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渦巻く

作者: chama
掲載日:2026/02/19

[キーマン]

十四歳から十五歳に変わった夏、俺は父から家に代々伝わる「鍵」を授かった。

うちの敷地の奥の方にある蔵の鍵だ。幼少期からずっと中身が気になっていたため、鍵を授かったその日に中を見てみた。正直金銀財宝を期待していたが、中には巻物や書物など面白いものは無かった。俺は少しがっかりしながら蔵を出た。


[沖つ白波]

誰そ彼時、閑散とした住宅街で四人の男が話している。

「今日の任務なんか変だね。普通の家から人をさらってくるなんて。」

顔が整った少年が他の男に話しかけた。

「文句言うなよ。ボスからの指令なんだから。」

真面目な雰囲気の男が冷たく言った。

「文句じゃないけどさー。」と返す。


_____彼らは盗賊集団「白波」。それぞれがそれぞれの利益のために盗みを働いている。ある時ボスと呼ばれる男により拾われてそれ以降ボスに従い、盗みの任務を行っている。白波の全貌はボス以外誰も知らない。


[石を布いて線を伏す]

この家に代々伝わる「鍵」を守る40人で構成される部隊「鍵守」

「今夜、『白波』が襲撃に来るそうです。」

彼からの言葉に私は驚きを隠せなかった。

「息子に『鍵』を受け継いだばかりなのに、忙しないな。」

すぐに私は蔵に入り、中を確認した。

今夜は私と息子、鍵守以外に家に人はいない。よって、スパイはいないだろう。

大丈夫なはず、大丈夫だと自分に言い聞かせた。


[瀬に立つ白波]

「さーてと! やりますか!」

軽い口調で少年はチームに呼びかける。

暗い暗い闇の中、波が立つ。

彼らが門をくぐったその刹那、鍵守が彼らに襲いかかる。

鍵守は波に飲まれていった。


朧月夜の帳が下りる時全て押し流す瀬に立つ白波


「鍵」以外の人間はすべて殺され、鍵は白波のアジトへ連れて行かれた。


[白波と四十人の鍵守]

何が起きた。

そこら中で悲鳴が響く前にかき消される。

まずい、鍵が奪われる。

俺は何をすることもできずに波に飲まれた。


[波源]

「⋯報告は以上です。」

強面の大男が美形の男に話している。

「ねぇ、起きてるよね、君。」

俺は背筋が凍った。

「いやー調子はどうだい?鍵くん。」

「最悪の気分だ。」

「まあまあ。あー紹介が遅れたね、僕達は白波。僕がそのボスだ。」

「話は聞いている。盗賊集団なんだってな。俺を攫っても蔵は開かないぞ。」

ボスを名乗る男が不敵に笑った。

「今から君に開けてもらうんだよ。」

俺は瞬時に懐の中の銃を取り出し、男の頭に突きつけた。

「ははっ。なんでこんなもの持ってるの君?」

「お前ら、殺したのは何人だ?」

奥にいた少年が答えた。

「ん?報告の通り、ボディガードの40人だよ。」

「今日家にいたのは鍵守40人と俺の父だ。」

ボスの男が驚いた顔を見せた。

「君も鍵守なのか…。」

「そのとおりだ。

なんで!なんでみんな殺した!」

「君はいい子だねー。」

「は?」

「君の家のことな~んにも知らないんだから。」

「なんのことだ。」

男はもう一度不敵な笑みを浮かべた。

「ふーん。それじゃあ、」


[知らざあ言って聞かせやしょう]

「君の家はね、盗賊の末裔なんだ。

鼠小僧。江戸時代に盗みを働いていた大泥棒だ。と言っても金持ちの家からしか盗まない義賊だった。

僕の家もね盗賊の末裔。っていうか今もこうして続けているけどね。

僕の先祖は日本左衛門。こっちも庶民のヒーロー的な義賊だよ。

そっちは単独で、こっちは強盗団として活動してたけど、二人は仲良かったらしいよ。

ある時、鼠小僧は盗みをやめようとしたんだ。

日本左衛門は少し悩みながらもそれを認めた。

そして、鼠小僧は子孫のために自分の盗みの証拠を日本左衛門とともに盗み出し、家の蔵に隠した。それだけではだめだと思った鼠小僧は自分の正体を知っている人間をみんな殺したんだ。

君の家の蔵の奥を漁ってみればきっと人骨や血のついた刀なんかが見つかるだろうね。

そして、鼠小僧はついに日本左衛門を殺したんだ。

友であっても信用できなかったんだろうね。

そして、君の家はそんな歴史を蔵に閉じ込めて代々守っている。

あと、鍵ってのも気味が悪い。君自体が鍵なんだろう?」

俺は小さく頷いた。

「生体認証。開発直後に君の家の鍵がそれに目をつけた。

ただ鍵を守るだけでは心もとないと。遺伝子によって人を「鍵」とした。

ただ、それでも不安が残った。もし、認証のデータを子に引き継ぐとき誰かが入れ替わっていたら?その一瞬の隙でさえ彼らを怯えさせる。

そこで彼らはこう考えたんだ。鍵の遺伝子の差異を無くせばよいのではないかと。

近親交配。彼らは遺伝子が近い者同士で子を作り続け、今でも「鍵」を継承し続けている。

どう?わかった?君の家の気色悪さが。」

俺は息を呑んだ。

「そんな話は聞かされていない。俺はただ鍵としての役割を全うしようとしただけだ。」

俺は少し考えてからボスの方を向いて言った。

「もうあの家に未練なんかない。蔵の中でも、家の歴史でもどうとでもするといい。」

「ありがとね。僕の家はずっとこの時を待っていたんだ。先祖たちの因縁も僕らの世代で終わりだ。」

「待て、一つ条件がある。家がなくなったら俺は困る。どうにかしろ。」

ボスの男は満足そうな顔で俺に言った。

「ああ。大丈夫さ。君は孤児院で預ける。里親もこっちが探すよ。」

俺は安堵して力が抜けた。

そこからの流れは早かった。

蔵の中身を白波がすべて回収し、鼠小僧、日本左衛門についても世に明かされた。

それにより、俺の家のこと、白波とその家のことについても世に公開された。


そして、俺は孤児院に送られたがすぐに里親が見つかった。

これからどんな生活が待っているのだろうか。

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