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ロマンヌの癒し日記  作者: ほか
第1話 たやすく光らない姫
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3 パティシエ達の恋愛事情


 「んもう、チョーあり得ない」

 パティシエのティファニーが、調理台につっぷします。

 「あー、チョー声でかい」

 オーナーのロジェがティファニーの口調を真似ながらおどけてみせます。

 「朝から一体なんの騒ぎだ」

 「あーんもー、聞いてくださいよ、オーナー」

 耳にキンキンする声でティファニーは、ロジェの近くに近寄って来ました。

 「近くに来んなって。ただでさえでかい声なのに、鼓膜が破れる」

 「んもー、ひっどーい」

 そして彼女はわざわざテーブルのほうに戻ると、再びつっぷしました。

 「みんな男はそうやって言うんだ。男なんて……」

 あれ、とロジェは思いました。いつもなら笑いながらつっかかってくるのに、今日は少し変です。

 「おい、なんかあったのか、ティファニー」

 調理台に椅子を持ってきて腰掛け聞く体制をとってやると、ティファニーはしゃくりを上げながら、

 「あたし、最近親の勧めでお見合いしてるんですけど……そこで」

 言いながらだんだんまた声が大きくなっています。

 「けたたましい女性はちょっとって言われたんです~っ!!」

 「……ぷっ」

 「あっ、笑った! 笑いましたね、オーナー」

 「ロジェ」

 そこを通りがかった、レストランの看板娘であり、ロジェの奥さんでもあるプレヌが彼を咎めます。

 「ティファニーは真剣なのよ。笑うなんてひどい」

 「ひどい、ひどいっ」

 ティファニーも後から付け加えます。

 「ティファニー」

 プレヌはティファニーに向き合うと、

 「お見合いが成功するかどうかなんて、人と人のことだもの。運によるところも大きいわ。だからそんなにがっかりしないで」

 「ん~っ、プレヌさ~ん」

 「あらら……」

ティファニーはプレヌに抱き着いて、わんわん泣き始めます。

 「恋愛ってなかなか難しいものね」

 傍らで見ていたパエリエは溜息をつきながら、それでも台拭きで調理台を拭く手を止めません。

 「あら、パエリエさん。旦那さんとうまくいってないんですか?」

 そう質問するエレーヌに、

 「ちょっと色々あってね」

 と、パエリエはお茶を濁しました。

 ガラス張りになっていてお客様のいるダイニングからも見えるというのにいつもながら賑やかな調理室に、今回の主人公が入って来ました。なんだかとっても重い空気を身にまとっています。

 「あ~ん、聞いてよーセシルー」

 そのことにまったく気付かないティファニーが、彼女の首に抱きつき、再びわんわんと 泣き始めました。

 「あのねー、セシル」

 「……」

 「どう思う?」

 「……」

 「けたたましい女は嫌だとか言う男って……」

 「……」

 セシルはなんと言われても答えません。いつもはてきぱきとしている彼女が。これは珍しいことです。

 そんな彼女のことを、とりわけ切ない目で見つめている人物がいました。プレヌです。

 「おい、どうかしたのか、彼女」

 そんなプレヌの様子をいち早く気がついたロジェは、プレヌに耳打ちしました。

 「それが……」

 辛いことはなんでもロジェに打ち明けてしまうプレヌは思わずそう言い掛けてから、口をつぐみました。

 「ごめんなさい。わたしの口からは言えないわ」

 「そうか」

ロジェはそれ以上食いつくでもなく、あっさりと話を打ち切りました。


 「ふにゅ~っ」

 ロマンヌは困り果てていました。

 今日は日曜日。学校はお休みです。

 ダイニングから今解決しなければならない悲しみさんを背負っている人が誰か、こっそり観察していたのです。

 ところが大なり小なりどのパティシエさんもそれぞれなにか抱えているように見えてしまい、ロマンヌはどうしても全員を助けたくなってしまうのでした。

 「簡単でしゅわ。ロマンヌ。差し当たり一人ということならば、傷ついているのはずばり、セシルお姉ちゃんでしゅわ」

 親友の言葉に、ロマンヌは頷きました。

 「そうだよね。わたしも、そう思ってた」

 なぜなら、想いを吐き出せずに溜め込んでいる人こそが、一番心が危うい状態になりやすいからです。しかしロマンヌの親友兼妹のレアがそう判断した理由は、もっとより単純明快と見えて、

 「パパが心配してりゅんでしゅもん。きっとそうに決まってましゅ」

 というものでした。

 ついついころけそうになるロマンヌでしたが、よくよく考えてみると、レアの答えもあながち間違いではないと思いました。パパは人の心を感じ取るのです。

 「じゃぁ、まず第一回目のダーゲットはセシルお姉ちゃんで決まりでしゅワね。……ところでロマンヌ、早くレアにも、その妖精しゃんを見してくだしゃいなー」

 「妖精がどうかしたって?」

 「「あぁっ!」」

 気がつくと、パパーーレストランのオーナロジェが二人の前に立っていました。

 「え、えぇっと、よ、妖精が出てくる、お話があって、それがおもしろいねって話してたの。ね、レア」

 「しょ、しょーともでしゅワ~。願わくは未来の大女優であるこのレアが、舞台で演じたいと」

 「ふーん……」

 パパは少しだけ怪しむような目線を向けてきましたが、すぐに踵を返すと、お仕事に戻って行きました。

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