始業式には裏がある!? 後編
先生は天文部の顧問であり天文部の部室がある旧校舎に首根っこを掴まれながら連れていかれた。部室のドアを開け、色々な天体観測に必要な資料や物が散らかっている。そして近くのイスに座らされる
「話あるなら教室で良くないですか?」
「それだとみんなが邪魔で説教できないだろ」
「あっほんとに説教するんですね」
「当たり前だ」
10分ほど先生に独身の女性に対して言ってはいけない言葉を熱く語ってきたが、全く心に響いてこない。そして、先生はここからが本題だぞみたいな顔をしてから、一呼吸おいてから話し始める。
「市ノ瀬はゴールデンウィークは暇か?」
「まぁ...暇ですが」
「教師を馬鹿にした市ノ瀬に贖罪のチャンスをあげよう」
「もう怒られたのが充分贖罪したと思いますが...」
脇腹を思いっきり抓られる。
「嘘です...僕をもっと罰してください」
「分かっているならよろしい」
「で、ゴールデンウィークは何をしたらいいんですか?」
「天文部を手伝え」
「あっはい、分かりました」
「案外素直だな、もっと駄々をこねて嫌がると思ったが...」
悠は大型連休がある度に先生の部活のお手伝いをしていて、どんなに頑張ったところで先生を振り切ることができないので、予めゴールデンウィークの予定を空けておいたのが功を奏した。
先生は少し拍子抜けしたしたようで困っている。
「じゃあもう用件は済んだから、帰っていいぞって言いたいところだけど、修学旅行の実行委員だけ決めて帰ってくれ」
「わかりました」
悠はとりあえず教室に戻る事にした。
教室に戻ろうとすると、教室の中に人影が確認できる。よくクラスの事わからないし、さっきの出来事のせいで変なやつ扱いされてそうだし、気まずいなって思いつつよく見たら、叶奈であった。
教室のドアを開け、叶奈に何をしているか聞く。
「なんでまだ残ってるの?」
「実行委員決めなきゃいけないのに、あんたが荷物置いて先生とどっか行ったから待ってたんでしょ」
「あぁ...ごめんごめん」
「早く決めて帰りましょ」
「そうだな」
色々と叶奈と悠は話し合ったがクラスに知らない子が多いし、どうすればいいか分からず、悩んだ結果仲のいい友達にやらせればいいという結論に至る。
「私は希か真奈に頼んでみるわ、悠はこのクラスに仲のいい友達いるの?」
「い、いるわ!」
座席表をパッと見みたが見つからない、すると叶奈が座席表を指差しながら話す。
「この渡蓮って子、悠と仲良かったはずだけど」
「この学校に渡なんて友達俺にはいないぞ...」
「あれ知らないの?」
「何がだ?」
「鍵谷蓮って言った方が分かるわよね。蓮くん母親が再婚して、名字が変わったのよ」
悠は何故、叶奈が俺の知らない事を知っているのか気になった。
「なんで、叶奈がそんな事知ってるんだ?」
「だって蓮くんとLINEしてるもの」
なんでお前らLINE交換しててやり取りしてんだよと思ったが、クラスに中高6年間一緒の大友達がいたため一安心した。
「じゃあ俺は蓮に頼んでみるから、叶奈も聞いてみて」
「分かったわ」
叶奈と悠は頼む人にLINEをしてみる。
悠「お前、同じクラスだったなら声をかけてくれよ。それより修学旅行の実行委員やってくれないか?」
すぐに既読がつき、返信がくる。
蓮「席が遠かったし色々と話す事が多くて話したかったんだけど中々機会が見つからなくて...明日あたり話すよ。あと実行委員の件はやってやる」
悠「大親友よありがとう」
蓮「大した事じゃないしその位の頼みならやってやる」
叶奈もこちらを見て満面の笑みを浮かべているので叶奈も決まったようだ。
「どっちが引き受けてくれるって?」
「希がやってくれるって」
「わかった。先生に言ってくるから先帰ってていいよ」
「私も一緒に行くわ」
「先生に何か用あるなら伝えておくぞ」
叶奈は顔を赤くしながら答える。
「そういう事じゃない、ついて行くって言ったんだから、ついて行かせなさい」
「おおう、わかったよ」
悠にはなんで、こんなに怒ってるのか分からなかったがとりあえず一緒に行くことになった。
また校舎から少し離れた天文部の部室に行く、部室に着きノックをしドアを開ける。
「失礼します、先生実行委員決まりましたよ」
先生がこちらを振り向き返事をする。
「おお、市ノ瀬もう決めてきたか仕事が早いな」
「まあ、叶奈も一緒に決めてくれたんで」
すると、先生は感心した顔をする。
「学級委員長の二人がちゃんと連携取れてて何よりだよ。二人共帰っていいぞ」
悠はドアを開け帰ろうとすると、先生が悠に声をかける。
「市ノ瀬ゴールデンウィークの話は追って連絡するな」
「はい、わかりました」
悠の隣にいる叶奈は不思議そうな顔をする。
「ゴールデンウィーク何かするの?」
「天文部の手伝いだよ」
「へぇそうなんだ」
色々な意味を含んでそうな叶奈の返事を聞き、悠は少し嫌な予感がする。すると叶奈は振り向き、先生に向けて話し始める。
「先生、私もゴールデンウィーク暇なので、天文部のお手伝いしたいです」
叶奈の言ったことに少し驚きを顕にした悠は、このままじゃダメだと思い叶奈の肩を掴み説得する。
「おいおい辞めた方がいいぞ。休日出勤するしかないし、自分がOK出すまでいつまでも追っかけてくるし、先生に目をつけられると色々と面倒くさいぞ」
先生は説得している俺をすっ飛ばし、叶奈の両手を掴み、目をキラキラさせながら話し始める。
「大歓迎だよ、市ノ瀬言ってることは無視していいからね」
「は、はい...」
「じゃあ神代姉にも、天体観測の素晴らしさをたっぷり教えてあげるから楽しみにしててね、ゴールデンウィークの件はまた追って連絡するから」
「わかりました...」
先生は一方的に話を進め、叶奈を強引に引き込む。これ以上ここにいるのは危険と判断した悠は迅速に行動する。
「では先生、俺と叶奈はこれから用事があるので失礼します」
「ええ、もうちょい話そうよ」
勢いよくドアを閉めて話を遮る。先生が部室で大きい声で文句を言ってるが無視が1番いい事を知っているので無視をする。
「叶奈一緒に帰るか」
校門を出て坂を下り駅へ向かう。その途中、悠は気になった事を叶奈に聞いた。
「なんで、天文部のお手伝いをしようと思った?天体観測に興味あったのか?」
叶奈は少し俯きながら答える。
「まあそれも少しはあるかな...」
「他の理由は?」
叶奈は悠の少し前に出て、口元をごにょごにょさせる。
「それはゴールデンウィークも悠に会いたいから...」
悠は叶奈の言っていることが何も聞き取れない。
「えっ?なんて言った?」
「なんも言ってないよ」
「なんか言ってただろ」
「気の所為だよ」
ちょっと離れたところにいた叶奈が近ずいてくる。
「私も聞きたいことがあったんだけど聞いていい?」
「なんだ?」
「なんで学級委員長決めの時私を指名したの?」
「そんなの決まってるだろ、お前が俺の事を騙した罰だ」
「希指名すれば一緒にできたのに」
意表を突く叶奈の言葉を聞いて悠は少ししょんぼりする。
「確かにそうだな...考えもしなかったわ...」
「悠はアホだね」
「けど、如月さんと一緒に学級委員長やってたら緊張しすぎて日本語喋れなかったと思うから、一緒にやれるのが叶奈で良かったと思う」
叶奈は顔を赤くするが、冷静を装う。
「あっそ」
「おいおい、叶奈さん冷たくないですか?もうちょっと嬉しさ出してよ」
「そんなの嫌だし、私はいつも通りよ」
「そうか」
外はもう夕暮れ時であり少し辺りが暗くなっている。そして二人は電車に乗り家へ帰った。
叶奈は悠から指名されたり、一緒にやるのが叶奈で良かったと言われたりして、一日中ドキドキしっぱなしで疲れていた。今日は早く寝ようと思いながら玄関を開けると、目の前から妹の真奈が階段ちょうど降りて鉢合わせする。
「あっおかえり、遅かったね」
「ただいま、今日はいきなり学級委員の仕事があって」
「へぇそうなんだ」
靴を脱ぎ玄関を上がり階段を登って自分の部屋へ向かおうとすると真奈が声をかけてくる。
「そう言えば、なんで悠は叶奈の事を指名したの?もしかして口裏合わせてたとか?」
「違うよ」
「教えてくれないってのがもっと怪しい...」
「ほんとにくだらない事で、指名されただけだから安心して」
真奈は顔をしかめて、鼻でフンと言いながら腕を組み少し斜めを向く。
「いいもん明日悠に直接聞くから」
「そうして頂戴。私は疲れたから今日はもう寝るね、おやすみ」
「ご飯は?」
「いらな〜い」
真奈はリビングへ向かい、叶奈は自室のベットへ向かった。