第2章:禁断の設計図と力の起源
ケンゴは山の麓に立ち、彼の意志と足元の地面との繋がりを感じていた。この繋がりは魔術的な意味での魔法ではなく、ファンタジーに応用された純粋な量子工学だった。彼のスキル**[未来の断片と星屑建築]**は、周囲の原材料の原子結合を操作し、彼の持つ設計図に従ってそれらを再構築することを可能にした。
観測者(彼を過去に引き戻した存在)によって強制的に植え付けられた最初の設計図が、彼の頭の中で響き渡る。空中要塞バベル – 外壁。
ケンゴは、自分が避けようとしている未来の歴史を思い出した。バベルは、大崩壊後の文明の神話的基盤だ。伝説によれば、この要塞は星喰らいから逃れるために空に飛び上がり、その廃墟が後の都市国家の基盤を形成したという。
歴史は、バベルは太陽の神官たちが神聖な魔法で建てたと言っていた。くそっ、あれは俺、あるいは未来の俺の一部、あるいは忘れられた未来技術の設計図だったのか!
その思考は彼を苛立たせると同時に、圧倒的な責任感で満たした。もし彼が今これを造らなければ、この神話は五百年後にはただの無益な廃墟に終わるだろう。
「最初の人生の失敗への恐怖は、優れた触媒となる」と彼は自らに言い聞かせた。その幼い声には、不似合いなほどの冷徹さが宿っていた。
彼は能力を発動した。破片の頂の周囲の空気が濃密になった。
[未来の断片を起動中。目標:強化玄武岩の防壁、パターンN101-ガンマ。]
ケンゴは小さな両手を山に向けて広げた。彼は「抵抗」と「安定性」の概念に全意志を集中させた。魔法ではない。それは、未来の物理学を大規模に応用することだった。
地面が震え始めた。激しいのではなく、深く、一定の脈動だった。周囲の黒い粘板岩と玄武岩がひび割れ、数センチずつ浮き上がり始めた。それらは目に見えない力に引き寄せられているのではなく、まるで一つ一つの岩の内部構造が再調整されているかのようだった。
一分も経たないうちに、100トンの岩石(彼のスキルによって識別され、分類されたもの)が、正確な直線上、30メートルにわたって集結した。
次に、精製が始まった。ケンゴは、近くの河床から砂とシリカが吸い上げられ、岩石の分子の亀裂に強制的に埋め込まれていくのを感じた。制御された摩擦による熱は強烈で、空気はオゾンと焼けた鉱物の匂いがした。
耳をつんざくような音とともに、岩石の塊は固まった。
そこには、無作為に積み上がった岩ではなく、高さ八メートル、厚さ四メートルの**モノリス(一枚岩)**の壁がそびえ立っていた。その表面は滑らかな黒い玄武岩で、金属的な輝きを放つ鉱脈がカーボン繊維のように織り込まれており、異質で難攻不落な外観を呈していた。
それは、彼の最初の生の科学によれば、巡航ミサイルの衝撃に耐えうる壁だった。
ケンゴはへたり込み、息を切らした。この力は魔力(彼は持っていなかった)ではなく、生命力と精神集中を消耗させた。
「八メートルの壁が…七歳の子供の力で」冷や汗を感じながら彼は思った。「この調子なら、人々にパニックが広がる前に要塞全体を建設できるかもしれない」
その後の数週間、ケンゴは新しい壁のふもとで暮らした。彼は壁に隣接して小さな避難所、つまり地元の石灰岩と川の水を使った「鉄筋コンクリート製の安全な家」を建設した。これは、訓練されていない目には見えないように設計されていた。
彼の生活は、強迫的なサイクルになった。
探索: 金属、シリカ、または石灰が豊富な新しい原材料の鉱床を探し、「査定」する。
建設: スキルを使って、バベルの設計図のより複雑な断片(見張り塔、防弾扉、未来的な排水システム)を具現化する。
休息と回復: 精神力を回復するために十分な睡眠と食事をとる。
時折、観測者は彼が知らない特定の道具のビジョンを送りつけ、彼の未来の工学知識のギャップを埋めた。
ある日、そのビジョンは**「エーテル検知機構」**だった。
ケンゴはスキルを使い、岩石から鉄と銅を抽出し、それらを純粋な金属の複雑な装置に変形させた。その装置は小さな水晶を動力源とする回転する青銅の球体で、低いブーンという音を立てていた。
彼がそれを壁に取り付けると、球体は回転し、緑色の光を放った。
「ビンゴだ」ケンゴは数ヶ月ぶりに微笑んだ。「歴史書によると、星喰らいは独特な『影の放射』を発する。この装置は、その残留エネルギーを検出する」
彼がテストを終えるか終えないかのうちに、青銅の球体が激しく振動し始めた。緑色の光は鮮やかな赤に変わった。
侵入検知!影の痕跡、二体の存在。速度:高。
七歳のケンゴは心臓が凍りつくのを感じた。侵攻は未来の脅威ではない。今、ここにあるのだ。
二体の星喰らいは大きくはなかった。黒く光る皮膚を持ち、キチン質の鎧と黒曜石の刃のような爪に覆われたヒューマノイドだ。彼らは斥候、大惨事の先鋒だった。
彼らは人間のものとは思えない速度で破片の頂の麓に到達し、焼けた土の痕跡を残した。彼らの目的はケンゴではなく、新しく建てられた壁を取り巻く時間エネルギーのオーラだった。
ケンゴは急いで避難所に隠れたが、身を隠すだけではだめだと知っていた。もしこれらの斥候が、難攻不落の要塞の情報を持ち帰れば、星喰らいのアルファであるザルコスが自らやってくる。
武器が必要だ。物理的な力に依存しない武器が。
彼は、最初の生で学んだ未来の疫病対策の計画を思い出した。
ケンゴは精神エネルギーの最後の残滓を使い、壁の近くを流れる小さな小川にスキルを向けた。
[未来の断片を具現化中。目標:超速硬化セメント、グレード『ゼロキャプチャ』。]
小川の水は、彼がすでに準備していた粉末状の石灰岩と瞬時に混合された。その混合物は煮えたぎり、濃厚なペースト状に変貌した。
星喰らいは子供を無視し、黒い玄武岩の耐久性を試すために爪を立てながら壁に近づいた。
そのうちの一体が壁に触れたちょうどその時、ケンゴは力を解放した。
「ゼロキャプチャ」の波が小川から発射された。それは攻撃ではなく、建設資材だった。信じられないほど粘着性のあるポリマー補強を施した瞬時硬化コンクリートだ。
二体の星喰らいは、三秒で50,000 psiの強度に硬化する、灰色で密度の高いセメントに覆われた。
彼らは動けなくなり、コンクリートの彫像と化した。解放しようともがいても、キチン質が砕けるだけで、セメントは彼らの肉体よりも強かった。
ケンゴは疲労で震えながら避難所から出た。心臓が激しく鼓動している。
恐怖は冷たい高揚感に変わった。彼は世界の殲滅の先鋒を…セメントで打ち負かしたのだ。
「うまくいった」と、ケンゴは二体の灰色の彫像を見つめながら囁いた。「効く。建設技術は常に生物学に勝る」
観測者の『声』が戻ってきた。今回は静かな承認のトーンだった。
《結構。だが、セメントは雷鳴を止められぬ。今、北へ行け。そこで、お前を破壊しようとする者、あるいは抵抗の二番目の礎となる者を見つけるだろう。》
北。彼には北に何があるか分かっていた。太陽神殿の遺跡、そして最後の神官の故郷。ライラの故郷だ。
ケンゴは空を見て、次に二体のセメントの彫像を見た。彼には壁があり、道具があり、そして今、目的ができた。彼は女戦士を迎えに行かなければならない。




