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舞踏会に潜入する

体調不良でまたもや間が開いてしまいすいません

そう考えながら片付けを済ませて、今日集まった資金を教会の事務局に預けて、急いでアーネスト伯父さんの家に向かった。

出発の時間とほぼ同時だったので、雑貨店には入らずにそのまま馬車に乗る。


馬車は、尾行を避けるために、乗り継ぎを繰り返すそうだ。

まずはアーネスト伯父さんの馬車で街を出る。

まずは、いつも伯父さんが仕入れをしている業者さんに馬車を預けて辻馬車に乗り換える。

馬車の中では、基本的に食べ物の話しかしてはいけないと言われたので、終始、果物の話をみんなでしていた。


馬車の中で無言だと、御者に不審がられるし、普段の話だと、もしも何かあったら、特定されるかもしれないからだ。


何回か辻馬車を乗り継いでから隠れ家に入った。


まずはメイクと髪型を大きく変えた。

ウィッグは不自然だから、地毛にラメを散りばめて、髪色を変え、ボリュームを出していく。

ヘアメイクが完成すると、タイラーで試着したドレスを着る。

赤系統のオーガンジーの生地の上に、きめ細かな柄の絹のレースを重ねてあるドレスで、試着した時は気が付かなかったが、光の当たり具合で色が変わって見える。

それにホルダーネックなのでホールド感もあり、着心地が良い。


「2人ともお似合いですよ」

ナサニエルが褒めてくれる。

そんなナサニエルも、金髪の混ざったダークブラウンの髪を真ん中より少し右側で分けて、整髪剤で大きく崩れないようにしていた。

執事とか侍従にしては、すごくオーラがある。

きっとそのヘーゼルナッツ色の瞳のせいね。


「あまり時間がありませんよ急いでください」

貴族の屋敷にいるようなかしこまった御者服のアーネスト伯父さんが、そう言いながらあの手紙をもう一度私たちに見せてくれた。


『最後のパーティーで星を探さねば真実は見えない。

沢山の星から本物を見つけられるだろうか。

黒く光るサファイアの秘め事は彼女と共にあらん。

その真実は10数えると見えてくる。

油断をせずにその真実を教えたし。

愛をこめて

フリーフォール』


「ミッションは、『黒髪でサファイアのような瞳をした女性が午後10時にパーティー会場のどこかの部屋での秘密の会合に出席する。フリーフォール伯爵としてパーティーに潜入して、秘密の会合の参加メンバーと、その内容を探るように』という指示書です」

「わかったわ。その女性を探して、秘密の会合の内容を探るのね」

簡単だとばかりに答えると、ミランダがため息を吐いた。

「リーザは簡単に考えておりますが……黒髪の女性は少ないですけど、何人いるかわかりませんし。他にヒントは?」


「そうですね。うーん。最初の一文『星を探さなければ真実は見えない』とありますから、きっと星に関するアクセサリーをつけているものと推測されます。こういう司令書の解釈をするのは実は苦手でして……。アーサーは得意なんですけどね」

アーネスト伯父さんは難しい顔をして手紙をまじまじと眺めた。


「星のアクセサリーですわね。気をつけて見ておきますわ」

その横で、私は何度も手紙の内容を読み返して、なんとか意味を理解しようとした。



「さあ、参りましょう」

執事の服を着たナサニエルに馬車のドアを開けてもらい、中に乗り込む。

今日乗った馬車は重厚感はあるが窓にはカーテンがあり中は見えない。

カーテンの隙間から外を見たいけれど、またしてもミランダにマナーを指摘されてブスッとした顔になってしまう。


ほとんど来たことがない第二都市の夜の景色を見たくてううずうずしていると、またしてもミランダに注意された。

そんな私の状況を無視して大きな羽根で作られた扇を渡される。

「リーザはすぐに表情に出ますから、基本的に顔を隠しておいて頂きたいですわ」

そう言って笑うミランダは本当に生粋の育ちの良いお嬢様っていう感じだ。

それに比べて私は、羊に擬態したナサニエルとなんら変わらないくらいに、異質なもののように感じてしまう。

それがまた表情に出てしまわないように笑顔を作る。

「私達は、誰も名前を知らない田舎の貴族ですわ。ですから、粗相や失敗しても悪目立ちさえしなければ大丈夫ですわ」

ミランダは余裕の顔でそう言った。


馬車の速度が落ちていく。

「さあ、そろそろ到着ですわ。リーザお姉様、笑顔をお忘れなく」

「あっ。うん…じゃなくて、わかりましたわ」

ぎこちない返事の後、馬車は停まった。


いよいよだ。

私たちは、笑顔で濃紺の絨毯の上に降り立った。

毛足が長い絨毯は、今の私のように、フワフワとしている。


ミランダから言われていたように、内容があるようでない、「今夜は緊張しますわ」とか「大丈夫ですわ」などと声を掛け合いながらゆっくりと進む。


入り口で招待状を渡す時、手が震えた。

『何故伯爵はいないんだ』とか聞かれるかと心配したけど、何も言われずに通された。

あードキドキした。


会場に入ると、見たこともない高い天井と、キラキラと輝くデザイン性の高いシャンデリアがまず飛び込んできた。


すごーい!

「ここは邪魔ですから、隣のサロンに向かいますわよ」

ミランダに小声で囁かれて、ご令嬢のフリをしなければと思い、にっこりと笑い頷く。


しかしすごい人の数。

何人いるのかしら?

もしや1000人くらい?


今まで貴族は、シルヴァ嬢達しかみた事がなかった。

今回の舞踏会は高位貴族か、高位貴族から招待された人しか入れない。

つまり、シルヴァ嬢のような「子爵家の娘」では、高位貴族から招待されないと来る事ができないパーティーらしいのだ。

だから、着飾り具合もすごい。


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