パーティーはどうやって参加する?
去年は……ダレルと一緒に行く約束をしていたのに、直前で『行けなくなった』と言われたのだ。
だから、メリッサと一緒に行ったら、ダレルは既に会場にいた。
しかも相手はヘイリーだった。
悲しかったけど、その気持ちを隠して、何事もないように『なんでヘイリーと行くって言ってくれなかったの?』
と聞いた。すると、
『断れなかったんだ。うちの牧場に出資してくれているから。でも本当の事を、リーザに言えなくて。でも、俺とリーザのなかに隠し事は良くなかったと反省したよ』
と言われたのだ。
嫌な思い出だわ。
今年はミランダと参加しよう。
流石に、この会場をうろついている、あの怪しい男達はいないよね?
サプライズのニュースをミランダとメリッサに伝えなきゃ。
そう思ってブースの方に向かおうとした時だった。
「リーザ!」
人混みで誰かに呼ばれた。
周りを見回すと、離れた所にダレルがいることに気がついた。
目が合うと、もう一度、「リーザ!」と呼ぶ。
何だか気まずいけど、目が合っているので立ち去ることも出来ない。
そうこうしているうちに、ダレルは、楽しそうに歩く人の群れの間を抜けて来た。
「リーザ、昨日はごめん」
息を切らして、私の前までくると、私の目を見た。
「気にして無いから」
そう。私は気にしていない。でも、巻き添えを喰った友人達は気にしているわ。
だからと言って、ダレルに謝ってもらうのも違う。
「いつもと全く違って、リーザだって初めは気が付かなかったよ」
そう言って、ダレルは私の髪を触る。
いつもお団子頭にしかしないけれど、今日はミランダが嫌がる私の髪をハーフアップにして、布で作った花を飾りとしてつけている。
それに、うっすらメイクをしたのだ。
「今日はすごく綺麗だ」
外見を褒められたことが皆無に等しいので、何と答えていいかわからない。
その代わりに心臓の音がうるさい。
まるで代わりに返事をしているようだ。
「髪型が違うと別人だね。すごく似合ってる。髪にゴミがついてるよ」
そう言って、肩からゴミを取ってくれた。
顔が赤くなってしまったんじゃないかと思って、下を向いた。
早く鎮まれ、心臓!
気がつかれないように深く息を吸って、何事もないような顔を作って、ダレルをみる。
「ありがとう、、ダレルは毎年恒例の馬車の洗車?」
シャツのボタンを外して、腕捲りをしている。
そのため、胸板が見えるし、二の腕の筋肉が綺麗に引き締まっているのがわかって、すごくフェロモンが漂う。
だから、女の子達がダレルに熱い視線を送っているのがすぐにわかった。
「そうだよ。汚れるし結構大変だよ。ねえ、明日のパーティーだけど、まだ誰とも約束していないなら。一緒に行かない?」
「ダレルはまだ誰とも約束を?」
「してないよ。去年は本当に悪かった。俺もリーザと行きたかったから、今年こそリーザを誘おうと思って」
じっと視線を合わせて話すダレルにドキドキするけど、それを悟られないようにしないと。
「…ありがとう」
喜んで無い風に答えたけど、本当はすごく嬉しい!
「じゃあ、明日は迎えに行くから」
そう言って、『ダンスの申し込みカード』をくれた。
このカードは、アフターパーティーでダンスをしたい女の子に事前に渡すのが普通。
そして、暗黙のルールとして、カードを渡せるのは三人まで。
あくまでダンスに誘うカードだけれど、それでもすごく嬉しい!
でも、嬉しさを押し殺して平静を装う。
「わかったわ。じゃあ明日」
そう答えて、ダレルから離れる。
そうじゃないと、顔から笑顔が溢れてしまう。平常心を保った表情は難しい。
急いで木陰に隠れて、ニヤニヤしそうになるのを両手で頬を押さえて口元が弛まないように気をつける。
こんな顔で戻ったら、メリッサから何を言われるかわからない。
何度も深呼吸をして、なるべく冷静になろうとする。
目を瞑って、レモネードと花のブローチの事を考える。
早く終わらせなきゃ。
それからミランダの安全も確保しないと。




