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新婚生活スタート

 結婚して早々、書類上は奥様とされるお方に、【殺されるんじゃないのか?】 なんて本気で思わされるなんて誰が予想出来るかな?

 そんなあまりも予想外過ぎる状況に内心怯えまくりながら、エステラ様の話を大人しく聞いていたら、なんとエステラ様と円満離婚契約を結ぶ事となるなんて、もっと意外だったけど。

 そして契約成立した後、俺はエステラ様と執事さん達から、俺用に用意された寝室に案内される事になって、俺の寝室についてサラっと説明してもらったんだけど、要はこの寝室に用意された物は好きに使っていいんだって。


 但し俺には、「侍女さんは付きません!」、とハッキリ宣言されちゃったんだけどね。

 まぁ、弟の身代わりで、社交界を淫らに荒らし回った【社会的クソ野郎】というレッテルを張られられちゃってるから、この屋敷で働く使用人に下手に手を出させないようにするために、俺に対する対応としては、妥当というか当然の対応なんだろうけどさ。

 もっとも俺がナルバエス侯爵家で暮らしていた時に、そもそも俺に侍女さんなんて付いていなかったし、自分の身の回りの事は常に自分でやってたから、今更侍女さんが付いて身の回りのお世話なんてされても慣れてないからね。

 正直着替えとか手伝ってもらっても、俺が戸惑うだけなのは目に見えてるから、実はこの”貴族的には塩対応”って、俺としては内心とても喜ばしい対応なんだよね。

 環境変わっても他所のスタイルを押し付けられるより、慣れ切ったスタイルのまま暮らせるの方が、変にストレス感じる事もないしね。


 そもそも個室かつ、自分専用の浴室まで準備されてるだけでも、俺からしたら超VIP待遇なのに、用意された寝間着の着心地が良すぎるって、どんだけVIP待遇なのさ? 何て言い手たくなるぐらい今の待遇は俺にとって良いんだよね。

 そしてこの部屋には俺しかいないという事を念入りに確認した後、俺は思い切って目の前に広がる高級そうなベッドに思いっきりダイブしてみる。

 いやー、一回やってみたかったんだよね~、広告みたいな感じで思いっきりベッドにダイブして沈んでみるのって!


 そして俺の渾身のベッドダイブは、優しくベッドが受けて止めてくれる……何だこのベッド包容力! 天使の抱擁なのか?

 流石はフローレス辺境伯家! 俺みたいな人間にも、こんな良い高級寝具を用意してくれるなんて、どんだけ至りつくせりなの!

 この屋敷に来た直後は、本気で殺されるんじゃないかと心配し、「もう胃に大穴が空いたんじゃないのかな?」、なんて思えるぐらい胃が痛くなったりもしたけど、そんな事この高級ベッドの優しい抱擁力が全部忘れさせてくれる気さえする。

 いやー、しかしこんなに気持ちいベッドメイクが出来るなんて、フローレス辺境伯で働く人は良い仕事してるね!

 これはちょっとどうやったらこんないい仕事出来るのか聞くついでに……スヤァ~zzz


・・・

・・


 俺は今、人生において、最も最高の目覚めを経験しているかもしれない……コレも俺の為に用意してくれた広くて寝心地が良すぎるベッドのお陰なんだろうね。

 俺なんかの為に、こんな極上の寝具を用意してくれた使用人さん一堂には、ホント感謝の気持ちしかないよ。

 後でお礼を伝えないとなー。 ついでにベッドメイトのコツも教えてもらいたい所だね。


 とりあえずベッドから出て着替えようと思ったのだが、俺が今いるのは、今まで住んでいた場所とは違う勝手の分からない辺境伯(知らない人)の家。

 この部屋の物は自由に使って良いとは言われはしたけど、昨日はエステラ様とのやり取りでどっと疲れていたからか、昨日ベッドにダイブした後、そのまま寝具の心地よさにつられて、スヤァ~っと一瞬で眠ってしまったので、この部屋に関する説明って、実はまだちゃんと聞いていなかったんだよね。

 自分の寝室である以上、勝手に色々調べていいのは頭で分かっていても、体は勝手が分からない場所を探る事に抵抗示してるから困ったよ。

 こうゆう時って、頭に従うべきか? それとも体に従うべきか? なんて悩んでいると


 コンコン!

 突如扉を叩くノックの音が響いたので、俺は、「はい、今空けますね」、と返事をして、ドアを開ける。

 すると開けた扉の前には、見覚えのある人が立っていた。

 確か昨日出会った執事さんの一人だったハズ。

 何んというかこの執事さん。常に余裕のある表情を浮かべているので、きっと只物じゃないんだろうなー、とか勝手に考えていたからか、妙に印象深かったんだよね。


 「別にドアを開けてくだされなくても、返事さえ頂ければ良かったのですが……」

 あ! こうゆう時って普通貴族はドアを自分から開けないんだっけ? 一応名目上は侯爵子息だけど、貴族らしい生活なんて送ったどころか、使用人たちと共に仕える側の生活に馴染んでしまっていた俺としては、そんなルールにパッと対応できないって話なんだよね。

 とりえあず部屋の前で待たせる訳にもいかないので、執事さんに、「どうぞ、どうぞ」と中に入るように促し、あらかじめ用意してある小型テーブルに設置された椅子を引いて執事さんを招いてみると、執事さんは何とも言えない表情を浮かべている。


「あれ? どうしました?」

「...…私どもはリカルド様に仕える身なのですから、別に招き入れる必要はありませんからね? それに敬語も不要です」

 あっちゃ! またしてもやってしまった!

 そういれば、俺ってもう名目上はフローレス辺境伯当主の夫なんだよね。

 だから今までの使用人感覚で使用人さんと接すると、、使用人さん達からすれば、結構なやりにくさを感じちゃってるんだろうね。


「すいません。以前の生活の癖で……直ぐには治らないかもしれませんが、時間を掛けて頑張って直していきます」

 敬語使わなくていいって言われたのに、結局ほとんど敬語を使っちゃったね。

 しかしこればっかりは、以前の生活で染みついてしまった習慣なので、大目に見てほしい。

 っていう気持ちを込めて執事さんに伝えたつもりだったが、そんな俺の姿を見た執事さんは、再び何とも言えない表情を浮かべている。

 なんかフローレス辺境伯邸に来てから、不思議というか、何か残念と言うか……俺の事を微妙そうな顔しながら見て来る事が多いのは、俺の気のせいだと思いたい。

 そんなくだらない事を考えていたら、いつの間にか執事さんが俺の前に立っていた。

 えっ? いつの間に?? やっぱりこの人只者じゃなさそう! そして何かちょっと怖いんですけど!?


「申し遅れました。

 私リカルド様の側近として、リカルド様のお世話を担当させていただく事になった、執事長のミゲルと申します」

「あ! ご丁寧にどうも。 昨日からお世話になっているリカルドです。 分からない事だらけで最初は質問ばっかりすると思いますが、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 俺はミゲルさんに、「これからよろしく!」 という意味を込めて手を差し出す。

 するとミゲルさんは一瞬驚いた様子を見せたように見えたが、直ぐにニッコリと笑顔を浮かべると、俺が差し出した手を握り返してきた。


 こうして自分の担当執事さんとの挨拶を終えた俺は、寝間着から着替えた直後


 グゥゥゥゥゥゥ!


 俺のお腹が盛大に鳴り響いた……その音を聞いたミゲルさんは、笑顔で


「まずは朝食をとりにいきましょうか」

 そう言われた後に、とりあえずミゲルさんの案内で、朝食を食べに向かう事になるのだが、その際ミゲルさんに、この屋敷での生活において、気になった事を訪ねてみる。


「そういえばエステラ様はもう朝食終わったんですか?」

「いえ。実はエステラ様は帝都から届いた急な招集に応じる事となり、明朝から帝都に向かわれました。

 元々明日から帝都で一カ月近く掛かる任務に就く予定でしたから、次にこの家に戻ってくるのは、大体一カ月近く後になると思われます」

 という事は、結婚早々奥さんに何も言わずして出ていかれたって事?

 そう考えると駄目夫感が半端ないな俺! ってかこの婚姻がそもそも、離婚が目標の結婚生活なんだから、別にこれでいいのか?

 自分の特殊な状況を考えると、別に夫婦の距離を縮める必要性は特にない事を思い出したので、とりあえず一端その事については考えないでおこう。

 そんな事を考えていると、朝食が用意されているという部屋に着き、ミゲルさんの案内の元部屋に入ると、目の前には圧巻の光景が広がっていた。


「もしかして………コレが一人分の朝食?」

「はい」

「量……多くないですか?」

「リカルド様の好みが分からなかったので、今回は様々な物を用意させて頂きました」

 食事用の部屋に辿り着いた俺の目の前に広がいる光景は、広いテーブルに様々な料理が所狭しと並んでいるという、ナルバエス侯爵家から出なかったら、絶対見れそうになかったね、この光景。

 そんな事より、この食事の量。そもそも一人で食べる領じゃないよね?

 いくら好みが分からないからって、ここまでやる必要あるのかな?

 とりあえず俺はテーブルをぐるり一周し、自分に必要な量(出来るだけ残さないように、頑張って食べようと大目に盛った)の料理を皿にとって用意された席の前に並べてみるが、俺の皿に盛られた料理は、テーブルに並んだ料理の十分の一にも満たない量の食事だった。

(う~ん、いくら俺の好みが分からなかったとはいえ、コレはいくら何でもやり過ぎな気がする……)


「俺の朝食ってさ。パンとスープとサラダと食べやすい卵か肉料理ぐらいあれば、十分足りるんですけど?」

「分かりました。次からはそのようにいたします」

 ミゲルさんに自分のとって今後必要な朝食の量を伝えた後、早速朝食を頂いてみる事にした。

 食べた感想としては、正直言ってフローレンス家のご飯はめちゃくちゃ美味しいと感じた!

 だけど、俺一人広い部屋で食事を取ると言う行為は、思った以上に寂しい物だった。

 なんせ今まで、ナルバエス家で使用人の仲間達と共に一緒になって、ワイワイ食事を取っていたのが当たり前だった俺にとっては、料理がいくら美味しくても、どうにも何かが物足りなく思えてしまうんだよね。

 でもこればっかりは立場が変わってしまったからしょうがないのかね? 俺は少し前まで当たり前だったあの当たり前の光景を俺は惜しみつつ、俺は食事を終えた。


「ご馳走様でした。どの料理もすごく美味しかったと、料理人の皆さんにお伝えください」

「畏まりました。必ず伝えておきます」

「ちなみにこの残った料理の山って、どうするんですか?」

「もちろんすべて破棄します」

 俺は目の前に未だに広がる数々の料理って、どう処理しているのかふと気になったので聞いてみると、予想だにも思わぬ返答が帰ってきたのを驚きと同時に、何とも言えない気持ちが触発された俺は、思わず席を立つ。


「え? コレ全部捨てるんですか! せっかく料理人の皆さんが心を込めて作ったのに、もったいない。

 捨てるぐらいなら、この余った料理俺の昼と夜のご飯として出してくださいよ!」

「いや、流石に旦那様となったお方に、そのような物をお出しする訳にはいきませんから」

「でも俺が食べなかったら捨てるんですよね? それって作ってくれた料理人さんの心と食材とお金を無駄にしてるのと一緒じゃないんですか?」

「そう言われましても……名高いフローレス辺境伯家が、食事代をケチって旦那様に使用人と同じ賄いを食べさせていると知られたら、フローレス家のメンツが立ちません」

 ミゲルさんは俺に、まさか余った食事に関してケチを付けられるなんて思ってもいなかったようで、朝から見せていた余裕ある表情は崩れて、大いに焦った表情を浮かべている。


「だからと言ってまだ食べれる物を捨てるのは、違う話だと思いますけど」

「そういう問題じゃありません」

「じゃあどうゆう問題なんですか?」

「フローレス家の男主人となった以上。『立場は弁えて頂く必要がある!』 という事です」

 うっわ! この時俺は心底「貴族ってめんどくさい生き物なんだな」って思った。

 要はメンツの為なら作ってくれた料理人の心を無下にして、頂く命を粗末に扱うどころか、金も平然とドブに捨ててでもメンツって奴を保たないといけない物なのかね?

 確かにそんな事気にしないでお金を使う事で、市場のお金が潤う側面だってあるんだろうけど、作ってくれた人に対する敬意も持たない生活なんて、長い事平民として生きてきた俺には、やっぱり無理な話だったって事だね。


 しかし二年間はフローレス辺境伯夫君として生活すると契約しちゃった以上、その契約を果たすまでは、貴族ごっこをやるけどさ。

 契約通り2年経って離婚成立と同時にもらう物もらったら、こんな生活さっさとオサラバするのが俺の中で確定かな。

 そんな悪態を心の中で付きつつ、これ以上この部屋に居ても胸糞が悪いだけだと思った俺は、さっさとこの胸糞悪い部屋から出ようと出口の方を見ると、出口に控えている使用人さんが目に入った。

 そしてその瞬間、ある考えが頭に思い浮かんだ。


「ミゲルさん。使用人の皆さんって朝食終わりました?」

「いえ。まだほとんどの者が朝食を取り終えていませんが」

 やっぱり。そこは侯爵家だろうが、辺境伯家だろうが、目の上の人間から食事を取るのは変わりない訳ね!


「そうですか。でしたらちょっとお願いがあるんですけど。

 今からここに集められるだけの使用人の皆さんを、集めてもらえませんか?」

「はぁ?……それがお望みでしたら」

「よろしくお願いします。

 あっ! どうしても仕事が忙しくて手が離せない人は、無理して連れてこなくていいですからね」

 俺の言った事に対して再び、「一体何を言い出すんだコイツ?」、とでも言いたげな表情を一瞬ミゲルさんは見せるが、今の所この屋敷の主の夫である俺の言う事を、立場上無下にする訳には行けないとでも思ったんだろうね。

 ミゲルさんは直ぐにいつもの余裕ある表情に戻ると、扉の前で控えていた侍女さんに、テキパキと指示を出し始める。


 離婚までの2年間、事なかれ主義で大人しく過ごすつもりだったのにね。まさか結婚生活早々使用人さんと揉めちゃうなんて、我ながららしくない事しちゃったね。

 まっ、自分で起こした問題ぐらい自分でケリを付けれなきゃ、2年間色々と面倒事だらけのお貴族様の世界で生きていく事なんて無理だろうしね。

 やれるだけの事はやってみるさ。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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