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秘密の会合を盗み見する

本日2回目の投稿となります

その女性は、そのまま、北側の書庫へと入っていった。

「絶対にあの人だわ」

私の呟きにナサニエルも頷いた。

柱時計を見たら、時間は10時。


とりあえず、隣の部屋に入ってみる。

そこは、リネン室だった。

シーツ類や毛布、それから使用人のお仕着せもある。


隣の部屋の壁に耳を当てたが、当然だが他の部屋の音は聞こえない。

「あの部屋の話をどうやって探るかだ」

「そうね、この部屋の天井に通気口が付いているわ。あの中に入って、隣の部屋の上まで行けないかしら?」

「それは可能だけど、ドレスやタキシードが埃だらけになってしまうから無理だな」

「じゃあ脱げばいいじゃない」

私の言葉にナサニエルは驚く。

「下着姿で通気口に入るのか?」

「それしかないじゃない。下着姿って言っても、補正のためのコルセットに、かぼちゃパンツを履いているから、大丈夫。全くセクシーさはないから」


「そういう問題じゃない!嫁入り前のレディなんだぞ?」

「さっきの黒いドレスの女性よりは露出が少ないわよ。私は通気口に入るから」

「ダメだ!危険すぎるよ」

「大丈夫。私は、あの父に鍛えられたのよ。ナサニエルよりは適任だわ」

「いや、君にそんな事はさせられない!僕が行くよ」

「何いってるの。この通気口見てよ。ナサニエルじゃ入らないわ」

二人で天井を見上げた。


通気口の入り口は私が体をすくめてやっと通れるくらいだ。

「確かに。リーザじゃないと入らないかもしれない」

「ね?そうと決まれば、この部屋に誰も入らないようにナサニエルはここにいて」

そう言ってドレスを脱ごうとすると、ナサニエルはリネン室にあったメイドのお仕着せを一着取って私に渡してくれた。

「下着姿は困るから、これを着て」

そう言って後ろを向いてくれたので、急いでドレスからお仕着せに着替える。

髪の毛が汚れないように手元にあった枕カバーを被った。


「くれぐれもドレスは丁寧に扱ってね」

「……わかった」

ナサニエルは渋々納得してくれた。

「じゃあ、天井の通気口を開けるから、肩貸して」

「肩?」

「まあいいから、通気口の下に立って動かないでね」

そう伝えて、私は壁際に移動する。

そこから勢いをつけてナサニエルに向かって走り、地面を蹴って、その肩に乗った。

「上は向かないでね」

そう伝えると、通気口を塞いでいる木製のハッチを押し開けた。

そして、縁につかまると、腕の力で懸垂をするように体を持ち上げる。

そうやって中に入ると、ほふく前進できるくらいのスペースはあった。


大丈夫。これで隣の部屋に行ける。

音を立てないように慎重に進む。目指すは、30メートルほど先に見える少し明るい部分。

あそこに通気口があるのは明白だ。

部屋の灯りが、通気口の中までうっすらと照らしており、まるで夜の街灯のようにそこだけぼんやりと明るい。

そこに行き、そっと室内を覗く。


すると、そこには先ほど見たベールを被った女性と、数人の男性が見える。

その中にはダーク様がいる!

全員で、10人。

私は声を押し殺して下の様子を覗く。

「最終確認だ」

男性の声がする。

「商品は、予定通り出来上がっただろうな?」

「ええ。予約通りよ。注文通り、献上品が五。受注品が十。オークション品が十。条件に満たなかったモノが30ほどあるわ」

ベールの女性が答えた。この話し方、どこかで聞いたことあるけど、わからない。

何か商品の売却の相談のようだ。


「移動の馬車は?」

「手配済みだ」

上から見ているため、男性陣の顔はわからない。

「では、献上品、受注品、オークション品は、15時の馬車、その他は深夜の荷馬車で移動だ」

「前回、その移動の仕方はやめようと話し合ったよな?献上品の馬車が出ちまった後、条件外のヤツが『妹が馬車で連れて行かれた』と大騒ぎしたじゃないか」

少し気象の荒そうな男性は特徴的なしゃがれ声だった。


「言われてみればそうだったな」

「だから、兄弟を離さないか、または同じ時間に出発するかどちらかだと決めたじゃないか」

しゃがれ声の男性はそう主張している。

動物か何かの取引先かしら?


「あの、時間の件なんだけど、まずい事になったの。明日、急遽ドリーナ嬢の公演がある事になったのよ」

ベールの女性の一言で、全員がざわつく。

「それはどう言う事だ?」

「歌姫の公演を見に沢山の人が押し寄せる中で、馬車を出すのは無理だわ」

ベールの女性の言葉に私は耳を疑った。


「……明日は人の往来が増えそうだな」

この取引は、ハイアリートで行われるの?

ドリーナの公演の事を気にしていると言う事は、学校の近辺で行われるという事ね。

「ドリーナの公演は何時からだ?」

「15時よ」

女性は今日配られたチラシをテーブルに置いた。


あのチラシを持っているという事は、この人も今日、ハイヤリートにいたと言うことよね。

どんな人なんだろう。

「ギブソン侯爵家の主催か。それなら、他の貴族も引き連れてやってくるだろう。面倒だな」


「確かにな。でも、仕方のない事だ。商品の輸送馬車の出発時間を決めよう」

「そうだな。全て予定通り出発させよう。その時間は公演中だから、人の往来はほとんどないだろう」

「ドリーナの公演となれば沢山の人が押し寄せる。彼女の人気はすごいから、殺害予告まで出てるんだろ?そのせいで検問がいつもより多いと思うぞ。全部深夜にしてはどうかな?」


「受注品とオークション品は納品時間が決まっているし、夜盗に襲われたら困る。大切な商品だからな。出発は明るいうちにしないと」

「じゃあ、この中の数人は、ギブソンの招待を勝ち取れ。馬車を出せなかった場合、最悪、荷物として運んでもらわないといけないからな」

「俺達の馬車でか?どうやって?」

「考えがあるから、そう焦るな。もしもの場合に備えてだよ」


この会話からすると、違法な動物の取引かしら?

狼なんかは飼育は禁止されているから、確かに移動は大変だけど……。

でも数が多いから、狼をたくさん飼えるところはハイヤリートにはないわ。

今までの会話を総合すると、小さくてわりかしおとなしい動物ね。


「いつもの通り、献上品は青、受注品は赤、オークション品は黄色、規格外は緑だな」

「その準備は終わっているわ」

「では、最後に。分配について。仕入れ、輸送、取次はそれぞれ20%、飼育は40%で間違いないな?」

それについて全員が返事をした。

「飼育が一番大変だもんな。時間と金がかかる」

「でも、飼育は名声も得られるぞ」

「国内で、数箇所の飼育地域があるが、ハイヤリートの品は極上だと言われて高値で取引されている。飼育のおかげだな」

男性達は口々に褒めた。

やはりハイヤリートで何かを育てているんだわ。

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