あなたみたいに
キーンコーンカーンコーンと聞きなれたチャイムを背に家までの帰路を辿っていく。ときどき思う。自分がこの世界にとって必要なのか、どこまで行ってもヒーローのように誰かのためにならないんじゃないかって。そんなことを考えて、気分が暗くなる。10分ほど経っていつも通り家が見える位置で少しの違和感を感じ足を止める。
「なんかこの辺煙たくね」
霧がかっているというよりは山火事でも起きたと思うほどの煙があたりを覆っていた。うす気味悪くなり一目散で逃げようとして石に躓き顔と地面の距離が近くなる。その時隣を素早く何かが通る。間一髪こけたおかげでそれを避けることができ、自分の近くを通ったそれが何なのかを見ようと目を凝らす。それは黒く細長いとげのようなもので、その先にあった街灯を大きく破損させていた。ありえない状況におもわずを尻餅をつく。大元を 辿ると体中に青色の膿のようなものがあり、皮膚が黒く変色した犬のよう生き物がいた。しかし犬、もとい生き物というにはあまりにもかけ離れていておもわず筋肉がこわばる。それがオレの方を向き、その目はまっすぐとオレをにらむ。心臓が早く動く、血が脳に酸素を送る。心臓から脳への一つの命令。死なないように考えろ。その中でオレの脳が導き出した答えは助からない、ここで死ぬ。きっとこいつに喰われる。
「大丈夫?」
突然、若い男の声が聞こえた。直後、目の前の獣は煙と共に近くの 街灯に吸い込まれるようにして消えていった。鼓動が早いせいだろう、いつの間にか過呼吸になっていたことに気づく。ヒューヒューと今にも消えそうな自分自身の呼吸が聞こえる。コツコツと足音が近づいてくる。見上げれば黄色のシャツにグレーのジャンバーを少し着崩している男がそこには立っていた。
「危ない感じだね。落ち着いて深呼吸できる?吸って、吐いて。」
その声の指示通りゆっくりと呼吸の乱れを整える。
「は、はい。大丈夫です。」
後ろから薄着の女性が向かってくる。女は薄着にベルトを斜めに掛け、上着を腰のところで結んでいた。
「一微、先に行かないでよ。あれ犬は?それと、その子は?」
「犬は逃げた。こいつは襲われてた感じだな」
女性曰く先に来た男は一微と言うらしい。二人はオレに聞かれないようにこそこそと何かを話しているようだった。オレは腰を上げて一微と呼ばれた男に向けて話す。
「あの、あなたたちは?」
「ひとまず説明はあと。近くに広くて遊具とか何もない公園ある?」
目をつぶって少し記憶を巡らせる。
「ここから少し歩いたところにあったはずです。」
そのように言うと、少し顔を上げて一言言った。
「行くよ。いいよね?」
女性は男に向かってそのように言った。
公園までの道のりを歩いてると男が口を開いた。
「自己紹介してなかったね。俺の名前は草野 一微こいつは馬酔 木雪。俺らは君が見たあの化け物を犬って呼んでる。犬は一度狙ったやつ以外は基本狙わない。そして鋭角、ようはとんがったところから煙を撒いて、出てくる。ただ奴がいつどこから出てくるかは俺らでも見当がつかない。」
一微さんはやさしくオレに説明してくれた。
「よし、これからはここで犬が出るまで待つとしよう。」
今までの出来事の疲れからか少しめまいがしてその場に座る。めまいが落ち着いて見たことがある違和感に気づく。あたりが霧がかっている。霧のせいか一微さんと木雪さんの居場所を把握できない。しかし自分のしないといけないことは分かる。ただ一瞬あの犬を避けること体中の全神経に集中する。空気が揺らいだ気がして、体を動かす。その瞬間、左腕鋭い痛みを感じた。叫ぶことすら痛いが、そんなことは構わないとオレに痛みを与えたそれは勢いよく引き抜かれた。傷口から内部へ痛みが広がる。そのたびに痛みは増幅した。オレから少し離れたところに犬はいる。しかし数分前と違って不思議と死ぬ気はしなかった。オレに向けて犬は舌を勢いよく突き出す。だがそれがオレに突き刺さることはなく犬の首とそれは地面に落ちていた。あたりの煙が自然に消えていく。近くにいたであろう二人が近づいてきた音がした。
「大丈夫か?ってこれは犬の舌が腕に刺さってたな。一微、学園に連れて行くぞ」
「そうだねごめん、本当に。」
「謝るならこいつだろ。」
オレの意識は沈む夕日と共に落ちていった。
「茂列さん。こいつはどう?」
一微さんの声で意識を取り戻す。
目の前には一微さんと木雪さんそれと、60代ほどのおじいさんが居た。
「慌てなさんな、ほらもう意識はあるだろう。しゃべれるかい?」
オレへの問いかけだろう。
「はい大丈ぶ...」
オレが言葉を言い終える前に痛みが襲う。左腕を抑え呼吸を整える。
「本当にごめん、俺が君の近くに居れば守ることができた。」
「いや、私のせいだよ。犬倒せたのはあそこじゃ私だけだ。」
二人は申し訳なさそうに、言った。
痛みにおびえながら話す。
「気にしないでください。二人は強かった。オレが居ないとあいつを倒せなかったかもしれないが、あそこではオレが一番足手まといだった。」
話すときにオレはうつむいていた。痛みとか、恐怖ではなく自分がみじめだったから。
「なぁ、少しいいかい。」
そのように爺さんが言ってつづけた。
「一微、この子には渇力がある。どこで拾った。」
「犬に襲われてた、犬を1回は避けてる。もしかして入れる気か?巻き込まれてこんなになったんだかわいそうだろ。」
「それは本人に聞くのが早いだろう、犬を相手にしてさっきの言葉が出てきたなら、きっとまともじゃないよ。しかし儂でも犬を避けるのは難しいのにすごいねぇ。てことは多分異能持ちだな。反射神経とかだな。」
二人の話を言葉としてではなく音として耳に入れることしかできなかった。
「二人とも落ち着きな、茂列さんはこの子の気持ちになってあげたら。一微はアイツが居なくなったからってそうかっかすんな。それと説明してやんなこの子に。多分なんもわかってないぞ。」
「ふぅ。落ち着いたごめん。説明しよっか。」
ピリピリとした空気が木雪さんの言葉で穏やかになった気がした。オレは一微さんから話を聞いた。
「まず、ここは百繚学園。一応犬みたいな、人に害をなす存在と共存を目指している。わかりやすく言えば漫画に出てくるような特別な機関だ。君は”異能”と呼ばれる特別な力を持っている可能性がある。ここに入ってその力を使わせるかという話をしていた。」
「強くなれますか?」
その言葉はオレの口から自然と漏れていた。
「一微さん、オレはあなたがかっこよく見える。見た目なんかじゃなくて、その精神が。あなたの口ぶりからきっと何度もあの犬を見ているんでしょう。オレは怖くてたまらない。それでもあなたはオレに大丈夫と言った。」
だから、こう思ったから、きっと口から出てきたんだろう。
「あなたたちのように強くなれますか?」
「残酷なこと言うとねそれは君次第、どれだけ頑張っても犬どころか何一つ倒せないかもしれない、それどころか辛い思いをして、押しつぶされる毎日かもしれない。もしかしたら数日で木雪みたいになるかもしれない。それは努力だけじゃなく才能や運その他もろもろが必要になる。」
その言葉を聞いてうれしくなった。こんな何でもないオレでもヒーローになれるかもしれないって。
「それでも可能性があるなら、それならオレは今の一ミリたりとも動けないこんな自分を変えれるならあなたについていきたい」
「決まりだね。ところで、君の名前を聞いてなかったね。名前は?」
「牛越 旁」
「ようこそ旁、百繚学園へ」
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
ウェイストを書いています、甲ドMです。長い時間構想を練り続けて、ようやく出すことができました。
これからは月一で投稿したいと思っております




