GWには裏がある!?③
叶奈は家へ帰るとすぐに、真奈の部屋の目の前まで行く。部屋を二回ノックする。
「入るわよ」
ドアを開けると、制服のままベットの上で仰向けになっていた。
「私開けていいなんて許可してないんだけど」
「まあまあそんな怒らないで」
「別に怒ってないよ。それで用件は何?」
真奈は影があるような口調で問いかけてくる。このような状態で真奈は快く天文部の合宿に付いてきてくれるのか付いてきてくれるのかと思いながら、真奈に提案してみる。
「ゴールデンウィークにさ天文部の合宿あるんだけど一緒に行かない?」
「お姉ちゃん天文部入ってたの!?」
「いや...悠と学級委員の仕事をやってた時に、野崎先生に一緒に来ないかって誘われて...」
「なるほどね...悠はその合宿に来るんでしょ?」
「うん...あと希とかを誘うつもり...」
希の名前を聞いたとき真奈は少し驚いた表情を見せベットから起き上がるが、すぐに真剣な顔に戻る。
「いかない...」
「なんでよ」
「行きたくないの」
真奈はだいぶ強めの口調で言い返す。真奈のことばを聞いた叶奈は溜まっていた怒りを爆発させる。
「あんたなんなの。ほんとは悠のこと好きなんでしょ?それなのに、私や希が相手だから逃げるの?あんたってそんなに意気地なしだったっけ。別に私は一ミリも心配してないけど、悠が心配してるの。人に迷惑かけないように生きてくんない?」
「.........」
下を向いたままびくともしない真奈を見て、いらだちを覚える。
「当日何が何でも連れて行くから、それでちゃんとけじめをつけてちょうだい」
「行きたくない...行かない...」
真奈が小声で言うが叶奈は無視すると、真奈の部屋を颯爽と出て行った。
駄々をこねている真奈を叶奈は連れて行きたくないが、これは真奈の為であり、叶奈の為でもある。これは先に進むための大事な一歩である。
真奈も今の一件に関しては思うところがあった。悠に心配させているのは申し訳ないと思う反面、顔を合わせたくないというのが正直な感想だ。希に勝てる物は何もない。ましてやそのラブコメ戦争に叶奈が参戦するとなると、勝率が10%を切るのは間違いない。そんな負け戦に首を突っ込みたくないというのが真奈の心情だ。
「ほんとに自分勝手でみんなも私自身も大っ嫌い」
口から出た小さなひとりごとは、誰も聞いていなかった。
明日からゴールデンウィークが始まるだけあり帰りのホームルーム前はうるさい。あっちこっちで、どこへ出かけるだ何するだの話で持ち切りだ。中にはゴールデンウィーク休み中全て練習試合か一日練習で楽しめない、ゴールデンウィークなんて滅べばいいと言っている坊主の集団が教室の隅っこで肩を落としている。
教室がうるさい事にしびれを切らしたのか野崎先生が机を思い切り叩く。
「お前らうるさい」
教室は静寂に包まれる。生徒全員うるさくしたことを反省していると、しかめっ面で、こちらを見ている。
「家帰ったらゴールデンウィーク始まるんだぞ、静かにしろ」
「(どういうこと?)」
それを自分の席で聞いていた、悠には理解不能だった。まず大前提として怒っているのか、怒ってないのかどちらだかか分からない。
意味が分からず、少し考えていると先生が声を高らかにして言う。
「やっと明日からゴールデンウィークなんだぞ?お前らは早く家帰りたくないのか。私は早く帰りたい。なぜなら新しい学年の担任が始まって一か月やるべきことが多くて大変で......それが今日家帰ったらやっと休めるんだぞ...私を休ませてくれよ......」
先生は机に顔を伏せ机を叩いている。教室は先生を静かに見守っていた。なんでホームルームで一人コントをしているんだと思いながら、悠はそれを見ていた。
「と言うわけで明日からゴールデンウィークだから怪我だけしないように。次の登校日は5月7日な覚えておけよ、じゃあ各々連休楽しんで」
帰りの挨拶を済ませると、生徒全員帰りの準備を始める。悠も帰ろうと思い教室を出ようとすると誰かに肩を掴まれる。
「おい市ノ瀬お前はまだ帰れないぞ?」
「なんでですか...先生も早く帰りたいって言ってたじゃないですか...」
お決まりかの様にいつもの場所に連れていかれるのであった。