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次の任務

しばらくは、路地を縫うようにして馬車は進む。

そして、隠れ家へと到着した。

私達は着替えていつもの服装へと戻った。

「全身茶色よりは、ドレスの方が素敵でしたのに」

ミランダは私をまじまじと見てそう言ったが気にしない。

あの現実離れした舞踏会での事を忘れて冷静になりたいのだ。


椅子に座って熱い紅茶を一口飲む。

やっといつもの自分に戻れた気分だ。

そこで、私が見聞きした事をみんなに伝えた。

「なるほど。ではハイヤリートで違法に育てている何かを明日の15時に移送するのですね」

私の言葉を復唱しながら、アーネスト伯父さんは手紙を書いた。

そして隠れ家で飼われているフクロウの足に手紙をつけると、夜の暗闇にフクロウを放った。


手紙の最後に、会合に参加していた数人の貴族の顔を目撃したので、こちらでも探すと書いたようだ。

これが、二つ目の任務ということね。


「仕入れ、輸送、取引、飼育と4つの役割があるという事は、どこかで捕まえた生き物を秘密裏に育てて、売り捌いているって事です。しかも、私達が住んでいるハイヤリートで」

アーネスト伯父さんは苦々しそうにそう言った。

「秘密裏に育てているという事は、小さな生き物ですよね?じゃないと難しいですよ」

ナサニエルの言葉に私達はうーんと唸った。

全く想像がつかない。


「あの女性の声、どこかで聞いた事あるのよね。ドリーナのチラシを持っていたから、この街の人である事は確かなんだけど。黒髪でしかもオーケストラに紛れ込む事ができる人って…思い浮かばないのよね」

「オーケストラに紛れ込む事ができるという事は、それなりに楽器が演奏できて、しかもコネがあるという事ですわよね?」

ミランダの言った事に該当する人物を想像してみるけど思い浮かばない。


「輸送用の馬車の到着時間はわからないが、出発時間は15時。ギブソン侯爵様からの招待を勝ち取る予定のようだが、多分、当日は歌姫を見に沢山の貴族が来るだろう」

アーネスト伯父さんの言葉に私達はどうすればいいのか話し合った。

そして、野盗を避けるために早朝出発する事になったので、今日はこの隠れ家で眠るそうだ。

明日の事を考えたって仕方がないけど、できる事はやろう。

そう決めて眠った。


早朝、眠い目を擦りながら、国境まで行く予定の行商人の馬車に乗せてもらう。

今日何が起きようも最善を尽くすと決めたのだから、他の事は考えないでおこう。

あくびをしながら外を眺める。

たった1日で世界が一変した気がする。

平和だと思っていたハイヤリートが、危険な街かもしれないと知った。


チャリティーDAY2日目。

昨日と同じように、髪の毛をハーフアップにして、髪飾りをつけ、昨日同様エプロンをつけた。

今日はジュリーとオーランドの兄妹は来れないから、アンナとハンナ、メリッサ、ミランダと私の5人で頑張る。

「おはよう」

レモネードのブースに行くと、すでにみんなが準備をしていた。

一昨日までと違ってみんな自信に溢れた顔をしている。

会計クラブのブースがこんなに賑わうなんて今までなかったからだろう。


今日は13時までレモネードブースを開いて、その後はオークションが始まる。

そして、15時から歌姫ドリーナのライブ。

その15時、違法な生き物を乗せた馬車がこの街を出る。

それまでに馬車を見つけなきゃ。

なんとしても不正を暴かないと。

しかも、夕方からアフターパーティーもある。


昨日、アーネスト叔父さんが、シークレットサービスはこの問題にどこまで関与するかわからないと言っていた。

これを逃すと犯罪者を捕まえる機会はないかもしれない。

街のためにも私達で犯人を捕まえなきゃ。


周りに気を配りながらレモネードの販売を始めた。

アフターパーティーのせいか、それともライブを楽しみにしている女の子が多いせいだろうか。

いつもよりドレスアップした人が多い。


「リーザ、14時からオークションよ」

ハンナが声をかけてくれる。

「わかった……でも、本当にやらなきゃダメ?」

「当たり前よ。会計クラブはオークションに、メリッサとリーザを出すって決めたんだから」

アンナの言葉に肩を落とす。

目立つのは好きじゃない。でも、仕方がないよね……。

これも昨日、多数決で決まった事だもの。


オークションも大切だけど、今は怪しい人と怪しい馬車を探さなきゃいけない。

わかっている事は、ギブソン侯爵様のお誘いでハイヤリートに来る貴族の中に、闇取引を行なっている貴族が紛れ込んでいるという事だ。

多分、ダーク様も来るだろう。

バッチリ顔を見られているナサニエルは、今日はメガネをかけて、髪色を茶色にしている。

昨日の貴族を探すには、変装しないといけないからね。


私は、フルメイクに、髪色を変えていたから、大丈夫。

正体がバレる確率が限りなく低い事は、ミランダとアーネスト伯父さんからお墨付きをもらったもの。


怪しい馬車や挙動不審な人がいないか辺りを見回す。

しかし、歌姫ドリーナの公演の準備で、急遽、舞台を大きくする工事が始まっていた。

それに加えて、飾り付けが必要なようで、早朝から沢山の人や、荷馬車が学校の敷地に入っていた。


こんな状態で、悪人を捕まえられるか不安だ。

しかし、無常にも、10時になったので、チャリティーDAY2日目が始まった。


オークションの後に同じ舞台で歌姫ドリーナの公演が始まる。

この大きな舞台の上を歩かなきゃいけない。

違法取引の馬車を探す事と、オークションの事を考えるとお腹が痛くなってくる。



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