流れ者
ある夜、東の森に何者かが逃げて来る。
「た、助けてくれー!!!」
「ムダムダァ。オレから逃げれると思ったあんたが悪い。まあ安心しろ。命は奪わん。ちょっと眠らせてちょっと金奪うだけだから」
「い、いやだ!!」
「あんたは運が良いよオレが相手で。オレの友達だったらもうあんた死んでっから」
「あぁぁぁ!!!」
「あ、逃げられた。あいつ足はえぇな」
次の朝。星場の城。
「今日もいい朝だわね」
「そうですね。ルツネ様」
「あの鳥も優雅に空を飛んでいるわね」
「あ、ルツネ様。あそこにハヤブサが」
「あ、......ハヤブサは何故鳥を食べるのかしら。自分も同じ鳥と言う生き物なのに」
「ルツネ様。人間でも人肉を食べる部族はいるそうです。それに、人と鳥では価値観が違いますので、人間の価値観で鳥を考えても、理解するのは難しいですね」
「...でも何でここにハヤブサがいるのかしら。東の海岸までかなりあるわよ」
「さあ...誰かが放ったのでしょうか」
「それなら誰が放ったって言うのよ」
「...わかりません」
「ルツネ様!大変です!!」
「あら?何があったの?」
「つい先程、東の森で山火鐘国の兵が倒れているのを発見しました!」
「なんですと!?山火鐘の兵がいたのか!一体何の目的だ!その者を連れて参れ!」
「は!」
「山火鐘の兵...おかしいわね。よっぽどの事が無い限りは入ってこないはずだわ」
「目的が何であれ、一度問い詰める必要があります!」
「そうだわね。目的が戦じゃ無ければ良いのだけれど」
「この者が例の兵士です!」
「分かった。下がってよろしい」
「は!」
「キサマがこの国に入って来た無礼者か!一体何の用だ!」
「お、お俺は逃げて来たんだ!頼む!助けてくれ!」
「何から逃げて来たと言うんだ!」
「よ、妖怪からだ!」
「妖怪?そんな嘘で言い逃れできると思うな!」
「う、嘘じゃねぇ!本当なんだ!紅いブカブカの服、深緑の不揃いな髪、黄緑色の目、異常な身体能力、どっからどう見てもアイツは妖怪だ!」
「その様な出鱈目で私を騙せると思っていたら大間違いだ!」
「落ち着きない、アオミ。妖怪かどうかは分からないけど、誰かに追いかけられてたのは本当だと思うわ」
「ルツネ様、何故その様に思うのですか?」
「私、この人から異常な残り香を感じるの。妖怪の匂いにかなり近い」
「ルツネ様、それは本当ですか?本当に妖怪の匂いなのですか?」
「分からないわ。人間かも知れないし妖怪かも知れない。でも、襲われた人からでもここまで異常な残り香が感じれるのだから、本人はとてつもなくヤバい存在だと思う」
「そ、そんなヤバい人間、ルツネ様どころか城も危ういのでは!?」
「そのぐらいの力があるわね。貴方はよく生き延びれたわ」
「最早生きた心地もしません」
「一体その人に何をされたの?」
「アイツには昨日の夜に出会った。俺はいつも通り門番をしていた。すると誰かがやって来たんだ。だから俺はこう言った。(この門は夜十時以降は通れない)って、そしたらアイツはこう言った。(門じゃなくてあんたに用があるんだよ)そう言った途端に襲いかかって来たんだ!後はもう殆ど覚えてない。とにかく逃げて来て、気づいたらここに来ていたんだ」
「そう、大変だったわね」
「これはいち早く成敗しないといけませんね」
「でも今はどこに居るのかしら」
「ルツネ様、匂いは感じないのですか?」
「う〜ん僅かに感じるわ」
「となると今もこの国に居るのでしょうか」
「そうだと思うわ。でもこれでは何処に居るかは分からないわね」
「取り敢えず一度東の森に行きましょう」
ちょうどその時、城下町の団子屋に一人の男が居た。
「あ〜やっぱこの国の団子はウメェな。山火鐘の団子なんかただの泥団子だからな。おまけに茶もうめぇ。お、ありゃあ奥に居るのはこの国の姫さんじゃないか?...ちょいと後つけてみるか。あヤッベ。昨日も金貰えなかったっけ。まあいつもの事だけど。おっちゃん!この団子美味かったぞ!!いつかぜってぇ払ってやっから!!」
そう言って男は食い逃げした。
「ん〜やはり東の森にはもういない様ですね」
「兵長!先程、森の入り口で怪しい人物を部下が捕らえました!」
「本当か!その者を早く連れて参れ!」
「は!」
「ルツネ様、本物でしたらどうしてやりましょうか」
「私は本物はそう簡単に捕まるとは思えないわ」
「大丈夫です。私の部下は精鋭揃いですから」
「アオミ、相手がどれだけヤバい存在なのか分かってる?相手は妖気を浴びるだけで気絶してもおかしくないのよ。とても舐められないわ」
「兵長!その者を連れて参りました!」
そこに連れてこられたのは、紅いブカブカの服、深緑の不揃いな髪、黄緑色の目を持つ男であった。
「キサマが昨夜現れたと言う化け物だな!!先ずは名を名乗れ!!」
「名?なんにしよっかな〜」
「ふざけろ!!」
「へいへい。オレん名は〜リバディって言う。嘘じゃねぇぜ。何故なら本名が無いからな」
「リバディ。キサマは昨夜、山火鐘国の兵を襲い、殺そうとした!」
「殺そうとは思ってねぇ。ただ金が欲しかっただけだ」
「言い訳無用!さらには不正入国をし、あろう事かルツネ様の跡をつき命まで狙おうとした!!」
「別にお姫さんの命なんかいらねぇよ。お姫さんの行動の方が興味あったからな〜」
「続きは裁判で聞いてやる」
「さいばん?何それ」
「キサマを公正に裁くものだ!!」
「おーそいつは面倒そうだ。此処らでトンズラするか」
そう言った途端に、縄を解き木の上を走って逃げて行きました。
「待てー!!長吉、海蔵、次五郎兵衛は先回りをしろ!晴賢!お前はルツネ様を守れ!頼んだぞ!」
『御意!』
「長吉殿、某と共に西を固めるぞ。海蔵殿、北は頼めるな?」
「お安い御用だ!」
「西に二人北に一人、ついでに後ろにもう一人。どうしよっかな〜。もう直ぐだし姫助けに行こうかな〜。一旦南行きーので北東か」
「ぬ、アヤツ南に向かったな。海蔵に南東を頼みに行こう。ルツネ様には絶対に近づかせないからな!」
「アオミ、大丈夫かしら。ですが相手も本気を出していない様子、一体何が目的なのかしら」
「恐らく姫の命が最優先でしょう。ですが私がいるので、流れ者如きに我々の先を越される事はありません」
そう言うと隠し持っていた縄で姫を一瞬で縛り上げた。
「我々の目的も姫の命だ。だが色々と利用価値がある。だから一度我が国に来てもらう」
「......晴賢、私は昔からあなたを信用していたわ。だから聞きたい。何故私を裏切ったの?」
「俺はあなたの部下になった時には既に裏切っていましたよ」
「...!」
「あいつらやっぱ足はえぇな。もーう挟まれてる。まあいいや、正面突破しよ」
「待てぇい!!キサマ!姫には指一本触れさせない!」
「あっそ。今ちょいと急いでるんで。誰だっけ?海蔵だったかな?オレ耳良いんだ」
「そんな黒い耳でか?笑わせる!」
「あーそんな黒い耳でだよ。ささ、どいたどいた。隼斬り!!」
そう言った途端に、木が数十本薙ぎ倒された。
「は!?え、は!?」
「横通るね〜」
「何かしら、あの音」
「あなたの部下が殺された音だ」
「...私の仲間は殺されない」
「何処からその自信は来るのだか。さあ、もう直ぐ俺の仲間が来る」
すると突如木の上から誰かが舞い降りた。
「よーし一周っと。二週目は、まもう良いか。あれ、なーんで姫の護衛が一人だけなんだ〜?おまけに姫はその護衛に縛り上げられてるし」
「俺はもう護衛じゃなくて敵だからな。だが山火鐘までは護衛するさ。アンタみたいな奴からなー!!!デェヤァァ!!」
「ほー凄いねところで姫さん、何でオレが一周して戻って来たと思う?」
「リバディ、後ろ!!」
「あー大丈夫。姫さん、あんたを助けに来たんだ。だーからお前は死んでくれ」
後ろからの攻撃をスルリと躱して、護衛の頭を鷲掴みにし、思いっきり地面に叩きつけました。
「よーしっと。後は首を切るだけ〜。あーら...」
「待って!!」
「よっ、とっ、とっ、とっ、オウ!!何で良いとこで止めんだよ!!」
「すいません。だけど首は切らないで!」
「はぁ!?お前こいつに殺されかけたんだぞ!?どう言う意味か分かる!?」
「分かっています。だけど人を殺しても、何も良い事はないわ」
「あんたの部下も殺せ殺せ言うぞ。絶対」
「それでも、その...」
「..あ〜もー良いよ。やめだやめ。首切るのも姫から金するのも」
「お金をすろうとしてたのですか!?」
「どうせならって、オレ金ねぇから」
「お金が無い......!あの、もし宜しかったら...」
「ルツネ様!!」
「姫!!大丈夫ですかな!」
「晴賢も大丈夫か!」
「キサマ、ルツネ様の命を奪おうとした罪は計り知れんぞ!!」
「あ〜もー面倒!!姫さん説明してやれ!オレはそれまでもう一周してくる」
「待たんか!!!」
「皆んな待って!!」
「っと、ルツネ様!何故ですか!早くしないとアヤツが逃げてしまいます!」
「話を聞いて!」
「これで二週っと。どう?終わった?」
「キサマ!!!ルツネ様に幻術を掛けやがって!」
「あ〜もー!!お前は主人の言葉を信用せんのか!!」
なんとか説得出来た様です。
「これは大変失礼しました!!」
「別に良いよ。こっちも金すろうとしてたし」
「それは後で反省してもらいます」
「へいへい」
「ところであなたは何故私を助けたのですか?」
「それはな〜。団子屋であんたを見かけた時、護衛がなんでか刀二本持ってたのが見えちゃってね〜。普通警護用の刀は一本だろ?それなのに小刀を隠し持ってる奴は暗殺を狙ってる奴だけだからね〜」
「なる程、そうでしたか。次からは持ち物検査は厳重にやるべきですね」
「オレにはやらんでほしいかなー」
「そう言えばあなたは妖怪なのでしょうか?」
「ん?あー、オレはある女が妖怪に恋しちゃって生まれて来たからね〜。半人半妖って奴だ」
「そうだったのですか。だから紅い服を着ていたのですか」
「まおかげで怖がられまくってこの様だ。だから昨日門番襲ったんだよ」
「やっぱりお金が無いのね...あの、さっきは言いそびれたけど、その...」
「何だ?オレは人が言ったことは否定しねーぞ。ものによるけど」
「わ、私の護衛になったらどうですか!」
「...は?」
第一話、完。
和風の物語を見て書きたいと思って書いちゃいました。並行世界の日本のような世界観です。漢字ばっかで読みにくいけど昔はこれが普通だっただろうから漢字を使いまくります。意味が合ってるかは知りません。後レーディング15を超えないようがんばります。