距離を知る
ろくに着替えることもせずにグラウンドへと出て話を聞く。
「今からここにある武器を好きに手に取って扱ってみてくれ。」
そこには、外にあるべきではないと誰もが思う長机に様々な武器が置かれていた。どれも木で作ってあるがなぜか少しわくわくした。
「自分が使いやすいと思ったもの、または自分の戦闘スタイルに合ったものを選ぶ方がいいぞ。」
直観と自分の中のロマンを信じて刀を手に取る。
「連は盾と剣?」
「中等部のころから使ってるからね。」
周りのクラスメイトの大半が選んだあと教師がパンパンと手を叩いたのでそっちに注目する。
「敵対組織がいる関係上異能力者と対することが多々ある。よってこのあと、二人で対異能力者を想定した実践演習を行ってもらう。偶数人数だから余りはできないな。」
今のオレの友達が連しかいないのでこそっと耳打ちをする。
「なぁ連、一緒にしてくんね。」
「いいけど、手加減はしないよ。」
「そしてこれを忘れるな。異能力者相手では後手に回るな、それと暗殺のような手は卑怯ではないことこの二つだ。」
漫画のような世界だと思っていたがそうでもなさそうだ。漫画だと暗殺なんてあまりないからな。
説明があってからの10分間は自分が選んだ武器を使って練習をしていた。
「今から実践演習を行う。フィールドは後ろの森、時間制限として5分。注意事項として、禁止事項が2つ。1つ目は殺し。2つ目はフィールド外へ出ること。」
「皆には今から渡すこれを首と左胸につけてもらう。これは力が与えられたのを検知するセンサーだ。当たった時に音が鳴る、この回数が少ないものの勝ちとなる。簡単だろ?」
代表者がじゃんけんをして勝った者から始めるというもので見事連は最初に 勝った。オレと連は別々のところから森へ入ってスタートの合図を待つ。
「それでは始めるぞ」
そのような声がスピーカー越しに聞こえいつでも走れるように構える。パンと陸上競技で使われるのピストルの音がしてすぐさま走り出す。
連の異能は分からないけど武器は盾と剣。俺の異能的にも近接戦に持ち込みたいしとりあえず見晴らしがいいところまで走るか。
少し走ると森の中にあるとは思えない平原がそこにはあった。
平原を駆け巡る音が近づいてくる。
「音でばれてるぞ」
「分かっているなら向かってくればいいじゃん。後手に回るな言われてただろう?」
盾と木刀の力が拮抗する。
リーチで言えばこっちに分があるのに全部防がれる。動きが読まれてる感じだな。
「次はこっちの番だよ」
連の剣がオレの首を執拗に狙ってきて異能を使って避けることしかできない。
犬ほどじゃないが早ぇ。隙は少ないがないわけじゃない。剣を振った時を狙って反撃するしかねぇ。
そのように思った次の瞬間、視界の大半が防がれる。抵抗しようともがくが意味もなく首のセンサーから音が鳴り、すぐさま距離をとって次の応戦準備をする。
「とりあえず一点だな。」
「すぐ追い越してやるよ。」
次取られたら不利すぎる、こっからはとことん攻めるしかない。
走る。リーチはわずかに勝っている。ギリギリを攻める。
「それ、刀だろ。使い方がフェンシングみたいだぞ。」
連の言葉に耳を貸さずに刀を振るう。隙を作るために大振りな一撃をそれらの受け手はすべて大地であった。3度目の大振り、きっと連は待っていたのだろうとてつもなく大きな隙を。
「隙がありすぎるよ。」
オレの隙を突く一撃を決めようと連が身を乗り出す。
「ありがとう」
連の攻撃がオレの体ではなく、空を突く。異能によって体が動いたおかげで、視界の中には自然と右手を突き出したままの連が居た。
ここしかない。そのように頭が感じた時には体は動いていた。ピーという音が森に響く。
「身体能力強化かな?」
「さぁ?答える義理はないぜ。」
「あと2分あるかどうかって頃かな。」
2分⁉そんなに経っていたのか。いや、落ち着けあと一点、あと一点だけで勝てる。とはいえその一点が難しすぎるんだよな。オレの手は出し尽くしたが、オレの異能について連が分かっているわけじゃないのが幸いだな。
距離が縮まっていない状況で連が何かを投げて、今まで以上の速さで向かってくる。
「だから意味ないんだよ。投擲しての意識逸らしは。」
連の剣ほぼ持ち手しかないよな、異能によるものか。ただ攻撃できる範囲が大きく狭まった今なら。
「僕は勝負事では勝ちたいんでね、勝たせてもらうよ。」
盾と刀でつばぜり合いをしていたはずのオレの体が前へと崩れる。ピーとまたも音が鳴る。
やっべぇ。何が起きたか分からない、でもまだ時間がある。
刀を地面に刺して起き上がろうとするも堅い感触があり刺さらずに地面に突っ伏す。地面を見るとそこにあった三つの木片が刀を邪魔していた。
「これで終わりだよ」
背後から声が聞こえる。ここで負けるならは微一さんのようになることなんてできない。オレは、オレは。
後ろを向き向かってきた連の右手をつかむ。
「これで決めらんないだろ」
盾があったはず左手にはさっきの木片と同じサイズのものがあった。
きっと盾はあの四つに分かれたんだろう。でも刀を使えばあの程度の木片どうということはない。
刀を振るおうとした時、二つの音が鳴った。初めに森に響くほどに大きなピストルの音、その少し後にピーというセンサーの音。
「終わったね、さすがにこれは点に入らないか。立てる?」
そう言った連は今まで通りの普通の剣と盾があった。
「あぁ大丈夫。ていうかあれから2分も経ったか?」
「嘘かどうかを見破らないと。」
「今の僕が言うと煽りになるかもしれないけどね、初めてとは思えなかった。力も普通の人より十分高い。」
優しい言葉がこれほどまでに嫌になったことはない。自分よりもすごい奴の言葉はもはや貶しとも捉えられる、そのように感じる自分が嫌になる。違う、変わらないとこんな心持ちじゃ誰も救えない。
「ありがとう」




