして、お金払ってとっとと帰る。


 ノーふれあい。ノータイム。ノーストレス。


 さようなら平成。こんにちは令和。


 コンビニもセルフで支払いをする店が増えた。これで『お金が合わない』などがぐっと少なくなり、店員さんの負担もだいぶ減った。


 ■□■□


 ウーバーイーツなんざ。お金すら払わない。

 クレジットカードを登録する。


 アプリで注文するだけで勝手に食べ物飲み物がやってくる。


 支払いは引き落とし。


 玄関置き指定にしておけば、配達員さんに会う必要すらない。


 ■□■□


 このコロナの時代。回転寿司は大変だったろう。


 久々に回転寿司に一人で入った。戸惑うことだらけだ。


 まず、寿司が回ってない。


 タッチパネルがひと席づつ置いてあるので「サーモン」「一皿」「シャリ少なめ」などタップする。


 すると『ちゃら〜ら〜ら〜ららら〜♬ご注文の品ができあがりました!』かなんか機械音声がしてシャーッと寿司が運ばれてくる。

 自分の席は半透明な仕切りで区切られており、隣に誰がいるのかわからない。


 誰も話さないからひたすら機械音声と寿司が運ばれる音だけがする。


 帰りの支払いもセルフだ。



 ……安全で、安心で、便利で…………。





 寿司って。こういうものだっけ?



 食事というか。工場内に組み込まれたロボットになった気分というか。


 初めて回転寿司に入った時は家族でだったなあ。


 お父さんもお母さんも生きてて。回転レーンの中に職人さんが何人もいて。『ガランガラン!』てベルが鳴って


「たった今サーモンが入りましたぁ!」


 なんてアナウンスがあって。マグロの解体ショーがあって。


 握りたての寿司を食べたい客がどんどん手を挙げて。


『回転寿司』てーのは『寿司エンターテイメント』だったんだがなぁ。


 不特定多数の前を食べ物がグルグル回るという最悪の状態からここに至るまで、企業の皆さんがどれほど大変だったかを思えば、今の状態致し方なし。というかありがとうございます。


 私は何とも言えない気持ちで寿司屋を出た。


 ■□■□


 そして今。『小説家になろう』のマイページにてエッセイを書いているのだ。もちろんスマホ。時代は前へ前へ進んで行く。


 病院の予約。保護者間の連絡。テイクアウトの注文。電車の時刻調べ。洗剤買うならAmazon。生協の注文もアプリで。情報収集はTwitter。本を読むならKindleで。


 おまけに電話するのも。時間の確認もみんなスマホでやっている。


 待たない時代になった。快適だ。

 ネットさえあれば全てがこと足りる。便利だ。


 逆に言うとネットがなければ生きていけない。


 私は今日もスマホを見つめながら何かをポチポチ押し続けている。


 なぜあんなに『待っていた』んだろう。すでに思い出せない。


お読みいただきありがとうございました!

☆☆日間3位 月間18位☆☆


■□■□

 

 エッセイに入れ忘れたんですが、この間映画館に行ったんですよ。


 シネコンて


スマホで席予約→メールでお客様番号が送られてくる→映画館の機械にお客様番号と登録電話番号打ち込む→チケット発券


 しゃないですか?


 これが今


メールでQRコードが送られてくる→入場口でスマホ見せて入場OK


に変わってたんです。チケットの発券が端折はしょられたんです。


 びっくりしましたよ。でも確かに『チケット発券』て無駄な動作でしたよね。


 古の時代は


行列に並ぶ→窓口でチケット買う→行列に並ぶ→開場と同時に席争奪戦


だったんですよ。ほんとだって。『サザエさん』の長谷川町子がそうやって映画見てたんだって。


 食べ物飲み物は持ち込みOKだったんだよ! インディアン嘘つかない! 映画館中食べ物の匂いが漂ってたんだからね!


 時代の進みっぷりに驚いたので後書きに付け加えさせていただきました。

 そのうち生体認証でスマホすら要らなくなるのかも……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無人レジはコロナもあって普及したんでしょうね。 スーパーのセルフレジは好きじゃないです。 「ピ」「商品を袋に入れてください」「トサ」「ピ」「商品を袋に入れてください」「トサ」「ピ」 が有人…
[良い点] もう共感ばかりです! スマホ無しの生活は考えられませんよ。 なろうのホーム画面もスマホがあるから、依存症のように数十分おきにチェックしてます。 でも私は、電車に乗るとき結構レトロな体験し…
[良い点] 『待つということ』(鷲田清一)を思い出しました! ずっと親しみのある文章で、分かりやすく、最後までふむふむと読んでしまいました。 所々のユーモアある文章で、くすっと笑ってしまったのですが…
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