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喧嘩の仲裁

「そんなところで喧嘩してたら、みんなどうしていいかわからないよ」

ナサニエルが荷物を持って戻ってきて、止めに入ってくれた。

救世主だ!

「君はなんでここに入ってきているんだ?学生じゃないだろ?」

ダレルが喧嘩腰でナサニエルに言う。

「そうだね、部外者だよ。でも、ここのお嬢さん方から配達を頼まれていたんだよ」

ナサニエルはそう言いながら大きな箱を置いた。

「周り見てる?みんな集まっているよ?」

その言葉にダレルとヘイリーは我に返ったような顔をした。

「君達はゴシップを提供しているだけのようだね」

そう言われてダレルは周りを見回す。


2人の様子を見てニヤニヤしている者や、ヒソヒソと話をしている者もいる。

ヘイリーは我に返ると集まっている野次馬の間を抜けて行ってしまった。

「ヘイリー!」

そう呼びかけて追いかけるが、ダレルと視線が合う。

しかし、申し訳なさそうな顔をしながらもヘイリーを追いかけて行ってしまった。


沢山集まっていた野次馬は、痴話喧嘩を繰り広げていた2人がいなくなったので、ゾロゾロと準備に戻って行った。

しかし、野次馬の中にはシルヴァ嬢達がいた!

思わず目が合ってしまった! 

シルヴァ嬢からも何か言われたらどうしよう?そう思ったけど、何も言わずにわたしたちを睨んで立ち去って行った。

ここで追い討ちをかけるような文句を言われなくてよかった。

ホッと胸を撫で下ろした。


「じゃあ、次の配達があるから」

ナサニエルは、この落ち込んだブースの様子を見て、離れた方がいいと判断したのかもしれない。

「ナサニエル、色々とありがとう。じゃあお仕事頑張って」

と伝えると、馬車に戻って行った。


「みんな、この後……相談が……」

と、まだ残っているオークションについて相談しようとしたけれど、何かを言える雰囲気ではない。

普段、目の敵にされたことがないであろうアンナとハンナが自信を失った顔をしている。

「気にすることありませんわ。美しさって、外見ではありませんのよ」

ミランダはそう言ってみんなを励まそうとしたが、ヘイリーの言葉が刺さったのか、アンナとハンナはエプロンを脱いだ。

「ごめんなさい。今日は一旦帰るわ。また明日」

そう言って、肩を落として帰って行った。

私の巻き添えをくってごめんなさい。

でも、なんて言葉をかけたらいいかわからなくて、「わかったよ。また明日」としか言えなかった。


「オーランド、止めようとしてくれてありがとう。今日はもう準備は終わったから」

メリッサはオーランドにそう言った後、ジュリーを見た。

「あんな言葉を気にせずに、明日もこのエプロンをつけて頑張りましょう?」

2人を気にかけて言葉をかけるって、やっぱりメリッサは大家族の長女なだけある。

「ええ。気にしないわ。また明日ね」

そう言って、綺麗にエプロンを畳むと、ジュリーはオーランドと連れだって帰って行った。


「仲のいい兄弟よね。オーランドはいつも妹を気遣っているわね。私はあんなに兄弟達に付き添ってあげられないわ。……だって沢山いすぎるから、いつも突き放しているわ」

「確かに、メリッサがオーランドと同じことをしていたら、1日48時間あっても足りないわね」

「本当にそうよ!さて、私も帰るわ」

ミランダと私はメリッサの後ろ姿を見送った。


チャリティーDAYのブースには、私とミランダだけが残った。

「名指しで外見の文句を言われると落ち込むわよね。ああやって振る舞っているけど、メリッサも落ち込んだはずよ」

私の言葉にミランダは黙っていた。

「……これで解散しちゃったけど、明日と明後日が本番よ。しかも、オークションに出品する品物は決まっていないわ。どうする?」

「なんとかなりますわ。なんともならなかったら、『ナサニエルとデートできる権利』を勝手に出品いたしましょう。きっと高値になりますわね」

「え?本気?」

その質問にミランダは笑顔を見せるだけで返事はしない。

「まあ考えても仕方ないし、私達は一旦、後片付けをして帰りましょう」

ほとんど飾り付けなどが終わっていたので、最後の仕上げを少しだけして終わりにした。


半分くらいのブースが準備を終えているようだ。

そんな様子を見ながらミランダと歩き出した時、視界の隅に、ヘイリーがコートを着た男性二人組に話しかけられているのが見えた。

その二人組のコートの下には剣を帯同しているように見える。


気になってそちらをみる。

ちょうど話が終わったタイミングだったのか、二人組は馬車に乗ってどこかに行ってしまい、ヘイリーは街の中心部とは反対側の方に向かって歩き出した。

馬車は特徴のない辻馬車に似たものだ。

一瞬危ない人に話しかけられているのかもと思ったけど、どうも違ったようだ。

もしかしたら、ヘイリーの護衛で何か用事を言いつけたのかもしれない。

お金持ちのお嬢様って誘拐とかも心配だろうから大変よね。

その点、単なる庶民である私は平気。

そう考えながら、ふと、前を歩くミランダを見た。

……ここに1人、庶民じゃない人がいた。

今はどこからどう見ても、気取った田舎娘だけどね。


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