高鳴るボタン
「……そ」
恥ずかしそうに小さく肯定されると、当たったと言う明るい気持ちに、少し残念な気持ちが入り混じり驚く。
何この感情。蒼大のイケメンパワー、人を惹きつけるスキル凄すぎる。
でも表には出さない!
「えー!告白だったんだ?コンビニで待ってたって事は同中だった子?私のせいで本当にごめんなさい」
一世一代の大勝負の日、運命の分岐だなんて人生を賭けていたに違いないし、ドキドキしながら待っていた蒼大の気持ちを考えると申し訳なさが半端ない。
私が蹴りを入れなければ蒼大はトラックから逃げられたであろうから。
相手の子も蒼大に告白されたら100パーOKに決まってる。
罪悪感が渦巻いて、顔の前で手を合わせ力一杯謝る。
「ほんっっとごめん」
「七海が謝る必要ねーって。さっさと安全な場所探そうぜ」
大事な日を台無しにしてしまったのにも関わらず蒼大は私の事を責めようとはしない。
好きな子にもう2度と会えないかもしれないのに。良い人って言うかあっさり過ぎない?!私に罪悪感を感じさせない為?
「ごめん……」
「だぁっ!謝らなくていいって言ってるだろ?」
「だって申し訳なさすぎて……好きな子にもう会えないかもしれないんだよ?!」
「あー……大丈夫。謝らないと気が済まないならもー許した。これでその話はオシマイ。どっちにしろ時期尚早ってやつだったから告れなくて正解だったんだよ。俺強運なんだよね」
好きな子に告白出来なくて強運の意味が分からない。やっぱり私に罪悪感を感じさせない為に言ってくれてるんだろうな。
「……ありがとう」
「お礼の意味がよくわかんねーけど。もうヘコむなよ」
慰めるようにポンと頭を撫でられ息を止めた。
頭に胸が高鳴るボタンが付いてたみたい。
ボタンを押された私は漫画みたいに胸が高鳴り歯を食いしばる。
思い切りときめいてしまってるけど蒼大には好きな子がいるんだよ?!今話してたところじゃない!
「ねぇ、蒼大の好きな子はファン?」
思わず口から出て、しまった!と思った。出会ったばかりの私に聞かれたくないよね、こういうの。
「何!?俺の好きな人が気になんの?」
意外な事に蒼大は嬉しそうな顔で返事をした。
「うん。相手の子に申し訳ないなって」
「そっちか。ファンじゃねーよ。逆!顔しか知らねーのに寄って来る女と違って俺に興味ナシ!自分で言うのもなんだけど俺モテるから少しは意識してくれてるかと思ってたけど全くだった。はぁ。辛い」
「そんな人いるんだ?でも蒼大が好きって言えばうんって言うんじゃない?」
「……いや、100パーねぇよ」
蒼大はガックリと肩を落とし溜息を吐いた。
このモテ男蒼大を落ち込ませるとは……
「そう悲観的にならなくても。相手の気持ちは本人に聞かないと分からないでしょ?」
慰めたつもりの言葉だったけど、蒼大は頭を押さえさっきより深い溜息を吐いた。
どんな子か分からないけど蒼大をここまで翻弄させる女子って凄い。ちょっと——いや、かなり憧れちゃう。
「はぁぁぁ……そうだ七海、こうなったらもう顔だけで恋しない女子は何処で男に惚れるのか教えてくんね?」
「中身じゃない?」
「だからどんな中身?もっと具体的に!」
「んー……頼り甲斐があって男らしくて優しくてケチケチしてなくて……あ、個人的に1番大事なんだけど、一途な人!」
蒼大は私の話をフンフンと頷きながら聞いていたけど思い切り首を傾げた。
「あれ?俺それ全部当てはまってね?」
「自分で言う?」
「本当の事だろ」
「あはは!凄い自信」
あまりにも真面目顔で言うから可笑しくて笑うと蒼大も満足気に笑んだ。
「ヨシ、じゃー七海も笑顔になったし!行きますか!」
確かにさっきまでの罪悪感が消えて普通に笑ってた。計算なのか天然なのか、言う事も笑顔もヤバイ。
手を触れなくても胸が高鳴るボタンは押せるみたい。




