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やはりあの怪しげな一団も露店を出している!

「今晩からどうするの?」

「さっきアーネストさんと交渉して、住み込みで働かせてもらえる事になったんだよ」

「今まで羊小屋にいたんだものね」

「そうだね。羊はあったかくて夜眠るにはすごく快適だったよ」

それを聞いて笑うと、ナサニエルも笑った。


馬車に荷物を積んで、露店でジュースを買っていると、数日前に見た、あの怪しげな一団がお店を出店していた。

行商人と言っていたが、お店に並んでいるのは、『ユニコーンの角』や、『グリフォンの鉤爪』などで、遠くから見てもびっくりするような高い値札が置いてある。

空想上の生き物の角や鉤爪を高値をつけているなんて、詐欺集団なのかしら?


しかも、お店の前を通る人を鋭く観察している。

やっぱり普通じゃない。


もしかして、金髪の女の子を探しているのかしら?


「ねえ、あのお店の人、なんかおかしくない?」

小さな声でナサニエルに言うと、頷いた。

「確かにおかしいね。怖くて近づきたくないから、引き返そう」


このお店が、伯父さんの露店から遠い位置でよかった。


色々な露店を見ながら歩いていると、遠くにダレルとヘイリーが楽しそうにしているのが見えた。

あれはアクセサリーの露店じゃないの?

……2人が付き合っていても私には関係ない。

でも、視界には入れたくない光景だった。


「どうしたの?急に口数が減って」

私の様子を心配してナサニエルがそう言ってくれた時だった。


「あら、リーザ。あなたも来ていたの?なんでも珍しい品物があるお店が出ていると聞いてやってきましたのよ」

そこに立っていたのはシルヴァ嬢だった。

派手な色の羽がついた帽子とマントを纏っている。

そのふくよかな体型を誇示しているような、不思議なセンスの服装だ。


その後ろにはいつもの取り巻き達がいる。


「なんでも都会の高級骨董品店が出店しているとか。貴族である、私達には大切な事だけど、貴方みたいな庶民には関係のない事でしょうけど」

そう言って私を鼻で笑った後、ナサニエルを見て気持ち悪いくらいの満面の笑みで微笑んだ。


「ところで。この見目麗しい男性は誰かしら?リーザ、紹介してくださらないの?」

もしかしてナサニエルに色目を使っているつもりなんだろうか?

どう見ても、食べ物を見つけた猪にしか見えない。

現に鼻息が荒くて怖い。


「こちらはナサニエル。えーっと、アーネスト雑貨店で明日から働くの」

そう言うと、シルヴァ嬢は目を輝かせた。


「まぁ!あちらのお店で取り扱うハチミツは絶品ですの。子爵家の娘が自分で買い物だなんてはしたない事ですが、あのハチミツだけは、いつも自分で買いに行きますのよ。その時はお願いいたしますわ」

そう話しながら、一歩、また一歩と近づいてくる様子は、やっぱり何かに向かっていこうとする猪そのものだ。


でもナサニエルは笑顔を崩さない。

「わかりました。お嬢様。こんなところで、雑貨店の店員とお話をしていると侍女の方が心配するでしょうから、私は失礼しますよ」

そう言って礼をすると、その場から離れた。

私も後に続く。


「うまいことあしらったのね」

「商会にいたら、ああいう客は一定数来るんだよ。だから、相手を刺激しないようにその場を離れるのが一番」

「なるほどね」

「きっと、あの怪しげな一団のカモはあんなタイプだよ」

「え?誰がどう見ても、怪しげな集団じゃない!誰も近づかないわよ」

驚いてナサニエルの顔を見ると、ニヤッと笑った。

「地方の貴族って、一点物って言葉に弱いよ?多分」

「何それ!」

私達は笑いながら伯父さんの店に戻った。


私達は伯父さんの店を手伝う。

今日は普段と違ってナサニエル目当てのお客さんが多くて、普段なら伯父さんと私で切り盛りする露店に大量に女性客が詰めかけている。


この後、父さんが合流した。

「師匠、なんとか洋服代を稼いだので、お借りしたお金をお返しします」

そう言ってナサニエルは父さんにお金を渡した。


「このナサニエル君が、アーサーが今回仕入れてきた品物を売り捌いてくれたんですよ。ですから本日の日当を渡しました。さすが大きな商会にいるだけありますね」

「それも凄いが、ナサニエルはこれだけのお金で、今着ている服や靴を買ったのか?お金は足りたのか?もしや、ツケにしたとか?」


父さんはナサニエルの服を見て心配した。

そう言われてナサニエルを見ると、確かに田舎町の蚤の市て買った服にしては洗練されて見える。


「購入した後、アーネストさんにアイロンを借りて、服にアイロンがけをしただけですよ」

そう言って笑った。


気がつくと、蚤の市が終わりの時間に近づいてきた。

露店の片付けがあるからというアーネスト伯父さんとナサニエルと別れ、ウインドウショッピングをしながら馬車へと向かう。

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