表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリー・ワールド  作者: あお
~院上 千夏編~
10/11

10 友達

「離々亜ちゃん」

「・・・何?」

「ここでは、願いを叶えることができるの?」

「・・・そうよ。リボンの真ん中にあるくぼみに、ここで拾った石をはめると・・・願いが叶う」

離々亜ちゃんは、地面に落ちている石を拾った。

「・・・でも、願いを叶えた時、フリー・ワールドへの道は閉ざされる。

それでも叶えたい願いなら、どうぞ。勝手に叶えて。千夏」

「そんな言い方・・・!」

「だって、しょせん人の願いなんて、他人事でしょ?

あたしが深く考えることじゃないもの」

「・・・っ!」

離々亜ちゃんは、あの日から、別人のようになった。

冷たい人に・・・なってしまった。

「ねえ、離々亜ちゃんは、願い事を、叶えたんだよね?」

「は?何言って・・・」

「だって、普通は覚めるはずの夢に、ずっとここにいられるってことは、願いを叶えたってことでしょう?」

「・・・だけど、願いを叶えたら、ここにいられなくなるんだよ?」

「だから、『ずっと、ここにいたい』って、願ったんだよね?でも、それと引き換えに、離々亜ちゃんは

現実への道を、閉ざされた・・・」

離々亜ちゃんは、目を伏せた。

「そうよ。それがあたしの願い。・・・で、それが何?あたしの願いなんて、無意味だって言いたいの?」

「そうじゃなくて、離々亜ちゃんが、どうしてその願いを叶えたんだろうって・・・」

「決まってるでしょ。現実に生きてる意味なんて、ないからよ。あたしは、毎日『消えろ』って言われていた。それなのに、現実にいるなんて、おかしいでしょ?」

離々亜ちゃんの目には、もう絶望しか、うつされていない。

もう・・・だめなのかな?

離々亜ちゃんには、私の声なんて、届かないのかな・・・?

私は、必要とされて、いないのかな?

「・・・離々亜ちゃんは、ただ、逃げているだけだよ。現実から・・・。生きることから」

「・・・・・・」

離々亜ちゃんは何も答えない。

それでも、私は続ける。

「毎日、『消えろ』って、言われ続けても、それで生きる意味がなくなるわけ、ないじゃない。

必ず・・・必ずどこかに、生きる意味が、あるの。

だからね、人は生きるんだよ。

どんなにつらくても、苦しくても、逃げたりしないんだよ!」

離々亜ちゃんは黙ったままだ。

「ねえ、離々亜ちゃん。どうして、分かってくれないの・・・?

私は、離々亜ちゃんに生きていてほしいのに」

「・・・千夏。帰って。今日のフリー・ワールドは、おしまいよ」

「え?・・・離々亜ちゃ・・・」

「さようなら」

その瞬間、あたりが暗くなった。


「・・・戻されちゃった」

時計の針は、まだ午前三時。

でも、ちゃんとリボンも、もらった石もある。

「願い・・・か」

何を願えば、いいんだろう。

でも、どんな願いを叶えたとしても、どうせ、フリー・ワールドには、行かれなくなる。

それを考えたら、どんな願いでもいい気がするけれど・・・。

やっぱり、ちゃんと考えた方がいいのかな?

「とりあえず、寝ようかな・・・」

私は再び目を閉じたけど、あまりよく眠れなかった。


朝、登校していると。

「あ・・・千夏?」

と、後ろから声をかけられた。

「美花ちゃん・・・」

「どうしたの?元気ないね」

「・・・いつもこんな感じだよ」

笑おうとしたけれど、顔が引きつっていて、笑えない。

「そう・・・。ね、千夏。悩んでいることがあったら、何でも言ってね!

できれば、力になりたいの」

「・・・友達って、何かな?」

「え?」

「・・・教えて」

私・・・なんてことを聞いているんだろう。

でも、美花ちゃんはにっこりと笑った。

「友達だと思えば友達だし、そう思わなければ、違うんじゃないかな?」

「そっか・・・。そうだね、ありがとう」

心が少し、軽くなったような気がする。

「他には、何かある?」

「・・・じゃあ、聞くね」

「うん」

「もしも願いが私に叶えられるとしたら、私は自分の好きなことを叶えるかもしれない。

でもね、私には、一緒にいたい人がいる。

だけど、願いを叶えてしまったら、もう二度と、会うことができないの。

・・・どうすればいいのかな?」

「『一緒にいたい』って、願えばいいんじゃないんの?」

「でも、その人は、私と一緒にいたくないみたいだし・・・」

美花ちゃんは、腕を組んだ。

「それは、千夏次第だよ。あ、もう行かなきゃ!・・・教室に、行こう?」

「うん」

私たちは、教室に向かった。


放課後。

下駄箱を通ったら、零里たちがいた。

私は、反射的に隠れてしまった。

「で、もう何か月にもなるんでしょ?いい加減大丈夫なの?『リリクズ』は」

零里の発言に、紗羅と奈月は、うなずく。

「あいつが目覚める方法とか、ないの?」

「そんなのあったら、誰かがとっくにやってるでしょ」

「あ、そっか」

・・・?何か、会話がいつもと違う。

こんなに、離々亜ちゃんのことを、心配するような人たちだっけ?

分からない。・・・けど、離々亜ちゃんを助けなければいけないことは、確か。

なるべく早く、願いを叶えよう。

でも、そのためには、夜までなんて、待ってられない。

よし、病院に行こう。

私は、離々亜ちゃんが入院している、七原病院へと、向かった。



ガラガラー。

「どうされました?」

「あ、あの。増崎さんの病室は・・・」

「はい。こちらですよ」

受付の人についていく。

「ここです」

「ありがとうございます」

「いいえ。では、ごゆっくり」

私は、ドアを開けた。

中にいるのは、離々亜ちゃんのお母さんだろう。

「あなたは・・・?」

「私は、院上 千夏です。離々亜ちゃんの・・・友達です」

「あ!あなたが、千夏ちゃん!」

「え?」

私を知っている?

「ある日から、離々亜が寝言であなたの名前を言うようになって・・・。

そう、あなたが・・・」

「そうだったんですか・・・」

少し、嬉しい。

「でも、今日はどうしたの?」

「・・・今日は、離々亜ちゃんを助けるために来ました」

「ど、どういうこと?」

私は、リボンと石を取り出した。

「私は、今、願いを叶えることができるんです。

どんなことを願おうか、悩みました。

でも、私は、決めました。

この願いを、離々亜ちゃんのために使おうって・・・!」

リボンの真ん中に、石をはめる。

『ピカーッ!』

あたりが明るくなって、女の人が現れた。

「ち、千夏ちゃん・・・。これは?」

「説明は、後でします」

女の人が、話しだした。

『私は、このリボンにつかさどる女神。

たった今、あなたがはめた石により、私は、姿をあらわすことができました。

しかし、そう長くは、この状態を保てません。

さあ、あなたの願いは、何ですか?』

「私・・・私の願いは・・・」

言うんだ。

私の願うことを・・・!

「離々亜ちゃんと、現実で一緒に生きること!」

『・・・その願いは、増﨑 離々亜という人物の願いを解除することになります。

だから、あなたが、フリー・ワールドに行って、離々亜を説得しなれば叶えられません。

説得しても聞き入れてもらえなければ、あなたは永遠にフリー・ワールドから、出られなくなります』

「えっ・・・!?」

そんな・・・。

今の状態で、説得しても、離々亜ちゃんはきっと聞いてくれないかもしれない。

そうしたら、今度は私が・・・?

『それでも、叶えたい願いですか?』

・・・そうだ。

私が、悩んで、悩んで、やっと決めた願いなのに。

叶えなくて、どうするの?

叶えるチャンスを、もらっているんだから、ちゃんと、叶えなきゃ!

「叶えたいです。その願いを!」

『そうですか。・・・それでは、行ってきなさい。

きっと、二人で帰って来れることを、祈っています』

「はい。絶対に、二人で帰ってきます!」

そう言ったら、なんだか急に意識が遠くなっていった。

私は、深い眠りについた。


「離々亜ちゃーん!」

「ち、千夏!?今は、夕方のはず・・・」

私は、息を荒げながら言った。

「ねえ、帰ろう。現実へ、帰ろう!」

「何しに来たのかと思えば、それ?あたしは、イヤだって言ってるでしょ?」

予想通りの、冷たい返事。

それでも、負けじと言い返す。

「私は、離々亜ちゃんと生きたいんだよ。ねえ、だから・・・」

「現実、現実って・・・。そんなに、千夏は現実が好きなのね。

あたしだったら、信じられない。何、その神経?理解できないのよね」

離々亜ちゃんが、鼻で笑う。

「だいたい、あたしは『消えろ』って言われ続けた、必要とされてない人間なんだよ?

誰もあたしのことを待ってるはずないじゃない。

それなのに、何で、わざわざ戻らなきゃいけないの?」

「戻らなきゃ、いけない理由・・・?」

私は、離々亜ちゃんを見つめた。

「決まっているよ、そんなの。私、最近美花ちゃんと出会ったの。

でね、この頃は、話すようになったんだ」

「美花・・・?」

「美花ちゃんね、離々亜ちゃんが眠り込んでしまった原因は、自分の発言のせいだって、言ってたよ。

全部、自分で抱え込んでた。そこまで、離々亜ちゃんを心配しているんだよ」

「美花が・・・?」

「うん」

離々亜ちゃんは、目を見開いている。

きっと、驚いているんだ。

「離々亜ちゃんのお母さんとも話をしてきたよ。

言わなかったけど、すごく、心配そうだった」

「お母さん・・・」

私は、微笑んだ。

「ほら、離々亜ちゃんを待っている人は、いるじゃない。

安心して、帰れるでしょう?」

私は、手を差し出した。

「帰ろう。みんなのところへ」

パチン!

離々亜ちゃんは、私の手を払った。

「・・・イヤよ」

「え・・・?」

「千夏なんて、永遠にここに閉じ込められちゃえばいいんだ」

「!」

離々亜ちゃん・・・知ってたんだ。

「どうやら、当たってたようね。

あたしがここから抜け出さないと、千夏、永遠に閉じ込められるんでしょ?」

「そう、だけど・・・」

「じゃあ、そうなればいい。そうなればいいのよっ!

どうせ、それをまぬがれるために、あたしを連れ戻そうとするんでしょう!?

だったら、あたしは戻らない!絶対に・・・!」

・・・伝わらない。

私の伝えたいことが、離々亜ちゃんに届かない。

こんなに悔しいことって、ないよ。

私、もうダメなのかな?

願いは、叶えられないのかな・・・?

「・・・っ!」

涙が、溢れてくる。

「違う。違うよ、離々亜ちゃん。そんなんじゃ、なくて・・・!」

「泣いたって、ダメよ。あたしは、帰らないんだからね!」

「私は、ただ・・・願いを叶えたくてここに来たんだよ。

『離々亜ちゃんと一緒に現実で生きたい』っていう願いを・・・」

「え?それ、どういうことか分かってるの?あたしの願いを壊すってことよ?」

「分かってるよ。それでも、私は叶えたい。この願いを。」

「どうして・・・こんなあたしと、なんて。どうして・・・?」

私は、涙をぬぐいながら答えた。

「私は、離々亜ちゃんに出会わなければ、ずっと誰も信じられなくなって、心を閉ざしたままだった。

でも、変われた。・・・こんなにも、生きることが、楽しくなった。

それは全部、離々亜ちゃんのおかげなんだよ」

「え・・・?」

「私だって、これから歩む道が、いつもまっすぐ続いてるわけじゃないのは知ってる。

でも、離々亜ちゃんが一緒なら、頑張れると思って、この願いにしたの」

私は、微笑んだ。

「同じ道を歩んでいけば、お互いに支えあっていける。・・・きっと、そうだから」

「千夏、どうしてあたしなの?あたしは、千夏の何でもないのに・・・」

「だって、離々亜ちゃんは友達だもの。大切な、私の初めての友達・・・」

「友・・・達・・・」

「うん。私がそう思っているだけなのかもしれないけれどね・・・」

ギュッ。

離々亜ちゃんが、私を抱きしめた。

「え?離々・・・」

「ごめん。ごめんね、千夏・・・!

ひどいこと言ったりして・・・。

友達って、言ってくれてありがとう・・・。

私も、そう思っているから・・・」

離々亜ちゃんが、泣いている。

「あたし、生きるよ。千夏が一緒なら、きっと大丈夫だから・・・!」

「私も、離々亜ちゃんと一緒なら、頑張れるよ」

私は、離々亜ちゃんから離れると、手を差しだした。

「さあ、一緒に帰ろう!現実へ!」

「うん!」

私たちが手をつないだとたん、あたりが真っ白になった。

次回が、最後のお話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ