表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/68

探していたもの

本日2回目の投稿です

「じゃあ今から」

と言いかけたところで、ナサニエルが慌てて私の口を手で塞いだ。

「静かに。誰か来る」

私達は、息を潜めて四阿のベンチの背もたれから、外を覗く。


すると、一組の男女が歩いてきた。

服装からして貴族だろうが、なんだか不自然な二人組なのだ。

女性のドレスは少し大きくて引きずっている。

払い下げのドレスでも着ているのかと思ったけど、見た感じ新しいので違うだろう。

なんだろう?あの歩き方、見た事がある。

どこで?昨日の舞踏会?


あーわからない。

頭の中で該当する人物を考えている間にも、二人は人のいない事を確認して、礼拝堂の裏口のドアノブに手をかけた。

そこはいつも閉まっているからここには誰もいないのに知らないのかしら?


尚も観察していると、女性は気分が悪そうにかがみ込んだ。

女性の背中でドアノブを隠し、その隙に男性がピッキングしてドアを開けた。

そして二人は辺りを警戒しながら中に入って行った。


ドアが閉まったのを確認して、私達は顔を見合わせた。

「あの二人がこの謎の取引に関わってるわよね?」

思わず心の声が出てしまった。

「僕もそう思う」

「わたくしもよ」

3人で立ち上がると、足音を立てないように裏口に走って、全員でドアに耳を当てる。

何も聞こえない。


「何も聞こえないわね」

「そっと入ってみませんこと?」

「武器を持っているかもしれないから、僕が先に行くよ」

「ねえ、ナサニエルより私の方が強いわ。だから私が行く」

「誰が行くかで揉めるより、やはりみんなで行きません事?ここに残される方が不安ですわ。わたくしを知る人に見つかっては困りますもの」


確かにミランダを置いていけない。

「じゃあ一緒に行きましょう。でも、危険な事はしないで」

「わかりましたわ」

そう返事をしながらも、ミランダの顔は好奇心に満ちている。


裏口のドアを開けて、物音がしないようにゆっくり進んだ。

まず、倉庫の扉を開ける。

何もない。

次に、一度も入った事のない執務室のドアを開けた。

ここにも何もないし、荒らされてもいない。


礼拝堂のあるこの建物は、今日は利用予定がない。

何故ここに入ったのだろう?

礼拝堂を見ようか、それとも別館に行こうかと考えていると、別館の方から物音がする。

私達は顔を見合わせると、そっと別館に続く廊下を歩いた。


少しずつ声が大きく聞こえるようになってきたので、会話の内容が聞き取れそうだ。

見つかっては困るので、会話が聞き取れる位置で立ち止まるが、いまいち何を話しているかわからない。

「これ、サラバンド語だわ」

ミランダが呟いた。

「なんて言っているの?」

その質問に、ミランダは目を瞑ってじっと聞き耳をたてる。


「えっと『集合場所は自習室だよね?』と『そうだけどもっと後だよ』ともう一人が答えてますわ!」

「その会話の内容怪しい。犯人かもしれないね」

ナサニエルの言葉に、私は頷くと、そっと曲がり角から、別館の方を覗いた。 


「それでは相手にみつかりますわ」

ミランダはそう言うと、ポケットから手鏡を出して、角度をつけてかざす。

すると、そこに映っていたのは、移民として移住してきて、こちらで教育を受けているであろう学生数人だった。


「あの子達が犯行に関与しているの?」

小声で呟くとナサニエルは首を振った。

「彼らの手首を見てください。赤いブレスレットに、青いブレスレット……これってもしかして」

そう言われたが何のことかわからない。

「あのブレスレットをしている子は、まだこの国に慣れていない子だから、チャリティーDAYでは、奉仕する側ではなくて受ける側になるのよ。毎年の恒例よ」

「色に違いはあるのですか?」

「いつも勉強などを頑張っている子は特別に、赤や青などの高価なブレスレットがもらえるの。それ以外の子は、白いリボンよ」


「色付きの高価なブレスレットですか……。でもアレは、多分、鍵がないと外せないタイプの物ですよ」

「そうなの?そんなに頑丈な物なの?」

「気がつきませんか?きっと彼らが『今日15時に出荷される生き物』なんですよ!」

ナサニエルの言葉が信じられずに、私は彼らを鏡越しに見ていると、どこかに行ってしまった。


「では、人身売買ですの?そんなのおかしいですわ!」

ミランダの言葉には答えずに、私は今までの学校生活を思い返してみる。

出稼ぎ目的などで移住してきた子供達も、18歳までは教育を受けないといけないので、否が応でも、この国に入国した者はこの学校に通学してきていた。


でも、一定期間が経過すると、いなくなる子供がいる。

この街から逃げ出して、よその街で働いているのか、はたまた母国に帰ったのかと思っていた。

そう考えていたのは私だけではなかった。

この街の人みんなが「移民の子供は定着が難しい」と嘆いていた。


でも、それは自らの意思でいなくなったわけではなく、どこかに売り飛ばされているとしたら?

それにヘイリーが関わっているとしたら?

どこかにヒントがないものか……。

昨日聞いた会話を思い出せ。


「奴らは確か、献上品が5で青、受注品は赤で10、オークション品が黄色で10、規格外が緑で30ほどって言っていたわ。規格外は夜間、それ以外は15時に出発っていってた。もしも彼らが『出荷品』なら、その事を彼らは知っているのかしら?」

「あの様子なら知らないだろう。彼らはどこから入ってきたんだ?」

「わからないわ。この先に、彼らが放課後特別授業を受けている教室があるのよ。そこに彼ら専用の出入り口があるのかもしれないわ」

「これで、何を阻止すればいいのかわかりましたわね。まず、先ほどの怪しげな二人組を探さないといけませんわね」

ミランダの言葉に頷く。

そして、別館を捜索したが何も見つからなかった。


次は礼拝堂。しかしここにも何もなかった。

ここから本館に行くには2階の渡り廊下を通らないといけないので2階に行く。

そして、本館に行くと、廊下には机と椅子が沢山置かれていた。

「本館は今日、貴族達の休憩室や、ドリーナの控え室になっているし、各クラブの荷物などがもともと置いてあったから、本館の2階はぐちゃぐちゃね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ