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朝寝坊をしてしまった!

本日3度目の投稿です

目が覚めると、伯父さんは先に起きていて朝食の準備をしようとしていた。

時計を見ると、7時15分。寝坊をした!

放牧はいつも7時だ。 


これは急がないといけない。そう思ってパジャマの上から厚手のカーディガンを羽織った。

伯父さんは、父さんと違って目ざといから、パンを持って行くと気づかれてしまう。

何を待てば気づかれないか悩んで、結果、保存食の干し肉を少しだけポケットに入れた。

羊ちゃんのための干し肉だ。


そして羊小屋に向かうと、すでに羊小屋の前に人がいた。

馬に乗って羊小屋を開けようとしているのは隣の牧場のダレルだった。

同じ年のダレルは、もちろん同じ学校に通っている。

……学校は一つしかないし。


「おはようリーザ」

爽やかな笑顔で挨拶をしてくれた。

ダレルは背が高く、短く切りそろえた髪はアンバー色。日に当たると、金髪っぽくも見える茶色である。そして優しく垂れた瞳が女子からは大人気だ。

だから、あのシルヴァ嬢も、しょっちゅうパーティーに誘っているらしい。


「おはようダレル。昨日も羊を放牧してくれたの?ありがとう」

私の言葉にダレルは微笑みながら羊小屋を開けた。

そして犬笛を吹くと牧羊犬が羊の誘導を始めた。


「別に大したことをしていないよ」

「ウチの羊だもの。私がやるわ」

羊ちゃんの様子が気になるから、ここから先は自分でしたい。ダレルがいると、羊ちゃんに話しかけたりできないので、『帰ってほしい』という雰囲気を出してみた。


しかし、ダレルは気が付いていないようで馬を降りて、私をじっと見た。

「何?何かついてる?」

「嫌。リーザの髪を下ろしている姿、久しぶりに見たから。それにいつも茶色のドレスなのに、そのカラフルな服……は、パジャマ?ピンクも似合うね」

格好を指摘されて、じぶんの服装を改めて見る。

ボサボサな頭に、ピンクのパジャマで、しかも真っ赤なカーディガン! 


なんて格好をしているのだろう。恥ずかしい!

パジャマも、カーディガンも、叔父さんからのプレゼントだ。派手な色だけど、家から出なければ誰にも会う事は無いと思って、普段から愛用していた。

今日は寝坊したせいで、焦ってこの格好で出て来てしまった。


ここは開き直るしか無い。

「ダレルそんなにおかしい?」

私はちょっと怒った雰囲気を出した。私の髪は寝癖で、激しくうねっている。

「違うよ。こっちの方が似合ってる。いつも下ろしていればいいのに」

そう言ってダレルは私の髪を一房手に取る。


「嫌よ。今日は寝坊してまだ結っていないだけで、下ろしていたら厩舎の掃除の時とか邪魔で仕方ないもの」

立つ距離は近いし、早く帰って欲しいからイライラしてきた時だった。


「ダレルおはようございます。リーザを送ってくれるのは貴方なんですね。それは心強い。朝ごはんを食べていきなさい。リーザも、早く支度が必要ですよ」

家の方から伯父さんの叫び声が聞こえる。 


「アーネストさん、おはようございます。朝食、是非頂いていきます」

ダレルはそう叫んで、私に『行こう』小さな声で言った。

「先に馬を繋いできて」

「わかった」


やっとダレルを追い払えたので急いで羊小屋に入ると、枯れ草を背中に乗せた羊ちゃんが空っぽの羊小屋の入り口に立っていた。

「羊ちゃんおはよう。そんなところに居たらダレルに見つかるじゃない!もっと隠れててくれなきゃ」


しかし羊ちゃんは動かない。 


「はい、これ。干し肉よ。なんだか変な一味が街をうろついているの。自称『行商人の一行』なんだけど、おかしくてね。女の子を探しているらしいの。見つかると危ないから隠れていてね」

羊ちゃんは何か言いたそうに枯れ草を震わせていたが、干し肉を枯れ草の中に引き込むと、壁際に戻っていった。

今日は小屋を出ないつもりらしい。

「また夕方」

羊小屋の扉を閉めると、急いで家に戻った。


「2人とも手を洗ってください」

ダレルと2人で手を洗うと、食卓について3人で朝食を食べた。


「アーネストさんの料理はなんでも美味しいですね」

ダレルが言うと伯父さんは笑った。

「リーザも上達してきましたよ。特に、カップケーキが上手に焼けるようになりましたね」

「カップケーキ!食べてみたいなぁ。ねえ、リーザ。今度焼いた時一つ僕にも分けて欲しいな」

「えー?嫌よ。だってウチのオーブンじゃ温度が安定しないんだもの」

そんな掛け合いを伯父さんは楽しそうに眺めていた。



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