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隠し通路

本日2回目の投稿です

「何をしているの?」

私の声で二人は振り返った。

「リーザ?なんでここに」

オーランドは驚いて持っていたネックレスの入った箱を落とした。

「貴方達、何をしているのよ!」

「見ての通りよ。素敵でしょ?ドリーナのジュエリーコレクション」

そう言ってジュリーが手に持っているダイヤの指輪を自分の手にはめて眺める。

「二人がやっている事は泥棒だぞ?それに、こんなところに本物の宝石を持ってきているだろうか?」

ナサニエルの言葉にオーランドが笑う。

「素人の君達と違って、目利き力は確かなんだよ」

あーあ。

ナサニエルが誰かも知らずにそんな事言っちゃって。


「僕だって本物だってわかっているよ。だから、ちゃんと返すんだ!」

「あら。大金持ちのドリーナにとってはハンカチと同じ価値しかないわ」

ジュリーは新しく開けた宝石箱を見ながら答える。

「盗んだ宝石を返せ!」

ナサニエルが言い終わらないうちにオーランドが素早い動きを見せた。


ドス

すごい速さで沢山の短剣が私達の足元に刺さる。

20本ほど刺さっているのに、1本分の音しかしなかった……。

それだけの早技で投げたという事だ。


「うるさいよ。静かにしてくれないと、次は心臓を狙うから」

ニヤッと笑うオーランドを見ながら、私達はどうすることもできない。


「でも、面倒はごめんだからそろそろ行こう」

「あら、まだブルーダイヤが見つかってないわ?こんな小物の宝石で満足できるはずないじゃない」

大きなルビーやエメラルドの指輪やペンダントを見ながらため息をついている。


「確かに、ドリーナがこの程度の宝石しか持ってこないとは思わなかったけど、次でいいじゃない?」

「嫌よ!ブルーダイヤがいいの」

と、揉めている二人の様子がいつもと違う事に気がついた。

ジュリーが、すごく大人びている。


「ジュリー。その胸……」

私の指摘にジュリーはニヤリと笑った。

「子供のフリをするために、布を巻いたのよ。ほら、私って背が低いから大人だとバレないし、子供だと、どこでも難なく入れてもらえるのよねー」

そう答えながら、豊満なバストを見せつけるように、ルビーのネックレスを胸の谷間に落とした。


「ブルーダイヤが見つからない。コイツらに見つかってしまったし、もう行こう」

オーランドはそう言いながら、ジュリーの手を引き立ち上がらせた。

そして、私達を見てにっこり笑うと背中を向け、そしてうずたかく積まれた荷物の後ろに回った。

その背後には壁しかなく逃げ道はない。


「待ちなさいよ!」

私達も荷物の裏に行ったが、二人はいない。

「消えましたわ!」

「僕達は幽霊を見たとか…ってそんなはずない。どこかに隠れる場所があるはずだ」

ナサニエルの言葉で、床を蹴ったり、壁を叩いたりした。


「壁の音がおかしい。ここに空間がある!」

ナサニエルは壁や床を撫でるようにして何かを探している。

「どこかにスイッチが……あった!」

床の下の方に、見た目にはわかりにくい突起があり、それを押すと、壁が回転ドアのように開いた。


「中は危険かもしれないし、他にも武器を持っているかもしれない」

ナサニエルは警戒している。

「でも追いかけないといけませんわ」

そう言ってミランダが一番に壁の中に入っていったので私達も追いかける。

通路は細かったが、屋根から自然光が入る作りとなっており、少し明るい。


「大昔は領主館だったと聞いてたけど。きっとその時代の名残ね」

私達は、どこに進めばいいかわからずに闇雲に進んだ。

細い通路の中には、階段が多数あり、登ったり降りたり、はたまた複数の曲がり角を曲がったりした。


「クネクネしてて歩きにくい。今どのあたりなのかしら?」

「もしかして、これってどこに通じるのか、リーザもわかりませんの?」

「わからないけど、どこかには繋がっていると思うわ」

さらに歩くと、前方が少し明るくなってきた。

人の話し声も聞こえてくる。


「沢山の人の声がするわ」

「先ほどの貴族達がいた祝会場かな?」

「それとも、あの二人の仲間が沢山待機しているかだね」

私達はゆっくりと物音を立てないようにした。


ドアが開いている。

あの二人はきっとここから出たのだろう。

そう思って恐る恐る覗いたら、そこは貴族達が沢山いた集会場ではなかった。


その部屋は、大昔のワインセラーのようで、沢山の棚や仕切りがあり、奥まで続いている。

ただし、今立っている場所の棚には空のワインボトルが並べられていた。


棚に隠れながら辺りを見回すと、特に明るい方に沢山の人がいた。

それは赤や青のブレスレットをした移民の学生達だった。


「見てください。学生達の前にヘイリーが立ってます。それ以外にも3人の男がいますよ」

「ナサニエルは背が高いから見えるかもしれないけど、私達には無理よ。声は聞こえるけど」

「リーザ、それで小声のつもりですの?ここは洞窟のようになってますから想像以上に響きますのよ?」

ミランダに指摘されて、少しムッとする。

「わかりました」

「二人とも静かに。話が聞こえません」

ナサニエルは私達の言い合いを遮って聞き耳をたてる。


「成績優秀者の皆様。今日は、半年に一度の日です。まずは、ブレスレットの色ごとに分かれた後、お祝いのスパークリングワインを皆で飲みましょう!その後は馬車で、少し離れた会場に用意してある『成績優秀者祝賀会』に行ってから、いよいよお楽しみのアフターパーティーです」

ヘイリーのスピーチに歓声が上がる。


するとヘイリーの周りにいる男達が、封の開いた瓶を手に持ち、ワイングラスに注ぎ始めた。


「僕が思うに、既に開いているって事は、アレに薬が仕込まれているんじゃない?」

「薬ってなんだと思うのよ?」

「わたくしは睡眠薬だと思いますわ。馬車に乗ったあたりで効いてくるはずですわ。こんなに沢山の眠った人間を運ぶなんてできませんもの」

「じゃあ、飲むのを阻止しないといけないわね」

「リーザ、何か考えが?」

ミランダに聞かれて、私はニヤッと笑って、二人にある物を握らせる。

私が渡した物を見た二人は驚いてこちらを見た。



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