表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/68

ここにも怪しい人がいる

周りを見ると、他のブースよりも私達のお店が大人気だ。

「明日の販売分が無くなっちゃうから、今日は14時で終わろう?さあ、リーザとミランダも宣伝してきてよ。ずっとレモネード作りながら、ブローチの制作も見ていたら疲れるでしょ?」

メリッサがそう言ってくれた。


「私はレモネード作りが楽しいのでここがいいですわ」

そう言った後、ニコニコしながら私にだけ聞こえる声で囁く。

「今日は沢山の人がいらしているのですよね?でしたら、ここで誰にも見られずに作業していた方が安全ですわね」

「普段は無警戒でいるのにどうしたの?」

私も小さな声で聞き返す。

「何だか、普通の雰囲気ではない男性が数人いますの。例えば、ほら、ここから50メートルくらい離れたベンチ。勢いよく見てはいけませんわ」

私は探し物をする動きをしながら、そっとベンチの方を盗み見る。


今日は近隣の街からも沢山の人がいて、歩いている人混みの隙間からチラリと見えた。

確かに、中年の男性が険しい顔をして1人で座っている。

私は急いで後ろを向いた。

「見たわ。確かに様子がおかしいわね」

「その他にも何人もの不審な男性が歩いておりますの。ですから、私は隠れてありますわ」


2人でボソボソと話していたのでメリッサが不思議そうにこちらを見る。

「どうしたの?2人とも交代よ?」

楽しそうにメリッサが追い立てるので、笑顔でそちらを向いた。

「ミランダはレモネード作りが楽しいみたいだし、私だけ交代よ」

メリッサの持っている『レモネードスタンド』と書いた看板を受け取ると、もう一度不自然なくらいに楽しそうにして見せる。

「私も宣伝してくるわね」

スキップしながらブースから離れるが、目的は周囲の警戒だ。


まず、ベンチの怪しい男の側に行く。

牧場の牧童のような服装だけど、ブーツが特徴的だ。

ブーツの足首のあたりに小さな焼印がある。

何だろう?

人の足元をまじまじと見れないので、楽しそうなフリをして横を通り過ぎた。

どうしよう?

レモネードを売り込もうかな?

そうすれば話しかけられる。

でも、万が一レモネードスタンドに来たらミランダが危険だわ。

迷った挙句、声を掛けない事にした。


迷っていると、男子学生がこちらに向かって歩いてきた。

「あの!」

声をかけられて、私は笑顔でそちらを向く。

「レモネードでしたら、あちらで是非!」

指をさすが、男子学生は何か言いたそうだ。

「何?レモネードの事じゃなくて?」

何かを言うなら早く言って欲しい。

他にもいる怪しい人を見失いそうで、周囲を警戒しながら聞く。

「……嫌。あの……レモネード買いますね」

男子学生はそう言って、結局スタンドの方に向かって行った。


何だったのかしら?

確かあれは、アンナ達と同じクラスの人。

名前は知らないから、何の用事だったのかよくわからないけど、話しかけられて怪しい人から目を離したから、人混みに紛れて結局見失ってしまった。

ブーツに謎の焼印があるか見たかったのに。


気を取り直して、通り過ぎる家族連れや、学生達にレモネードの売り込みのために、声を掛けていく。

そうやって周囲を観察しながら進んでいく。

確かにミランダの言う通り、怪しい人が数人いる。

服装はバラバラ。

共通点はない。

それに、もしかしたらお金持ちであるヘイリーの護衛や、シルヴァ嬢の護衛かもしれない。

人数だけ数えてみると、10人くらいいる。

一体何が起きているのかしら?

しかも、あのアーネスト伯父さんのお店にやって来た怪しい一団達も散らばって会場にいた。

どうしよう。どっちも怪しい。


その時だった。

広場の真ん中に司祭様が台に乗って話し始めた。

「皆様方、本日はチャリティーイベントにお集まりいただきありがとうございます。このイベントは今年で30回目を迎えました。その記念にサプライズを発表します!」

その言葉にみんな集まって来た。


「なんと明日、ここ数年のヘインズ財閥の移民の支援と、長年のこの地域のチャリティーへの貢献が認められ、この地方を治るギブソン侯爵様が、なかなか公演チケットが取れないというドリーナ嬢の公演を手配してくれた」

大歓声が上がる。

ドリーナの公演?びっくりして立ち止まる。

そんな有名な歌姫の公演が田舎町であるだなんて信じられない!!

「ドリーナ!ドリーナ!」

ドリーナを呼ぶコールが起きる。

そんなすごい人が来るなんて信じられない。


「すごいサプライズよね!」

たまたま側にいた友達に話しかけられる。

「そうよね!ありえない」

周りにいた友人達と明日について想像を巡らせる。

「どこで歌うのかしら?」

「まさかオークションを行う舞台?」

「確かに、そこしかないわよね」

「待って。パーティー会場があるじゃない!」


パーティー会場かぁ。

その日は、講堂を全部片付けて大きなホールとして利用する。

チャリティーDAYは2日間あり、1日目はブースでの活動、2日目はブースの活動と並行して寄付のためのオークションがある。

そして、そのチャリティーDAYに参加したクラブは、その後、夕方から行われる『アフターパーティー』に参加できるのだ。


地方の小さな街で社交場も無いので、貴族であろうが平民であろうが、16歳以上の学生であれば、年に一度のパーティー参加するのが普通だ。

在学中でなくても、学生と一緒であれば参加できる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ