全てを解決した後の、心境の変化
「奥の2人が私の宝石を漁った後、逃げたでしょ?それを追いかけるあなた達3人を追いかけてここに辿り着いたの」
その言葉にオーランドとジュリーを見る。
すると、ジュリーとオーランドは、鉄仮面をしたドリーナの護衛2人に捕まっていた。
音もしなかったし、気配にも気がつくことができなかった。
さすがプロだ。
「ここ数年、噂になっていたのよ。希望するお人形を準備してくれる人がいるって」
無邪気にそう言うと、ドリーナはヘイリーを見た。
「そこの、ストロベリーブロンドの女の子と、赤髪の男の子が欲しいわ。譲ってくださる?」
そして、閃いたとばかりに後ろを振り向いた。
「あの2人に盗まれた宝石全部ここに持ってきてちょうだい?」
その提案を聞いていて、私は声が出ない。
宝石全部であの2人を買うつもりなんだ。
ドリーナもヘイリー側の人間なんだ。引き連れている護衛の腕は、きっと私では歯が立たない。
もうだめだ……。
「あら、黙ってないでなんとか言ったらどう?」
ドリーナの質問に、ヘイリーは笑った。
「……この2人は無理よ。貴方なんか比べものにならないくらいの権力者からの受注品なの。でも、次の出荷時に貴女の希望のお人形をお譲りするわ。髪の色や眼の色。話せる言語の種類。なんでもご要望に応えるわ」
「まあ!嬉しい」
ドリーナは楽しそうに護衛を見た。
「貴女が人身売買している事がこれではっきりしたわ。ここにいるみんなも聞いていたわよね?黙っていたら、売られちゃうわよ?」
更に楽しそうに笑った後、急に表情がなくなった。
「あの人でなしを捕まえて」
ヘイリーは、口をポカンと開けた。
「私の組織を乗っ取る気?」
「あら!違うわよ。壊滅させて、司法に訴えるの。奴隷は世界的に見ても違法よ」
「そんな事言って、新しい組織を作るつもりでしょ?ドリーナって鬼畜だったのね。貴女、あの2人を買おうとして宝石を差し出そうとしたじゃない?」
「誰が2人を買うって言ったかしら?譲ってくださる?とは聞いたけど、代わりに宝石をあげるとは一言も言ってないわ」
「何をごちゃごちゃと言い訳してるのよ!」
「言い訳?違うわ。事実よ。私の宝石、泥棒から先に取り返しておこうと思って指示したのに。誤解してもらっては困るわ」
妖艶に微笑むドリーナがすごい。
このやりとりに少し希望が出てきた。
ドリーナはあっち側じゃない!
それからはあっという間だった。
ドリーナの護衛が、ヘイリーと、その用心棒3人を縛り上げ、ヘイリーが首から下げている鍵を使って、この部屋にいる生徒達のブレスレットを全て外した。
オーランドとジュリーは、世界的に有名な泥棒の一味だった。
この学校のどこかに200年前に滅亡した王国の隠しワインがあると噂を聞いて、この街にやってきていたそうだ。
ワインのついでにドリーナの宝石を狙ったが、それが原因で捕まったのだから、ワインだけにしておけばよかったのに、と、ちょっと思う。
「急ぎませんと、もうすぐ15時よ」
ドリーナの言葉に、我に返った。
「あーーーー!!!オークション……。忘れてた。これに、ここから出るにはまたあの狭い隠し廊下を通らないといけないのよね?」
私の言葉に、学生達が笑う。
「秘密の近道を案内しますよ」
ストロベリーブロンドの子の後をついていくと、突然、眩しいところにでた。
ここは……。
「ちょっと!リーザどこ行っていたのよ?ずっと探していたんだからね?」
そこは、オークションをしている舞台袖だった。
沢山の生徒達が待機している中で、メリッサが私の顔を覗き込んだ。
「ラッキーな事に、オークションが長引いていて、次が私達の番よ!っていうか、そのお仕着せ何?しかも、ちょっと汚れてる?」
「それくらいで、ちょうどかもしれませんことよ。誰かを護った後みたいで素敵ではなくて?」
ミランダの言葉に、思わず苦笑いをした。
「ちょっと!ナサニエルさん、その格好素敵!!一緒にオークションに出ない?」
護衛の制服のナサニエルを見て、メリッサが嬉しそうにしている。
「後の事は、偉い方々に任せておきましょう」
ナサニエルが耳打ちしてくれた様子を見て、またメリッサが冷やかしの視線を投げかけてくる。
舞台上の司会の大きな声が聞こえてきた。
「では、残り2つのクラブととなりました。一緒に舞台に上がっていただきましょう!まずは、会計クラブからの出品は、『リーザの護身術教室』と『メリッサの1日子守をする券』です」
煽るような、またちょっとバカにしたような歓声が聞こえる。
「そして、フェンシングクラブからは『ダレルとの一日デート』と『街一番の筋肉を持つハビエルとのデート』です。では、4人の登場です。」
一際大きな歓声が上がる。
女の子達は、みんなダレル達に期待しているんだろう。
でも、私達は私達だ。
メリッサと視線を合わせて笑い、それから胸を張って、舞台の上へと向かった。
私達は番号札を胸につけて、観衆の前に立った。
まず、私のオークションが始まった。
恥ずかしさと緊張で、その後の事は、よく覚えていない。
ただ、落札額が過去最高額になった。
なんと、落札してくれたのはドリーナ嬢だった。
「護身術は必要だと感じたのよ」
と、落札後に舞台に上がって答えてくれたのだ。
しかも、ドリーナ嬢は、メリッサも落札してくれた。
自分の秘書が今、育児で忙しいからというのが理由だった。
その後のダレル達の落札にドリーナは参加しなかったので、金額は例年通りになった。
オークションの後、舞台から降りたダレルは不満そうに私のところにやってきた。
「リーザ、運が良かったね。毎年、会計クラブの入札は、誰も参加してくれなくて大爆死するのに」
言葉の端々に刺々しいものを感じたが、私はにっこり笑う。
「あら、本当に運が良かったみたい。ところでアフターパーティーだけど…」
私の方から断ろうとしたが、ダレルは睨むように私を見た。
「ああ。リーザとは参加できなくなったんだ」
「去年もそうだったわね」
「まあ、予定が変わってね」
ちょっと上から目線のダレルを、心の中で笑う。
あっそう、ヘイリーは捕まったから来ないわよ?とは教えてあげない。
もう、ダレルの事はどうでもいいのだ。




