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ロマンヌの癒し日記  作者: ほか
第4話 強き心の拠り所
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4 秘密の会話

 何日かかけて”スピルト”一行はようやくトルコのパムッカレに到着しました。そこはいわば露天風呂です。

 石灰岩で真っ白な棚段のようになったところに、温泉が上から順に溢れて流れ落ちています。外にそのままある自然が温泉となっているだけなので、仕切りが何もないよねー、というわけで、ここは女性陣だけが使うことになりました。

 男性陣が一部文句を言いながらも引き下がっていなくなると、女性達は嬉々として衣服を脱ぎ始めました。

 コロン……。

 「あ」

 パエリエは衣服を脱ぐ際に一人手に外れてしまったイアリングを拾って、

 「これ、付け外しが面倒なのよね」

 と呟きました。

 「あら。でもそれ、とってもきれい。いつも思ってたの」

 横から、もうバスタオル一枚となったプレヌが声を掛けてきます。

 「そう? じゃ、これ、あんたにあげるわよ」

 パエリエは二つのイアリングを合わせ、プレヌに差し出します。

 「えーっ? わたし、そんなつもりじゃ」

 「いいのよ」

 「でも、こんな高そうなもの」

 「どうせもらい物だから」

 昔の職場にいたときにちょっとね、とパエリエは言いました。

 「うーん、だったらなおさら、悪いような気がするけど……」

 「愛がこもってるものじゃないからいいのよ。はい」

 「あっ」

 パエリエは無理矢理(?)プレヌにイアリングを押し付けると、

 「さ、入りましょ」

 温泉に身体を向けて言いました。


 プレヌはお湯に浸かると、

 「あーっ。極楽だわ~っ」

 お決まりの台詞を口にしました。ところが自慢のブロンドをおだんごに束ねてずっといい気分……とはいかず。

 衣服を脱ぐと多少気になるのは、自分の胸の寂しさ、というわけで。

 「パエリエは、いいわね」

 思わず、隣の彼女に向かってポツリと呟きました。

 「何が?」

 「……スタイルがよくって」

 「そうそうー」

 水の音をさせながら近づいてきて、話に加わったのはティファニーです。

 「プレヌさんってば、パエリエさんと比べると、本当貧しいですよねー」

 「貧しい……っ」

 ガーンと、漫画で言えば大きな石が頭の上に乗っている状態のプレヌ。

 「こらっ、ティファニー、ダメよ、本当のこと言ったら」

 「『本当のこと』……っ」

 セシルのフォローになっていないフォローに、余計傷つくプレヌ。

 「いやーね、ちょっと心配になっちゃって。これじゃ毎晩、どうしてるんですか」

 人間裸になると、赤裸々な会話もしたくなるものでしょうか。

 「ちょっとティファニー。レアちゃんやロマンヌちゃんもいるんだから」

 「あら、ふたりなら。向こうへ遊びに行っちゃったわよ」

 エレーヌの指摘も、ティファニーはあっさりと交わしました。

 全員の視線が、プレヌに集中します。

 しかし当の本人は、

 「何?毎晩って」

 ポカーンとした顔で、この調子です。

 「だーかーら、毎晩オーナーと、どう過ごしてるんですかって」

 「……え……?」

 数秒後。ようやく質問の意味を理解したプレヌが、顔から火を噴いて、温泉の中に倒れ込みました。

 「プレヌさん!」

 「大丈夫ですか?!」

 セシルやエレーヌが必死で介抱します。

 「なぁんだ。ノーコメントか」

 がっかりしているティファニーの横で、

 「でもあの反応じゃ、どうなってるかぐらい、想像に難くないわよ」

 呆れた様子のパエリエ。

 「パエリエさんとこは、その身体ですもん。当然うまくいってますよねー」

 パエリエは肩をすくめると、言いました。

 「はいはい、その通りよ」


 その頃、仕方なくトルコの街中に降りて行き、ハマムというサウナ風呂に入っている男衆はというと。

 「何が悲しくて男ばっかで汗かかなきゃなんねーんだよ、なぁ、リュファス」

 ロジェが隣にいたリュファスに溢します。

 「いえ、自分はこれも、精神を鍛えることの一環として、良いのではないかと思います」

 「……相変わらず堅物」

 ぼそっとつぶやくロジェの声は、目を閉じて、本気で精神を集中させているリュファスには、聞こえないようです。

 それにしても、さっきから何でしょう。この落ち着かないような感じは。それに妙に気恥ずかしいのです。……何かよからぬ噂でも立てられているのでしょうか。

 そんなことを考えているとき、のぼせたカロンが近付いてきて、

 「オーナー、そろそろ教えてくださいよ」

 「何。珍しく新メニューのレシピでも勉強する気になったか」

 「ちーがいますよ。プレヌさんの抱き心地……うぐっ」

 お腹をロジェにグーで殴られて、サウナの壁にぶちあたって、

 「暑い……」

 とのびているカロン。

 「だいたいお前が悪いんだぞ、カロン。男代表として、ジャンケンに負けるから」

 「その代表を決めるジャンケンで負けたオーナーはどうなんです」

 そんな軽口をたたき合っていたふたりも、時間が経過すると、もうその余裕すらなくなってきます。

 数分経過した頃、リュファスとルヴァが、ロジェを囲っていました。

 「オーナー、そのですね」

 言い出し辛そうに、切り出すルヴァ。

 「ん? なんだよ。も少しで意識途切れそうだかた、早く言え」

 「先ほどのカロンが振った話を、僕らにお聞かせ願えないかと」

 「……はぁ?!」

 ロジェは今度は手が出る前にびっくりしました。そりゃそうでしょう。

 「お前らふたりは”スピルト”の中でも真面目組で通ってたっつーのに」

 「いえ、僕達が知りたいのはプレヌさんのことではなくて」

 コホン、と咳払いをしてリュファスが言いました。

 「そのようなシチュエーションの場合、どうしたら女性を傷つけずに応対できるかっていうことです」

 「さぁ、どうなんですか、オーナー!」

 ふたりに迫られて、ロジェは一言、

 「余計暑苦し……」

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