第1章:失敗と二度目の転生
銅と胆汁の錆びた臭いが、小さな洞窟を満たしていた。
前世で平凡な日本の建築家だった俺、八神健二――あるいは、このファンタジー世界で定着したEランク冒険者という肩書きの男は、冷たい湿った石に体温が吸い取られていくのを感じていた。右脇腹の大きな肉塊は、低級なグリムゴアの鋭い爪によってえぐり取られていた。皮肉にも、そいつは四人組のパーティーにとっては大した脅威ではないはずの魔物だった。しかし、他の三人は逃げ出し、役立たずのスキルしか持たないケンジは置き去りにされた。
「結局、こうなるのか…」と、喉で血が泡立つ音を聞きながら、ケンジは呻いた。
前世のケンジは、時間を超越する高層ビルや橋の建設を夢見る、将来有望な建築家だった。だが、お決まりの**『トラック転生』**によって、剣と魔法、そして勇者の世界へと送り込まれた。
転生神から**『ユニークスキル』**を授かった時、ケンジは一瞬の興奮を覚えた。空間魔法の完全な制御?神剣の使い手?
否。彼のスキルは建材査定だった。
コンクリートの圧縮強度、融点、砂や木の品質を判断する能力。ドラゴンや悪魔、そして今証明されたように、愚かなグリムゴア相手にも全く役に立たない能力だ。
「三十年…この世界で惨めに生きた。いつか自分のスキルが役立つほど文明が発達するのを願って、死を避け続けてきたというのに」と彼は咳き込んだ。視界がぼやける。「なんて冗談だ。まともな家すら建てられなかった。俺はただの…役立たずのモブだった」
最後の息が漏れた。闇が彼の精神を包み込み、彼は虚無の絶対的な冷たい平和を感じた。今度こそ、本当の終わりだ。失敗した建築家は死んだ。
絶望は、冷たい決意へと変わった。もし死ぬなら、せめて低級な魔物に食い殺されるのだけはごめんだ。
ケンゴが五歳になる頃、彼は大人びた目を持つ、無口で賢すぎる子供になっていた。猟師や農民である村人たちは、冬の準備をし、そして、空から迫る影の到来に気づかずにいた。
ある日、森の空き地で川石を触っていると、『声』が戻ってきた。
《ケンゴよ。お前のスキルはもう査定ではない。それは修正のための道具だ。それを使え。さもなくば、お前が瞬きする前に絶滅のサイクルは完了する。》
子供のケンゴは目を閉じ、**「ユニークスキル」の概念に集中した。[建材査定]**だったはずの精神的なアイコンが、恐ろしい輝きを放ち、変化した。
光が消えた時、その名前は変わっていた。
[スキル:未来の断片と星屑建築]
知識の奔流が彼の頭に流れ込んだ。それは魔法の知識ではなく、技術的かつ時間的な知識だった。
この能力は、無から何かを創造するのではなく、彼が知っている(あるいは観測者から伝達された)いかなる構造物や道具でも、現地の原材料を利用して、その分子構成と時間的安定性を操作し、**「具現化」**することを可能にした。結果:現代の砂、泥、石を使って、未来の素材と同等の耐久性を持つ要塞や武器を造り出す。
心臓が激しく脈打つのを感じながら、ケンゴは手に持った川石を見た。彼は基本的なニーズを考えた。
使い込んでも刃こぼれしない切断用ツールが必要だ。
彼はスキルを発動した。力の透明な流れが石に注ぎ込まれた。石は壊れたり崩壊したりする代わりに、振動した。数秒後、それは暗い灰色で信じられないほど高密度な素材に変貌し、光を不自然な形で捉える鋭い刃を持っていた。
それは、彼の最初の生で精製に何世紀もかかった素材、工業用グレードの炭化タングステンだった。
「信じられない」と、ケンゴは呟いた。彼の幼い声には、宇宙の根本原理を発見した天才の驚嘆が響いていた。「俺は魔法使いじゃない。俺は時間の建築家だ」
その瞬間、別のビジョンが観測者によって彼の精神に押し込まれた。それは道具ではなく、巨大な構造物だった。
数百メートルもある浮かぶ要塞。彼の最初の生における伝説的な廃墟。文明崩壊の神話。
《プランレベル1:空中要塞バベル – 外壁。必要条件:堆積岩100トンとシリカが豊富な砂50トン。》
その設計図はあまりにも詳細で、あまりにも複雑で、子供のケンゴの脳は痛んだ。しかし、そのデザインは彼の魂に焼き付けられていた。
彼の使命は、死を避けることから、文明の再建へと変わった。
ケンゴは理解した。彼の最初の生の文明が失敗したのは、彼らが受動的だったからだ。彼らは災害の後に再建しようとした。
彼には能動的になる機会があった。
彼の村は破滅的だった。小さく、自然の要塞もなく、歴史書で覚えている最初の星喰らいの侵略ルート上に正確に位置していた。
時間は極めて重要だ。彼は動かなければならない、彼は建設を始めなければならない。
七歳で、ケンゴは村から逃げ出した。それは英雄的な脱出ではなかった。彼はただ夜に忍び出て、炭化タングステンの道具と、彼が覚えていた最も古く、鉱物資源が豊富な遺跡の精神的な地図だけを持っていた。彼は家族が森で彼を探さないように、首都で運試しをすると書いた優しさの嘘を残した。
彼は何週間も歩き、罠(そして彼の道具の鋭い刃)で捕らえたベリーやウサギを食べて生き延び、ついに目的地に到着した。
『破片の頂の遺跡』。
高品質な鉄と玄武岩が豊富な、黒い粘板岩と玄武岩の山脈。未来では枯渇した鉱山だったが、今では比類のない一次素材の宝庫だった。
ケンゴは山の麓に立ち尽くした。彼は七歳の子供であり、自然の広大さと空に迫る脅威の前では取るに足らない存在だった。
彼は精神的な設計図を引き出した。大要塞バベルの最初のステップ:基礎プライマリー。
彼は何トンもの岩が必要だったが、それを動かすことはできなかった。しかし、彼は動かす必要はなかった。彼は変形させる必要があった。
彼は岩山を見て、次に自分の小さな手を見て、そして最後に裂けた空を見た。
「よかろう」と彼は呟いた。最初の生からの皮肉と諦めが、彼の新たな使命の熱意と混ざり合う。「俺を星屑の建築家にさせるというのなら、霊廟など設計しない。俺は時代を設計する」
彼は目を閉じた。力が彼の胸から輝き、大地と、周囲の岩と砂の一粒一粒と繋がった。
建築家の壮大な仕事は、予定より五世紀早く、今始まろうとしていた。




