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異世界で女嫌いのイケメンに甘やかされています  作者: ハラペコWASABI
恋愛編

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騎士様登場

 ハンスに案内され、以前蒼大と出た道に出ると、アーチ型の幌馬車が停まっていた。


 やっぱり異世界といったら馬車だよね!

 荷台の左右に長椅子が取り付けられていて、私と蒼大は2人でバランスよく腰掛けた。


 ハンスは栗毛色の馬の顔を優しく撫で御者台に座り振り返る。


「では出発します」


「おねがいします!」


 ハンスが上機嫌で鼻歌を歌い始めると、馬車はガタゴトと心地よく揺れ、のんびりと進み始めた。


「こう言うのいいよね」

「ああ、なんか異世界来たなって感じだな」


 風が運ぶ草の匂いを感じながら、私と蒼大は顔を見合わせて笑い合う。些細な事でも共感できるこの距離感がすごく心地いい。


 ハンスとも会話しながら進み、1時間ほどで見上げるほど高い市壁が見えて来た。白っぽいザラついた灰色の壁には外側に突出した円形の側防塔(そくぼうとう)が見える。戦いの歴史があるのかも。


 馬車が停まったのは重厚感のある巨大な門の前。日本では絶対にお目にかかれない迫力に圧倒される。


 キョロキョロと観察していると、門横の詰所から2人の門番が近づいて来て——私は思わず、両手で口元を覆った。


 門番さんが騎士様だぁーっ!何この制服。カッコ良すぎ!ヤバイ!きゃあ〜!

 心の中で叫びまくり。


 黒地に銀色ボタンが縦2列に並んだジャケットに同色のズボンとブーツ。銀の糸で縁取られた詰襟と肩章付きで、右肩のみに掛けられた黒いマントが風に揺れてめちゃくちゃカッコイイ。袖口も銀の飾りボタンが行儀よく並んでいる。 


 し・か・も茶髪と赤髪の騎士様は背が高く、スラッとして顔も整っている。


 何処から見ても乙女の夢と言っていい、異世界漫画で見ていた騎士様そのもの。


「素敵すぎる……」


 うっとり口から本音が溢れる。その瞬間、目の前に座っていた蒼大が、勢いよく前のめりになった。


「今なんつった?」


「素敵って言ったの。だってあの騎士様だよ!乙女の夢!漫画でしか見た事なかったのに、生で見られる日が来るなんて本気で生きてて良かった!この感動、蒼大にも伝われっ」


 火照った頰に風を送ろうと手で小さく扇いでいると蒼大は腕を組み、面白くなさそうに唇を尖らせた。初めて見る表情。


「そんなにかっこいいか?つーか!俺もあの制服着たら騎士に見えるんじゃね?」


「あ、似合いそう!」


 って、言ってから蒼大が騎士服で門に立っている所を想像してしまった。

 ヤバイ。かっこよすぎて門に女子が列を成しちゃうよ!中学生の時みたいに。あの頃は何も思わなかったけど、今は……


「だよな、よし、俺騎士になるか」


「いやいや、そんな簡単にはなれないんじゃないかなー?」


 門にプレゼントを持って並ぶ異世界の女子たちを想像して、思わず食い気味に否定してしまう。


「そうか?」

「うん、朝早くから厳しい訓練とか必要だと思う」


 まだ起こってもいないのに想像で嫉妬に似た感情が。あぁ、(つら)い!蒼大がモテるのは絶対に嫌だ!


 葛藤しているとハンスに説明を受けていた門番の騎士様達が蒼大と私を興味深々と言った好奇の目で見てきた。


「異世界人ですか!」


 って目をキラキラさせて。

 穴が空きそうなほど見られるけど嫌な気はしない。だって異世界人なんて聞いたら気になりますよね!


 葛藤は吹き飛び、ニコニコして軽く頭を下げるとすぐに通行を許可してくれた。


 手を振ると2人共笑顔で手を振り返してくれる。


 はぁあ!何だろうこの、推しにファンサされた気分。騎士様最高!


 門を抜けると、西洋風の美しい街並みに、ファンタジー感あふれる服装の人々が歩いている。

 活気ある路上市に美味しそうな大量のトマトが見える。

 道路で遊ぶ少年達は慌てて馬車を避けていく。


 ウキウキしている私とは対照的に、蒼大は何か考え込むように無言になったので馬車から見える風景を眺める。


「あ、あそこにも騎士様がいるっ!しかも馬に乗ってる!遠くから見てもかっこよすぎる」


 私は騎士様の存在に浮かれていると言う言葉がピッタリかも。


 毛穴からドーパミンが出ていそう。ムフフと騎士様を見ていると蒼大が急に口を開いた。


「やっぱ俺騎士になるしかないと思うんだけど」


「えー」


 つい口からポロリと本音が出てしまった。


「なんで反対すんの?」


 蒼大が騎士になったらかっこよすぎて女の子が群がっちゃうから嫌だなんて、彼女でもないのに言えるわけがない!


「んん……別に反対してるわけじゃないんだけど、まだ他の職業を見てもいないのに決めていいのかなって!なんでそんなに騎士になりたいの?」


 蒼大は私の顔をじいっと見つめて少し肩を落とした。


「そりゃーあれだよ、やっぱ騎士がカッコいいだろ?」


 なんか、言い方が誤魔化してる気がする。……まさか、私の反応を見て騎士にこだわってるとか? いや、私ってばなんて自意識過剰な考えを!冷静になりなさーい!


「そっか、じゃあ頑張って!応援する」


 いくらモヤモヤしようが、私は蒼大の人生を決める権利はない。やりたいなら応援してあげるのが友達だ。


 ただ、蒼大が騎士になっても門に配属されませんように。


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