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流れ者の奇怪物語  作者: 蛸饂飩壱(タコうどん1)
『半人半妖の流れ者』
2/4

流れ着いた矢先

「わ、私の護衛になったらどうですか!」

「...は?」

「あ、えっとその、今ちょうど護衛が居なくなったところですし、お金を持っていないのでしょう?なら私の下で働いたらと思ったわ」

「え〜、いや別にオレは良いんだけど、良いのか?オレ十中八九裏切るぞ?」

「いいえ!あなたは裏切らないわ」

「どうしてオレをそんな信用すんだ?」

「私には匂いで判る。あなたからは忠誠の匂いがするわ」

「...まあ多分裏切るのも面倒だからな。それに姫さんについて行くだけで金もらえるんだ。こんな仕事逃がす訳ねぇ」

「ありがとう。良い仕事をしたら、それ相応に給与を上げるわ」

「まじか?それなら敵国だって滅ぼすぞ?」

「ただし!人を殺さない事が条件よ」

「は〜あ。まあ良いよ。その仕事で」

「今、ルツネ様はとても危ない状況です。護衛が増えたのは嬉しい事です」

「...あんた手のひら返しがはえぇな」

「あなたも護衛になった以上、仕方ありません。ですが!私の事は兵長と呼んでください!決して同じ立場ではありませんので」

「兵長ねぇ。山火鐘には無かったな」

 こうして、姫に新しい護衛が付きました。


「で、今姫さんと山火鐘はどう言う関係なんだ?」

「私は、今まで山火鐘国に親善を行っていたわ。だけれど山火鐘の将軍は、中々良い反応を示してくれなかったわ。まあ未だに真炭国(マタンノクニ)と小競り合いを続けているし、仕方のない事だわ。でもそんな時に、あなたがやって来て晴賢が裏切った。だから今これからどうしようかと考えているところだわ」

「なーる程な。そんなん姫さんを殺そうとしたんだ、戦争したって誰も文句は言わなねぇ」

「私は戦争はなるべく避けたいわ」

「ルツネ様、そろそろ柳谷(ヤナギヤ)地方の将軍会議に向かいましょう。リバディは残っていて下さい。ルツネ様には私が付いているので」

「はーい。行ってらっしゃい」

「行ってくるわ」


「さーてと、何すりゃあ良いかな〜。城でも探索するか」

 此処は星場(セイジョウ)の城。護水国(ゴスイノクニ)の将軍と姫が住む城です。この城はいつも賑わい、商人達も忙しく走り回っています。なぜなら「この城は皆も使うべき場所だわ」と姫が言ったため、この城は行商人達が集まって商売をしているのです。

「へ〜。城ん中にわざわざ案内版あるのか」

「ああそうさ」

 兵士が暇そうなリバディを見つけて話しかけて来た。

「まあ行商人のおかげで城も賑わうしお金も増えるけど、問題も絶えないんだよね〜。ほうら」

 何やら出店の前で揉めている様子。

「お前はこんなもんを一両で売ってんのか!?高過ぎんだろ詐欺師!!」

「いえいえ、今は相場も高くなっておりますゆえ、これでもお安い方ですよ」

「こんな物成金でも買わねえぞ!!」

「こんあ具合だ。まあいつもの事だ、僕が宥めてくるよ」

「い〜やオレが行く。タダでいたらちと気が済まねぇ」

「ここから出て行け!ここは俺の縄張りだ!お前は殴られてもお前が悪いんだよ詐欺師!!」

「おいおい、出て行くのはそっちじゃねぇんか?ここは行商人も使って良いって姫が言ってんだ。なら出て行かせる事はできねぇ。それに、姫さん自身人を罵る奴は嫌いだ。姫さんの言う事も守れない様なお前の方が出て行け」

「お前は自分を何様だと思ってんだこの野郎!!俺はこの辺りで一番偉いんだ!!姫だか不細工女だかが言ったからなんだ!詐欺師の味方なら殴り飛ばすぞ!!」

 兵長にはこう言うの向かないだろうね〜。

「可哀想だねー。金が無いから不満で誰かを怒鳴りたくなるんだね〜。オレは不満なんて無いけど」

「...どうやらお前は立場どころか自分の力すら分かってねぇ様だな〜!!」

「そろそろ良いか。飽きたし」

 勝負は一瞬でついた。

「流し流され、面倒事を避けて生きてくのが、オレの流れ方だ」


「君強いね〜。何でそんなに強いんだ?」

「伊達に耳は黒くねぇよ」

「はぁ。そんな強いならいつか兵長にでもなりそうだな」

「まあな、今は兵長の本、姫について行ってる」

「あ!もしかして君が晴賢の後釜か!」

「そうだよ〜。まあ兵長になりたいとかそう言うのは無いな。姫ついて行くだけで金貰えるからずっと護衛が良いな」

「フン、そう言う仕事羨ましいよ。あの兵長もいるんだ。護衛なんてほぼ仕事ないだろ」

「まあ仕事ある時は命懸けだけどな」

「あ〜、やっぱ僕はやりたくないかもな」

「もしもの時は姫の事任せるからな」

「え!?君に無理なら僕にはもっと無理だよ!」

「大丈夫、お前はオレより強いさ。だから待っとけよ」

「冗談でもやめてくれ!」

「アッハッハ!!姫への忠義はどうした?」

「僕の忠義はアオミさんだけだ!!」

「アッハッハ!!」



 柳谷地方の将軍達が、この下雷(シタライ)の城に一堂に会する。柳谷地方将軍会議が始まった。

「皆様お久しゅうございます」

「最後に集まったのは4年前であったか」

「4年で我らの絆を、忘れてはいないでしょうね」

「あゝ勿論だ。私はこの同盟を未来永劫続けていきたいと思っておるぞ」

「私もその思いです」

 ここに集まったのは十人。その中で主要な人物は五人だ。

 護水国の姫と将軍、木英国(キエイノクニ)の将軍、真炭国の将軍、そして日志我国(ヒシガノクニ)の姫。後はそれぞれのお付きの者達だ。

「近況報告は有るかな?」

「有ります」

「ルツネ殿、今回は何が有りまして?」

「実は、私の護衛である晴賢が山火鐘の手先だったのです」

 一瞬、その場に動揺が走ったが、直ぐに冷静を持ち直した。

「その手先に狙われたのか?」

「えぇ。私を縛り上げ、利用価値が有ると言い山火鐘に連れて行かれ掛けました。そこを半人半妖の流れ者に助けられたわ」

 下雷城に大きく緊張が走った。

「これは我々への宣戦布告であろう!我が四カ国で総力を上げ、直ちに返り討ちにしてやりましょうぞ!」

「私もコンエイ殿に賛成だわ。我が日志我大傭兵軍を出そう!」

「待ってください!私は、戦争は反対です!」

「ルツネ殿ならそう言うと思うてた。だが我が国は山火鐘に恨みがある。例え護水国が戦わ無くとも、我等は戦うぞ」

「ですが!貴方方も危ないですし、何よりも兵士達が!」

「落ち着け、ルツネ。実は今回もう一つ重要な報告があるのだ」

「コンゲ殿、どれ程に重要な事ですかな?」

「先日、とある情報が入った。どうやら山火鐘には、起のカゲグマが付いているらしい」

「…コ、コンゲ殿、それは真か?本当に真か!?」

「誠信じがたい。信じがたい!!」

 彼らが何故これ程信じられないか。それは起のカゲグマに有る。起のカゲグマ、それは全国に4体しか居ない、『起承転結の妖』の起の妖怪である。その力は、正に地を裂き天をも裂く程、国の一つや二つなど簡単に滅ぼしてしまうのだ。

「いくら我等が戦おうと、山火鐘にカゲグマが居る限り我等に勝利は無い」

「.....」

「やはり信じがたい。起承転結の妖を味方に付けるなど、催眠術師でも無理が有る」

「我もそう思う。山火鐘はどの様にしてカゲグマを味方に付けたのか、そこさえ分かれば良いものだが...」



 一方その頃、山火鐘国、土蔵(ソゾウ)の城。

「山火鐘将軍、トウン様のおな〜り〜!!」

 山火鐘の重臣達に囲まれて、将軍が現れた。そして重臣の中にはカゲグマの姿もあった。

「早速だが今回の議題だ。どうやら柳谷地方の国共が我が国に戦争を仕掛けようとしておるらしい」

 重臣達が少し騒ついたが、直ぐ持ち直した。

「まあ元々我等が戦争を仕掛けようとしていたのだ。後はどう戦うか」

「私めにお任せを!!先ずはこちらをご覧下さい!」


「―以上が今回の作戦でございます!何か、不明点は有りますでしょうか?」

「フム、この作戦、悪くは無いが良くも無い。この戦は大東圏に我等の力を知らしめる為の戦だ。であるからして、カゲグマを使わぬとは如何なる事か?」

 カゲグマの気配が一瞬揺らいだが、気のせいだろう。

「理由はございます!カゲグマの存在は強大なる物です、大東圏に少しだけでも存在を仄めかせば、抑止力として働いてくれるでしょう!」

「成程、ではこの作戦で行こうか。重臣共!戦争の準備をせよ!命令を下したら直ぐ行動できる様に!解散!」



「へ〜。カゲグマか。あいつって人導いてたりしてた熊だよな?な〜んで山火鐘に居んだ?...こんど暇な時行ってみるか。オレなら話聞いてくれるっしょ」

「リバディ、君何聞こえてるんだ?」

「ん、まあ今度遊ぶのが楽しみだって話だ。オレも行きたいな」

「ふ〜ん。僕も耳黒くしようかな」

「ハ、耳が良くても悪い事は一応有るぜ」

「どんな事?」

「耳が良くなったら分かるさ」



「パ〜パラッパ〜♪お、よくぞお戻りになーられました」

「リバディ、早速だが其方に仕事がある」

「何ですか?カゲグマの事ですか?」

「!...何故知っている!」

「伊達に耳は黒くねぇよ」

「...ならばもう分かるであろう」

「はいはい、カゲグマの事探って来ますね〜」

「よろしく頼むわ」


「いよ〜し、カゲグマ連れて帰るぞ〜。山火鐘の作戦はーまいっか」

「ぬ、リバディ殿、何処へ行くのかね」

「あ、次五郎兵衛さん。まあ山火鐘にちょっと里帰りするわ」

「.…..そうであるか。気を付けるのだぞ、相手は起だ」

「そんな事百も承知ですよ」



「い〜や〜。久しぶりに帰って来た!2日ぶりだったか?いや〜にしてもあの忍び何が目的だ?オレの事付けても何も良い事無いぜ?」

 そうこうして、山火鐘に流れ者が帰って来てしまいました。


 第二話、完

ウイチの異世界非日常と同じくプロットとかは一切ありません。突発的に思いついたのでやっぱり先を考えながら書いています。

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