【エピローグ】
ここはどこだろう?
霧島は見知らぬ廃墟にいた。
テレビで見る軍艦島のような、廃墟が立ち並ぶ場所。道に落ちた瓦礫はカラフルに光っている。日本の建造物とは思えないくらいに。
ん?
あれ、俺死ななかったっけ?
霧島は自分の刺し傷がある辺りをさすってみる。しかし傷口はない。またこの状況か。頭を掻いた。もう死んだはずなのに、なぜまた呼ばれたのだろう?首をかしげてみても答えは思いつかない。
「私が呼んだんだよ。」声のする方を見ると、光莉が大きな瓦礫の陰から覗いていた。ゆっくりとそこから出てくる。懐かしくすら思えるその姿を霧島はまっすぐに眺めていた。
「協力してほしいことがあるんだ。成田肇のことで。」そう言うと、彼女の後ろから二人の男が現れる。
一人は隆史だ。「また会ったな。」と手を振ってくる。そしてもう一人は…
「池永さん…池永さんですか?」もう一人の男はゆっくりと頷く。
池永さん、彼は霧島が現役の時代に直属の上司だった人物で、ある刑事が彼の影響によって三年前、捜査一課に移動したという噂を聞いたことがある。確かその刑事の名前は…
「成田肇のことで、皆に協力してほしいことがあるんだ。」
光莉は、今まで見たこともないような真剣な表情でそう言った。
成田肇の物語は、まだしばらく終わりそうにない。
成田は広々とした家の縁側にいた。
夕焼けの光が差し込んでくる。この空は本当に燃えているように
「息子は画家志望でね。」この家の主、隆史の母親が茶を運んでくる。
「この間、母さんお葬式があるからって、急に帰ってきたと思ったらすぐに出て行っちゃってね、どこで何してるのかと思ったら、都会のアパートで野垂れ死んだって。本当に親不孝もんだよ、あの子は。」彼女の目には涙が浮かんでいた。
成田はお茶をすすりながら、彼がその時眺めたであろう夕焼けを改めて見つめる。太陽に向かって飛んでいくワタリドリの群れ、紅く染まる雲、色味を変えた庭の植物。成程、この光景に囲まれて育ったのなら画家になりたくなるかもしれない、と思ってしまうほど、この小さな光景はカラフルだった。
「実は、息子さんのことであなたにお伝えしたいことがあるんです。」
隆史から霧島へ、霧島から成田へ、引き継がれてゆく約束は今果たされた。同じように、今すぐに果たされることはなくとも、今すぐに叶うことはなくても、先人の夢は、意思は、思いは未来に引き継がれていく。人間は弔いを以てその意思を守り続けるのだろう。いつかその思いが報われる時を信じて。
闘い続けた先人に、一滴の紅い献花を。
刻野の長編はこんな感じです。
読んでいただきありがとうございましたm(__)m




