困惑注意報
まず、部屋での違和感。なぜだ、なぜここに、なぜ犯人の、姉貴がいる? 俺たちの困惑をよそに犯人は次のように続けた。
「なぁ、急に足洗って…どうしたんすか? “恭華姉さん”」
コイツは何を言い出すんだ、恭華だと? まさか…いや無いでしょ、ちょっち待ってくれよ、そしてウチの恭華さんも、困惑を無視して、「嘘だ、私は恭華じゃない」と続ける。
「嘘じゃないっス、世良さんが教えてくれました」
「…じゃあ言ってあげる」そう言った恭華さんはもう、何時もの恭華さんではない雰囲気を纏う、別の女性だった。
そして、困惑しているやつが一人増えた、今までと違う雰囲気に犯人も怯え、気が引けているようだ、困惑仲間。
「今まで、一秒も少しも微塵も、仲間なんて思ったことは…」犯人は「もう止めてくれ」と言わんばかりに顔をしかめる。
しかし、容赦なく恭華さんは…の前に、俺と刑事さんは困惑、恭華さんはもうキレた、恭子さんは…恭子さんの方を向くと、彼女もまた、普段と違う雰囲気を纏っていた。
何が起こっているのかわからない、俺はこれから何を言い、どんな行動をすればいいのか全く思考が追いかけられない、と、その時、口を開いたのは恭子さん、と言うより鋭いピシャッという犯人の頬を打つ、恭華さんの平手打ちだった。
「やめなさい、恭華。」冷然と言い放つ恭子さん、チィッと舌打ちをして恭華さんは取り調べ室内から出ていった。
「…しょうがないです、恭一さん。本部に戻りお茶してから出直しましょう。」
その後、俺と恭子さんは、刑事さんに一礼し、本部へ踵を返した。