買い物には裏がある!?③
「ただいま!」
真奈は元気よく玄関のドアを思い切り開けたが、家には誰もいなかった。廊下の冷たい空気を感じながら2階にあがる。
2階にあがると自分の部屋のドアを開けて目の前に広がっている時分の布団にダイブする。うつ伏せになり、自分の顔を枕に押し付ける。
「あーーーーーーーーーー」
枕に思い切り叫ぶと少し気持ちの整理が出来た気がして心が楽になった気がする。
「ほんとに罪な男。人の好意も知らないで、呑気に鈍感な男。滅んじゃえばいいのに!」
真奈はそのように文句を枕に言っていると、いつの間にか眠りについてしまった。
「...て......きて......真奈起きて」
真奈は誰かに起こされたので起きてみると、目の前に叶奈がいた。
「うわわわわ、お姉ちゃん!?」
「なぜそんなに驚くのよ」
驚いた理由は二つある。一つ目は起きて目が覚めたら目の前に人がいたからだ。起きて目の前に人がいたらそりゃ誰だって驚く。もう一つの理由は、叶奈と蓮が二人っきりの現場を目撃して真奈の体内時計では一時間と経っていないからだ。真奈自身後者の理由が主な驚いた原因であったが、驚いた原因がお姉ちゃんが蓮君とデート中なのに目の前にいたからなんて言えず真奈は咄嗟に前者の理由を言った。
「起きて人が目の前にいたらそりゃ驚くよ」
「確かに、そうだよね」
「だよだよ」
真奈は動揺を隠せているのか自分では分からないが隠せていると信じて、叶奈に用件を聞く。
「お姉ちゃんわざわざ、呼びに来てどうしたの?」
「時間見てみなよ」
手元に置いてあったスマホの電源を付け確認してみる。
「え!?もう七時半じゃん!ごはんの時間」
「夕飯の準備できてるから呼びに来たんじゃない」
真奈は慌ててリビングに降りようとすると、叶奈に止められる。
「真奈ちょっと待って、話があるの」
神妙な面持ちで放たれた叶奈の一言に真奈を戸惑わせる。真奈はベットに座っている叶奈の方を向く。
「どうしたの?」
「真奈は悠のこと好きなの?」
「え...どうしたのいきなり...」
「今日、悠と一緒にいるの見かけたからさ」
真奈はとても困惑した。聞かれたことに頭の整理が追い付かない。
「見たの...?」
「服屋から紙袋持って出てくるところ見たわ、何か楽しそうに話してたね」
「うん......」
真奈が沈黙し部屋には重苦しい空気が漂う。この静かな空間が嫌で真奈は叶奈に問いかける。
「お姉ちゃんは悠のこと好きなの?」
真奈は自分の本能のまま聞いてしまった。我に返った時には既に遅く叶奈が答えてしまう。
「私は悠の事がとても好きだよ...あいつが希の事が好きでも諦められないくらい好きなの...」
「そうなんだ...」
蓮と叶奈が2人で今日いた事、私達を見ていた事、そして姉の告白が怒涛の如く真奈の脳に押し寄せてきて、情報整理が追いつかなかった。
「で、真奈はどうなの?」
「私は友達以上恋人未満って感じだよ...
はは...」
「そう...」
叶奈は真奈の歯切れの悪い返事にモヤモヤ感を覚えるが、その場を後にしようと重たい腰を上げ立ち上がり、真奈の横を通過すると真奈の背後で歩みを止める。
「私ね、たとえ希だろうと真奈が敵だろうと諦めるつもりは無いし、負けるつもりは無いから......私先降りてるね」
真奈の背後で発せられた言葉は、真奈の心に重くのしかかる。するとほっぺたに水滴が流れているのを感じる。
「(どうして...?)」
涙の理由なんて真奈には分かっていた。姉の確固たる決意と自分の気持ちと比べた時焦燥感を感じてしまったこと、そして咄嗟とは言えど嘘をついたこと。そんな自分が嫌になる。
味のしない夕飯を食べ、お風呂に入り早々に布団の中に入った。
「悠とは少し距離をおこう」
そう決意すると今日の疲れがどっと身体にのしかかり直ぐに真奈は寝てしまった。