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霧の箱  作者: 斎藤 聖
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第一話:迷い

初投稿作品になります。語彙もなく、つたない文章ですが一生懸命書かせていただきますのでよろしくお願いします。真咲と朱里の幻想の恋を見守ってやってください。

霧に包まれてから僕はもう一時間近く車を走らせていた。

フォグランプをつけ、しきりに上下左右を気にしながら。

カーステレオからはノイズの入ったラジオが聞こえている。どうやら渋滞情報を報せているらしい。時折、刺さるようなノイズが入って、いつもより音量を上げているカーステレオはそれに呼応して刺さるような音を僕に伝える。


窓を少し開けてみると、湿った空気が僕の腕を舐めまわしているのがわかる。それはまるでサウナに入った後の開放感にも似ているのだが、今は閉塞感しか感じなかった。


唾を飲み込む。大音量のラジオよりもはっきりと喉が鳴ったのがわかる。掌にはじっとりと時間が止まったような汗がこびりついていた。しきりにルームミラーが気になっている。


唐突に夜中に車を走らせてからもう何時間経つのだろう…

適当に走らせていた僕も悪いのだが、まさかこのような山道に迷い込んでしまうとは夢にも思わなかった。

いつものように城ケ島の方に向かっていたはずだった。


ただ、途中から記憶がない。


だからといってこのようなところに来てしまった理由にはならなかった。人間、通いなれた道を走っている時は往々にしてそこまではっきりと軌跡を覚えているものではない。


3速に落とす。なかなか辛い坂道になってきていた。周りには鬱蒼とした木々たちがそこここにひしめき合っている。木々はアーチを作り空は見えないのだろう。そんな木々だ。だが、元々一寸先しか見えない僕にとってはどうでもよかった。


徐々に不安に包まれていくのがわかる。不安とは内側から蝕むものではない。足のつま先から徐々に体を駆け上ってくるものであると僕は思った。このまま迷い込んでしまうのではないかと思っていた。一本道ではあるが、霧がすべてをネガティブな思考にしているのだろう。僕はこのまま死んでしまうのではなどと思っていた。一本道なのに。道があるということは、それがなにかに繋がっているということだ。なにかに繋げたいから道があるのだ。だから心配する必要なんてないんだ、なんて口に出してみてもノイズにかき消されていく。


…ノイズ?


いつの間にかカーステレオはラジオではなくただのノイズだけを発していた。僕は舌打ちをして電源を切った。そうすると残された音はエンジンの音と僕の鼓動と湿った僕の溜息だけだった。


とにかく今は慎重に進むしかない。と口に出した瞬間、ルームミラーになにかが写った。僕は一瞬のうちにそれをなにかよくないものだと感じた。それと同時に見つめてしまった。


目の前は崖だった。僕の車はそのまま崖の下に吸い込まれていった。後に、僕が覚えているのは恐怖でも悲しみでもなく金属がつぶれる轟音だけであった。

よかったら感想などください。お待ちしています。

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