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フリー・ワールド  作者: あお
~院上 千夏編~
9/11

9 願い

今回は、文字数が、過去最高です。

「院上さん!」

朝、登校していると、誰かに後ろから呼び止められた。

知らない人だ。同じクラスじゃ、ない。

「な・・・何?」

「ちょっと、今、いいかな?」

時計を見てみると、ホームルームまでは、結構時間がある。

「あ・・・うん。いいよ」

「ありがとうっ!」

「あの、名前は、なんていうの?」

「あ、私は高原たかはら 美花みか

「そっか・・・。よろしくね、高原さん」

「うん。じゃあ、ちょっと来て」

高原さんは、私を人気ひとけのないところに、連れて行った。

「ここでいいわ」

高原さんは振り返ると、こう言った。

「ごめんね。急に呼び出したりして・・・。どうしても、お願いしたいことがあるの」

「私に?」

「うん。院上さんにしか、頼めないの」

「あ、そうなの・・・」

わざわざ、私に頼むようなお願いなんて、あるのかな?

「あのね・・・」

高原さんは、私の手をにぎった。

「お願いっ!離々亜を、助けて!!」

「え!?」

「私には、できないの。だから、お願い!」

・・・高原さん、必死だ。

でも、助けてって・・・?

「あの、高原さん。そもそも、どうして私に頼んだの?っていうか、助けるって・・・どういう意味?」

「えっ・・・?し、知らないの?離々亜のこと」

「うん。話したことがあるぐらいで、後は、過去のことしか、知らないし・・・」

「そうなんだ・・・。あのね、離々亜は今、入院しているの。ずっと、目を覚まさないから・・・」

「え・・・?」

入・・・院?離々亜ちゃんが?

「高原さん・・・それって、ずっと眠っているってこと?」

「うん・・・。まるで、夢でも見ているみたいに」

「夢?」

「そう・・・。だから、その状態から何とか助けてほしいの」

高原さんは、目を伏せた。

夢・・・。

それが本当ならば、離々亜ちゃんはフリーワールドに、ずっと居るということ・・・。

でも、どうしてそんなことしているんだろう・・・。

あ。ダメだ。

こんなこと聞いたから、離々亜ちゃんとケンカしちゃったんだ・・・。

「院上さん・・・。私・・・私がいけないの・・・」

「え?」

「あの時、守ってあげられたら離々亜は、こんなことにならなかったかもしれないのに・・・」

「・・・どういうこと?それは、いつの話なの?」

「えっと・・・6年の時」

「6年・・・」

そんな話は、離々亜ちゃんから聞いていない。

あれで、全てではなかったの?

・・・知りたい。

離々亜ちゃんのことを。

何があったのかを。

その・・・全てを、真実を・・・!!

「高原さん、明日時間ある?」

「え?あ、うん・・・どうしたの?」

「離々亜ちゃんのこと、色々教えてほしいの。明日は、土曜日だから」

「なるほどね」

「中庭に、十時に来てくれるかな?」

「うん、分かった。十時、集合ね」

「あ、後さ」

「ん?」

私は、一息ついてから、言った。

「呼び捨てで・・・千夏で、いいからね・・・!」

それだけ言うと、私は教室へ走りながら、向かった。

前を見て。振り返らずに。

だから高原さんが、どんな表情をしていたかは、分からない。

でも、きっと微笑ほほえんでいたと思う。

きっと・・・。


土曜日。

中庭で待っていると、高原さんが来た。

「ごめんね、院上さ・・・千夏!待った?」

「ううん。・・・ありがとね、名前のこと」

「いや、そんな・・・。私のことも、名前でいいよ」

あえて、『呼び捨てで』とは、言われなかった。

考えてくれていたのかも、しれない。

「でね、離々亜のことなんだけど・・・。長い話になるよ?」

「構わないよ」

「そう?じゃあ、話すね」

美花ちゃんは、話し始めた。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

私と、花月はなづき 零里や、糸川 紗羅、美水みすい 奈月は、6年の時一緒のクラスだった。

ある日、離々亜が、転校してきたの。

そのころの離々亜は、おとなしくて静かだった。

でも、私は構わず話しかけた。

「よろしくね」って。

そうしたらね。離々亜は、笑ったの。とってもかわいかったな。

「こちらこそ」って、言ってくれて、それからは毎日話すようになった。

離々亜と一緒だと楽しかった。ツライこととか悩みとか、全部吹き飛んじゃうほどに。

それでね、自然に思うようになったの。

私たちは『友達』だって。

でも、ある日ね・・・。

零里に『増﨑さんと、離れて』って言われたの。

『どうして?』って言うと、『何か、気に食わないのよね~。あいつに、友達がいるとかさ』って返されて・・・。

訳が分からなかった。

だから、そのまま一緒にいたら『これ以上、増﨑さんといると、あんたをいじめる』って、零里におどされた。

怖くて、私は離々亜と、離れた。

毎日、少しずつ・・・。ついには、口も、きかなくなった。

それから、何日かたったある日。

突然、離々亜が、話しかけてきた。

「放課後、教室に残って。相談したいことがある」

「あ、うん・・・。分かった」

そして、その日の放課後。

「ねえ、美花。もしも、願いが1つだけ叶えられるところがあったとしたら、美花は行く?」

「・・・どうしてそんなこと、聞くの?」

「何でも、いいじゃない。で、美花だったらどうするの?」

「どうしても、抜けだすことができない、深い絶望におちいってしまったら、行くかもねー」

冗談のつもりだった。

だけど、離々亜は・・・。

「そう。・・・ありがとう」

と、静かに言って、教室を出て行ってしまった。

まさか、この発言が大変なことになる、きっかけにだなんて、知らなかった・・・。


それっきり、離々亜とは話さなくなった。

やがて、中学に入ってしばらくしたら、離々亜は、学校を休み始めた。

『ずっと眠ったままで、目を覚まさない』というウワサを聞いて、病院に行ったら・・・。

本当だった。離々亜は、ベッドで眠ってていた。

もう、3日ぐらい、目を覚ましていないと、聞いた。

何でそんなことになったのかは、私の発言のせいだとすぐに分かった。

でもその前に、どうして私にあんなことを聞いたのかが、分からなかった。

で、後から、クラスメートに聞いたの。

離々亜は、あの3人グループに、ずっといじめられていたんだって。

私が、離れたりするから、こんな結果になってしまった。

もしも、あの時、離々亜とずっと一緒にいられたら。

離々亜は、今でも幸せそうに、笑っていられたと思う。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

「これで、終わり」

「美花ちゃん、ありがとう・・・」

「ううん。大丈夫」

美花ちゃん・・・自分を責めていた。

そこまで、悩みを、抱え込んでいたんだ。

そして、離々亜ちゃんは、ずっと眠ったまま。

「あれ?」

「どうしたの?千夏」

「ねえ・・・結局、願いを叶えることができる所って、何ていう所だったの?」

「えーと・・・。何とかワールドって言ってたような・・・」

「!・・・フリー・ワールド?」

「そうそう。そんな名前だった」

間違いない。

離々亜ちゃんは、フリー・ワールドにずっといるんだ。

だとしたら、1つ思い当たるものがある。

「美花ちゃん、今日はありがとう。用事を思い出したから、帰るね」

「うん、バイバイ」

私は、走って家に帰ると、リボンを取り出した。

フリー・ワールドに行くたびに変わっていった、このリボン。

これが、何か関わっているのかもしれない。

もし、そうだったら、私だって願いを叶えられるんだ。

でも、それと引き換えに、何かあるのかな?

たいていは、そうだけれど。

どっちにしろ、今日の夜聞いてみよう。

離々亜ちゃんのいる、フリー・ワールドに行って。

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