04 異世界の辺境で、スローライフを叫ぶ ─イッシキの章─(11)
同日中にまとめて投稿予定です。
え、ゲームって?
イッシキは再び困惑していた。
この場合、この世界はゲームみたいなものじゃん、って意味なのか?
「いや、ゲームでもいいんですけど、わたしは本気でやってるっていうか…」
「そりゃそうよ。私だって本気だよ。怪我したら痛いし。死んだらえらいこっちゃだよ」
「え、死んだことあるんですか」
「あるある、っていうかあなた、死んだことないの?」
「いえ、ありますけど…」
「なんなのよ。なんだか、はっきりしない人ね。
わたしが欲しいのは、もうちょっと具体的な情報なんだけど」
「え、えーと、例えばどんな…?」
「うーんと、じゃあさっきも聞いたけど、その防具一式、どうやって入手したの?なんかもう一人のお仲間も装備してたよね」
「どうやって、って。材料集めて、作ってもらったんです」
「へー、防具一式分交換してもらえる村人が確保してあるんだ。いいねぇ、どこにいるの?」
「いまちょっと隠れてるっていうか」
「情報料ってこと?
そういえば、ここ、一人も村人いないよね。ゾンビの襲撃でもあったのかと思ったら、あなたたちが連れ出したのかー。
手持ち素材でよければ出すけど、拠点に帰る方法も分からないんだよ。
大したものはないけど、何か欲しいものある?」
かみ合ってない、かみ合ってないけれど、言ってることは分かる気がしないでもない。
「彼は、村人って言えば村人なんですけど…。ここの村人は、もう全滅しちゃってます。
あ、彼は、私が死んでリスポーンしたってこと知らなくて、っていうか死んでもリスポーンできるって知らないんで、ちょっと秘密にしておいてもらってもいいですか。混乱するとあれなので」
「ん?よく分からないけど、死んだらどうなるって話をしなきゃいいのかな?ひょっとして、村人を連れて冒険してるってこと?」
「ええと、本人を呼びますね!アイン、アイーン!」
なんかもう、ムリー!
気持ち悪さも消えてないし。
やっぱり近くにいたらしく、何度か叫んでいるうちにアインがやってきた。
なんだ、聞かれていたのか。
「彼が、アインで、あ、わたしはイッシキです」
「ああ、よろしく、アイン、イッシキ。わたしはニシキ。
転生者で、ついさっきもまたよく分からない転移でここに飛ばされてきたとこなんだ」
「ニシキ、よろしくお願いします。俺は、前世ではハルサメって言ってました」
「ハルサメ…どこかで聞いた名前だな。ミシマだろ、タチカワだろ、カワハラだろ、もう一人ってことか」
「えっ」「えっ」
~アイン視点~
「ニシキは、俺たちのことを知っているんですか」
「ハルサメは知ってる。イッシキのことは知らなかったけど」
「え?わたし、カワハラですけど…?」
「え?」
今度はニシキが一瞬驚いた顔をして、次ににやりと笑って見せた。
「なるほど、そういうことかー。気持ち悪いと思った。
違う時間軸なのか世界線なのか知らないけれど、ここにいられるのはどっちか一人ってことみたいね。
なんせ、わたしも、カワハラなんで」
イッシキも、驚きながらも何か腑に落ちたような顔をしている。
「ちょっと待ってくださいよ。二人とも…川原さんの転生体ってこと?
で、時間軸か世界線?出会っちゃいけなかったみたいな?
ニシキは、転移で飛ばされる前は、ここと違う世界にいたんですか」
ニシキの纏う雰囲気が、一変している。口調も少し早口に、裏返ったような不快感を帯びた声。
「悠長に話してる時間はなさそうだけどぉ、少しは話しておこうかな。
わたしが前にいた世界は、ここと似てるよ。大雑把で、ブロックで出来てるみたいにおかしな法則があって。
でも、採集も、製作も出来なかった。まともに暮らしてる奴なんて、見たことない。
イッシキ、あなたは素材の採集ができる。アイン、あなたはアイテムを製作できる。それでもって、村人みたいに暮らしてた。そういうことでしょう?」
「あ、ああ」
「前までいた世界はね、アイテムは誰かが用意したものか、倒した敵がドロップするものしか手に入らない。壁も地面も破壊できないし、何かを設置することもできない。食料も攻略進めなきゃそのうち尽きるから、ルート外れてうだうだしてられるのも限られてる。
用意された世界の中でシナリオに沿った冒険をする。それが、アドベンチャーモードよ。
クリアしても、しなくても、そのうち違うマップに飛ばされる。ちょっとずつ場所や仕掛けが変わりながら、延々と探索と戦闘を繰り返してきた。他のプレイヤーに会うこともあったけど、いっときダンジョン攻略で組んだりするくらいね。なんせ、ほかにやることないんだから」
想像もできない修羅の国…でもないな。そういうゲームみたいなものってことか。
ニシキは、なんでそんなモードに?
転生の時に神に聞かれたとか…?
前世で悪いこと、ってイッシキも同じ前世なのか。
じゃあ、イッシキの未来がニシキなのか?
英霊となった者が、永遠の時の中で戦い続ける。夜に留まりし運命の物語が、俺の脳裏をよぎった。
「ニシキは、英霊なのか」
「英霊?誰かに称賛されたことなんて覚えがない。というより、わたしのことを覚えている人がどれだけいるかしらね。毎回召喚されてるのかってことは分からないけど、呼び出した人間に会ったことはないわ。
転移したくて転移してるわけでもないけど、ハックアンドスラッシュしかやることがない世界で、ボスを殺した後に長いことその場に残ってたって、それこそ剣の丘でも作ってたらいいのかな」
イッシキは、黙りこくってニシキを睨みつけている。
ニシキは、ゆっくりと舐めまわすような下目遣いをイッシキに送り、挑発的な口調で投げかける。
「さて、お互い、この気持ち悪さはどっちかがどうにかなるまで消えないみたいだけど、どうするぅ?」
「う、うぅぅ。うわあぁぁ!」
イッシキは、幼児の喧嘩のように叫びながら両手を指揮者のように持ち上げる。
その全ての指の間に小精霊があり、弾幕のように投げつけられる。
土の壁が次々と立ち上がるが、ニシキは素早く横方向に回避していく。
その先には、石や砂の小精霊が放ってあり、不規則に膨らんで足場を乱そうとしている。
「呆れた、そんな風にブロック使ってるのぉ?ちゃんと街でも作ってなさいよ!」
ニシキが高く跳ねる。
近くにあった建物の壁から、土の柱が次々と伸びてニシキの挙動を妨げる。
しかし、この手の精霊術ではダメージを与えることはできない。
動きを封じることが唯一の手だが、ニシキは空中でもある程度動くことができる。
落下のダメージも考えなくて済むようで、今もイッシキが伸ばした土の柱を蹴って、さらに上空に逃れている。4メートルも上がれば、精霊術でまともに手出しはできない。
しかし、向こうはどうする?
そう思ったとたん、ニシキが弓を構えるのが見えた。弓からも、紫の燐光が立ち昇っている。
イッシキは、ニシキの移動先を先読みして封じるために、ニシキから視線を外している。
「危ない!」




