GWには裏がある!?②
「シチュエーションと言われましても...」
「難しいか?」
先生が尋ねる。
「難しいって言うか、野崎先生の27年生きてきた経験をそこに活かしてみてはいかがでしょうか?」
「やかましいわ!」
先生は即答し、悠を睨めつけている。
時刻は4時半を回ろうとしている。時計を見た先生は慌てた様子であった。なぜなら4時半から職員会議が始まるからだ。
「職員会議があるからお二人さん頼んだぞ。あと他に行く人にもそこの机においてある紙渡して親の許可取っておくように言っておいてくれ」
「はいはい」
悠は呆れた声で返事をした。それを聞いた先生は何かに納得した様子で直ぐに職員室へと向かった。
「じゃあ俺達も帰るとするか」
「えぇ」
天文部の部室を出て来た道を辿って歩いて行く。教室の目の前を過ぎて階段を降りると下駄箱が見える。中履きから外履きに履き替え外に出ると外はまだ明るく部活動をやっているのか元気な声が聞こえる。
「お!蓮じゃん。部活頑張ってるね」
サッカー部のグラウンドで必死にボールを追いかけてる姿が見える、大会も近いためかピリピリした雰囲気だ。とここで悠は先週の事を思い出す。
「叶奈は先週ショッピングモールで蓮と何してたんだ?」
「私達の事みたの!?」
叶奈はとても驚いてこちらを見る。
「あっ...うん...」
「あれは蓮君とたまたまあそこで会ってお話してただけ...」
「へぇそうなんだ」
叶奈のことに微塵も興味ないのか悠の反応が薄い。私のことに興味ないのかと心で思うともっと腹立たしくなって悠強く当たってしまう。
「聞いといてその反応何?」
「えっ...いや...ごめんなさい...」
「何が?」
「いや...だってなんか怒ってるじゃん...」
何故か怒り口調の叶奈に対して何となく謝ってみたが、あんまり効果はなかったようだ。女の子の感情の起伏には理解に苦しむ。悠は改めてそう思った。
「悠こそあの時、真奈とあそこで何してたの?凄く楽しそうにしてたけど...」
悠とても驚きオドオドしてしまう。
「お...俺らのこと見たの?」
「見たわよ。紙袋みたいなやつ叶奈に渡してたじゃない」
「あれは真奈に...誕プレ的なやつだ...」
「私達誕生日12月ですけど」
「誕生日プレゼントの前倒し的なね...」
悠は咄嗟に叶奈に嘘をつく。なぜなら真奈が何故か元気ないのに、ここでまた買わされたなんて言って姉に怒られたら学校不登校になるんじゃないかと思ったからだ。とても賢明な判断とは言い難いがその場をやり過ごす。
2人のいる校門の雰囲気がとてつもなく悪い気がした為話の話題を変える事にした。
「そうだそうだ!叶奈は誰を天文部の合宿という名のお遊びに連れていくつもりだ?」
「んー決まってないけど、真奈は連れていくつもり...」
「他は?」
「希とかかな...」
その名前を聞いた瞬間悠は心の中で歓喜の舞をしていた。叶奈の事なので『他は?』と聞いた時人の恋を邪魔をするのが生きがいの為、一緒に行く人に如月希の名前をあげないんじゃないかと思ったが、悠が一縷の望みにかけて聞いただけの事はあった。叶奈が自分の口から言った為、誘わない訳にはいかなくなってしまった。
そして叶奈は自分が連れていくと言った事で、悠の思い通りになってしまった事がとても腹立たしかった。
「言っておくけど、貴方に喋る権利ないわよ。3枚だけ『1分間自由に喋る券』をあげるから、上手く使いなさい」
「なんだよそれ...同い歳と会話するのになんでお前の許可が必要なんだよ...」
「当たり前でしょ?貴方の望むような展開にはさせないわよ」
「ひどいな...」
これが叶奈にできる精一杯の抵抗である。こんな事しかできない自分がもどかしいが我慢をし叶奈は『いつかきっと...』と心にそっと誓うのであった。