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アフターパーティー

私達が到着した頃には、もう沢山の学生がいて、ヘイリーが逮捕された噂が広まっていた。

「人身売買はこの国では重罪だ。最低20年は牢屋の中だろう」という者や、「国際裁判だから、死刑だって」と言う噂まで飛び交っている。

それすらパーティーのネタになってた。


会場に入ると、沢山の同級生達集まってきた。

「オークションすごかったね。でも、昨日からリーザが別人のように美人なんだけど。歩き方も急に綺麗になったし」

そう言ってみんな褒めてくれる。

別人だなんて!

ただミランダが髪を結って、メイクをしてくれて、そして立ち居振る舞いまで教えてくれたからだ。


「今日は、雑貨店で働いているナサニエルと来たのね」

「ダレルと一緒じゃなくて安心したわ」

「本当そう。一緒だったらリーザまで疑われてしまうわ」

友人達が小声で言う。


ダレルは、ヘイリーと付き合っていると言う噂だったので、「ダレルも仲間なんじゃないか?」と疑いの目で見られていた。

「リーザ、幼馴染なのに」

同情してくれる人もいるが、

「牧場同士はお隣だから付き合いがあるけど、ダレルの事よく知らないのよ」

私は否定も肯定もしない。

あまり何も知らないのは事実だ。


噂のせいで、いつもなら人だかりの中にいるダレルは、1人でバンケットコーナーにいる。

でも、もう私にはどうだっていい。

バンケットコーナー側を通ったが、私はダレルを無視した。


「あっ、リーザ」

ダレルは、私に無視されたとは思っていなかったようで声をかけてきた。

「ダレルもパーティーに来ていたのね」

「ああ。さっきは、パーティーには一緒に参加しないとは言ったけど、元々はダンスの約束をしていたよね?」

満面の笑みで近づいてくるダレルを冷めた目で見る。


「いつものように女の子達を誘ったら?私の事は、いつものように、『いないもの』として扱ってくれていいから」

「いないものとして、リーザを蔑ろにした事はないよ」

よくそんな事が言えるわね?どの口が言ってるのよ?と、聞きたいけれど、ここは大人になって余裕の表情を作る。


「あらそう?今日はナサニエルと約束したから、ダンスは一緒に踊れないわ。それに、残念だけど、2年連続で約束を破る人に紹介できる友達はいないの」

そう言って、笑顔を見せる。

きつい言い方かもしれないけど、声をかけられたらホイホイついていく私ではない。

それに、過去のことには気にしない。

今はナサニエルと楽しもう!


「じゃあね」

エスコートしてくれるナサニエルに腕を絡めて、その場を立ち去る。

ナサニエルと会場を歩いていると、何人もの男の子達がダンスの申し込みカードを持ってやってきた。

それは全てお断りした。

また、会計クラブのブースにカードを持ってきていた男の子達もいたが、誰かに預けただけで、私は受け取っていないからと、お断りをした。


「リーザって人気があるんだね」

ナサニエルの言葉に私は声を出して笑う。

「違うわ。オークションを落札したのがドリーナだからよ。ドリーナ・バブルね。でも、短いバブルになると思うわ」

そう答えると、次はナサニエルが笑った。


「じゃあ、バブル真っ只中のリーザ嬢、踊って頂けますか?」

「ええ!喜んで」

ダンスホールは人であふれていたが、私もナサニエルと踊りの輪に加わった。

貴族のパーティーと違って、ワルツとかではなく、思い思いの踊り方でダンスを楽しむ。


「本日参加の皆様にお知らせです!」

実行委員が叫ぶ。

「皆様、ご注目ください!ドリーナ嬢が来てくださいました!」

会場に来ていた者は皆、歓声を上げる。

バンドの音楽が変わり、ドリーナが出てきた。

右手には、ミランダ。左手には、レオをエスコートしている。


「では、一曲、ワルツに合わせて歌うわ。私のワルツに合わせて、素晴らしいダンスをしてくれる2人を紹介します。ミランダと、レオです!」

その紹介で、2人一歩前に出た。そして、レオの掌の上にミランダはそっと指先を乗せると、2人は優雅に礼をする。


そして、向かい合って立つと、ドリーナの歌とともに、ダンスが始まった。

その様子はまるで羽が生えているようで、気品が感じられる。

昨日、貴族の舞踏会で見たどのダンスよりも、繊細で優美で、もう何もいえない。


あまりの高貴な雰囲気に、誰も声が出ない。

そんな圧倒的なオーラがあった。

曲が終わると同時に、踊り手二人は優雅に礼をして、あっという間にいなくなった。

短い演目を観ているくらいの感動があった。

「この後も楽しんでね」

ドリーナはそう言って舞台を降りた。


「あのレオってレオナルド王子殿下に似てなかった?」

「こんな田舎のパーティーに来るはずないよ」

「確かにありえないよね。王族が来るはずないかぁ。一瞬期待したのに」

「相手はミランダ?髪を染めてるから別人みたいで、優雅に見えたね」

「あのレオって人誰なんだろう?」

「多分、俳優さんじゃない?」

「確かに、服のサイズが合っていなかったものね」


噂話を聞いて、『レオ』の正体を察した。

こんな田舎町に王族は来る!

現に来ているのに皆気が付かないだけだよ、と言いたいけれど、黙っておく。

そして、ナサニエルと視線を合わせた。

もちろん、お互いに苦笑いしかできない。


「あの。ちょっと……ミランダの様子を確認しに行かない?」

私の申し出に、ナサニエルは頷いた。

そして、外に出てみると、ミランダ達はいなかった。

「ミランダと、今日の事を分かち合いたかったのに!」

「僕もだよ。それじゃあ、一旦帰ろうか?」

二人で馬車に戻ると、アーネストおじさんが待っていた。

「何も聞かずに馬車に乗ってください」

なんとなく、大切な事が起きるんだと察した私達はおとなしくいつもとは違う馬車に乗る事にした。

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