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この前のアンケート

本日2回目の投稿です

朝起きると、昨日の話が何もなかったように誰もその話はしなかった。

伯父さんの馬車で学校に向かう。


気もそぞろで授業を終えて、気がつくとランチタイムになっていた。

メリッサとミランダと連れ立って、いつものように外に出る。

そして、ランチをする時の定位置に行くと、すでに、文具屋のハンナとアンナがいた。

「3人とも、新しい部員を獲得したわ。金物屋のオーランドと、妹のジュリーよ」


そう紹介されたオーランドはボサボサなダークブラウンの髪と、眼鏡をかけた冴えない男性だった。

「やあ、よろしく」

愛想よくしているつもりなのだろうが顔が引き攣っている。

ジュリーも一緒に愛想笑いをしたが、その口元からは歯科矯正の器具がのぞいていた。


「オーランドは私達と同じクラスで、ジュリーは一つ下のクラスなの」

アンナは精一杯の笑顔でオーランドを見た。

きっとオーランドに気があるから誘ったんだわ。


「僕は、普段、理学研究クラブに入っているだけど、活動は週に一回だけなんだ。だから、誘われた時、掛け持ちもいいかもしれないと思って」

「そう!歓迎するわ」

メリッサはそう言うと、恥ずかしそうにしているジュリーの方に向いて何か小さな声で話しかけた。

すると、ジュリーはクスッと笑っている。

兄弟が多いメリッサはそうやってジュリーが私達に溶け込みやすいようにしているようだ。


「みんなが集まったところで、アンケート結果を見て欲しいの」

ハンナが集計結果を出した。


集計表を見てみんな渋い顔をする。

アンケートの質問項目は、

『1、チャリティーDAYの日、どこのクラブのブースがお気に入りですか?』

『2、何故、そこがお気に入りですか?』

『3、数独は利用したいですか?』

『4、チャリティーオークションで入札をした事がある物品はなんですか?』

というものだ。

アンケートを配ったのは、学生や街の人だ。


集計結果は、やはりとしか言いようがなかった。

『毎年寄付しているチーム』の質問に、『紳士フェンシングクラブ(ここはナルシストの筋肉バカが多い)』と、『タペストリークラブ(ヘイリーがクラブのボス)』が合同で行っている『馬車の洗車』がトップだ。


お気に入りの理由は……『カッコいい男子が自分の馬車を洗車してくれるから』や、『綺麗なドレスを着た美人の女の子が洗車を応援しているのを見るのが好き』が多い。

確かに、どちらのクラブも、学校で顔面偏差値の高い子たちが所属しているクラブだ。

この二つのクラブには入会審査がある。

……もちろん、外見の審査だと思う。


次に人気なのは、『読書クラブ(シルヴァがクラブのボス)』のクッキー。

理由は、『ドライフルーツなどがふんだんに使われている』や『美味しい』が多い。貴族のお嬢様や、そのとりまき達で作っている(正しくは、メイドに作らせている)から贅沢で美味しいに決まっている!


その他に上位に来るクラブはほとんどが食べ物を販売していた。

変わったところでは、コーラスクラブに教会のための歌を歌ってもらうが人気だった。


問題の『数独は利用したいですか?』はアンケートの全てが『いいえ』だった。

理由を書く欄は設けていないのに、『つまらないから』と書いてあるアンケートもあった。


そして最後の、オークションに入札経験のあるものに驚く。

実は、毎年、オークションでは、他所のクラブが何を出品しているのか見ていないのだ。


理由は、人前に出る勇気を養うためにみんなで励まし合いっているからだ。そして自分達の番が終わる(入札なし、または最低価格)から、会場から失笑が起きているのに耐えきれずみんなで逃げ帰っている。


人気なのは『フェンシングクラブの男の子とカフェでお茶をする権利』や、『タペストリークラブの女の子とカフェでお茶をする権利』が人気だ。

理由はカッコいい、または、かわいい女の子と過ごす権利を落札できるからだ。

確かに、婚約でもしない限り、2人きりになってはいけないし、軽々しくデートに誘って複数人とデートしているのを見られると、女性だったら尻軽のレッテルを貼られる。

でも、チャリティーで入札したのなら、誰にも文句は言われない。

それから、デートに誘っても応じてもらえなさそうな高嶺の花を落札すれば、簡単にデートしてもらえる。


なるほど。

後は、タペストリークラブの『刺繍が施されたタペストリー』や、刺繍クラブの『刺繍されたハンカチセット』も人気だ。

綺麗な刺繍がしてあれば、誰でも欲しくなる。

あとは、読書クラブの『貴族の放出品』も、質の良いものが買えるからと人気のようだ。


みんなはアンケート結果を見て言葉が出ない。

「馬車の洗車って、高い台の上にヘイリー達が乗って、馬車の上から水をかけるのよね」

「そうそう、その時、依頼した男性達はヘイリー達の足元に立って上を見上げるのよね」

「スカートの中なんか見えやしないのに。下心溢れまくりよね」

そうだ。この馬車の洗車はセクシーさを売りにしているんだった。


「その水をかけた馬車を筋肉質な男子達が腕まくりをして拭き上げてくれるのよ!」

「その光景を見るために、毎年たくさんの女の子達が集まっているわよね」

「気持ちはわかるわ!だってセクシーだもの」

メリッサはうっとりして言った。

「ここには敵わないわ」

みんなは残念そうに落ち込んだ。


「じゃあ何か食べ物を作って売ってみたら?」

オーランドがおずおずと意見を言ってくれた。

「売るっていっても、食べ物の材料を今から調達するのは大変よ」

「確かにそうね」

みんなで考えたけど結論は出なかった。

「理学研究クラブは何を出品するの?」

「『数学の宿題の解き方教えます』だよ。オークションでは『5日間の家庭教師』の権利を出品するよ」

「それで入札はあるの?」

「うん、まあ…子供の勉強に悩む親からね。でも本人からは疎まれるよ」

それを聞いて苦笑いするしかなかった。


「確かに、もしも母さんがそんなの落札したら怒り狂うわ」

メリッサの答えにみんなで頷く。

「やっぱりそうだよね……。子供の立場なら怒り狂うよね。でも、毎年それなりの値段で落札してもらえるんだよ」

「そっか。親に訴えかけるってアイディア参考にさせてもらうわね」

そう話して午後の授業に戻った。


授業中は、週末のパーティーの事と、チャリティーDAYの事が頭の中をぐるぐると回転する。

そして気がつくと放課後になっていた。


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