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黒髪の女性が見つかる

「星の動きを予想する占い師とか?」

「そんな怪しげな人は高位貴族のパーティーには呼ばれませんよ」

ナサニエルがクスッと笑う。

私はバカにされたようでちょっとムッとするが、気を取り直してもう一度辺りを見回すが、全くわからない。

「もう一度考えを整理するために何か飲みましょう」

「わかりました。アルコールが入っていないのはバンケットコーナーにしかありませんから、そちらに行きましょう」

少しでも離れた位置からターゲットを探すために、壁際を歩くが、もう少しでバンケットコーナーというところでナサニエルが立ち止まった。


「リーザ、沢山の星が何を指すのかわかったかもしれません」

「本当に?」

思いの外大きな声が出てしまい、自分で驚いて周りを見回す。

しかし、会場では談笑している人が多く、周りの様子には気にも留めないようなので、注目されていなくてホッとする。


「いいですか、この会場は見ての通り等間隔で石柱が配置されています」

「そうね。これが高い天井を支えているんでしょうね」

私は目の前にある石柱を見上げた。

「見るべきなのは上より下です」

ナサニエルの言葉に下を見た。

「ほら、膝くらいの位置に小さな星が描かれている」

そう言われて膝くらいの位置を見た。確かに言われなければわからないくらい、小さな星のマークが描かれている。

「星が書いてあるのはこの柱だけ?」

「いえ、今歩いてきた柱に描かれていますよ」

ナサニエルは私よりも視野が広いし、細やかなことに気づいているんだ。やはり大きな商会で若くして重要ポストについているだけある。


「あの手紙の『沢山の星から本物を見つけられるだろうか?』とはこの事なのかしら?」

「そうかもしれませんし違うかもしれません。ここまで見てきた柱の星の数はどれもバラバラです」

「ランダムって事よね?どんな意味かしら?」

「わからないので、なるべく多くの柱を見に行きましょう」


この後、私たちは会場中の柱を見て回った。その結果、このダンスホールの柱にだけ、星が描かれていた。

しかも数はバラバラ。


私たちは意味を考えるために、ダンスホールを見下ろせる渡り廊下で相談する事にした。

ここは人目につくのに、ほとんど誰もいないからダンスホールの様子を観察するにはちょうどいい場所だ。


私たちの視線の先には、沢山のカップルがダンスを踊っている。黒髪の方は本当にいないのね。

それにしても、女性のドレスって、くるくる回ると綺麗に広がって、上から見ると沢山の花が咲いているみたい。

沢山の人が踊っているのでほとんど床が見えないが、ある事に気がついた。


「ねえ!ホールの真ん中を見て!大きな十二芒星が描かれている」

「……本当だ。人が多すぎてわからなかったけど、確かにそうだ」

「もしかしてあの手紙の『その真実は10数えると見えてくる』の10ってこの星のマークの10のところって意味かしら?」

「すごい、リーザ。冴えているよ。きっと十時の方向って事だ。ただ、問題は、どこを0時と見るかだ」

「単純に北とか?」

「この会場の北ってどっちかわかる?」

「自分で言ってなんだけど、わからないかな」

ナサニエルに指摘された通り、北がどっちかわからない。自分で言ったが、何も答えが導き出せず落胆する。

その間も、ナサニエルの真剣な眼差しは下を見続けていた。

その横顔はキリッとして、見惚れてしまいそうになる。

そんな自分に気がついて、私も下をじっと見た。


「リーザ、オーケストラの中に黒髪の女性がいる」

「本当だ!気がつかなかったわ」

「上から見ないと気がつかないかもしれないね」

「じゃあ、オーケストラを0時の方向と考えたらどうかしら?」

「なるほど、じゃあ十時の方向には…柱がある。行ってみよう」


もう一度ホールに降りて柱を見た。

「この星の配置、どっかで見た事あるのよね。えーっと。うーん。わかった!図書座。星座よ」

「図書座?またマイナーな星座ですね。何でこれを知っているんですか?」

「図書座は何に数日しか見れないレア星座なのよ。珍しいから覚えていたの。町外れの我が家は星座が綺麗に見えるのよ」

「なるほどね。図書座というとこは、書庫に行けばいいのかもしれない」

「じゃあ、書庫を探しましょ?」

「書庫は大抵、建物の北側にありますよ。日の光から本を守るためにね」

「それは職業柄知っているの?」

「当然ですよ、!沢山の品物を購入頂くために、インテリアのアドバスもしています」

さすが、大きな商会に勤めているだけあるわ。


そんな話をしている時、演奏中のオーケストラの人混みの中から、あの黒髪の女性がそっと席を立った。

「ナサニエル!あの人、オーケストラから離れたわ」

「書庫を探すよりも、黒髪の女性を追おう」

そっと後をつけていくと、女性は人気の少ない2階のメイクルームに入った。

そして、出てきた時には、オーケストラの制服とは違う服を着ていた。

頭からベールを被り、真っ黒なドレスを纏っていた。

ベールのせいで髪の色も瞳の色も不明だ。

まるで、喪に伏している淑女のような服装だが、ドレスはチューブトップで背中は大きく開いている。

下手すれば、お尻が見えるかもしれない。

どんな女性かはわからないが、肩甲骨のあたりに、炎のようなタトゥーか、またはアザがある。

離れているからどちらかはわからないけど。特徴的だ。


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