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ダレルには恋人がいるの?!

「ミランダ、行こう?」

「わかりましたわ」

順番に女性用品を扱う店を見ていく。


まずは予算の範囲内で買える新品のドレスを扱う店を見る。

ミランダは一着触ると、動きを止めた。

そして小さな声で「これはゴワゴワしておりますので、他を」と言った。

口が動いていないのになんで?

腹話術みたい!


「え?口動かさずに喋れるの?」

「できますわ。聞かれたくない事を話す時は基本的に扇子で口元を隠しますの。ですが、どうしても出来ない時、口の動きを読まれて会話が盗まれないように唇は動かさないのです」

「へえー。大変だね?」

「訓練すればできますわ」

「今度教えてよ?」

「よろしいですわ」

そうやって数軒のブースを見て回った。

でも、なかなかミランダが気にいるお店はない。


最後に古着を並べているお店があった。

そこの店主は、ポーラさんというお婆ちゃんが出していた。

ポーラさんは、アーネスト伯父さんのお店で買い物をするから顔馴染みだ。


「あら。リーザ、私のお店を見て行ってくれるの?」

「ええ、もちろんよ」


ハンガーに掛かっている服は、どれも古いデザインだ。

その割に、先ほど見た新品のドレスとあまり値段が変わらない。そのせいで、お客さんはちらほらとは来るけど、すぐに他所に行ってしまう。


しかし、ミランダはかなり熱心に見ている。


「こちらの服がよろしいですわ」

選んだのは、どれも古着なのに、先ほどまで見ていた新品と同じ値段のものだった。

デザインはよく言えばクラシカル。悪く言うと古臭い。


「今日、拝見いたしましたドレスの中では、こちらが一番ですわ」

ミランダがそういうと、ポーラさんはにっこり笑った。


靴を試着しようとするミランダを止めた。流石に、頑丈な物でないと牧場での生活は送れないので、興味深そうに見ているミランダにその事を伝えた。

残念そうにしている。


「今度、2人で遊びにいらっしゃい。ここに並んでいない物も沢山あるのよ」

「ポーラさん、今度伺うわ」

お金を払っていると、ミランダは次のお店を見ている。


「リーザ、こちらのカップもお願いしたいのですが」


その手に持っていたのは、薄汚れたティーカップだった。

この蚤の市の店主は、ヤーンさん。腰の曲がったおじいちゃんで、たまにふらっと数ヶ月いなくなっては戻ってくる。

いつも蚤の市で売るのはガラクタばかり。

噂では、拾った品物を売ってるっていう噂だ。


今もお店には薄汚れたカップ以外にも、曲がったフォークや、蓋のない鍋などを売っている。


「おじょうちゃんの年なら、こっちもおすすめだよ」

それは色が変色した、大きさは50センチくらいで、首がぐらぐらした女の子の人形だった。

大切そうに木箱に入れてあるが、その木箱もボロボロだ。


「いいですわね」

こんな不気味な人形、怖すぎる!

それを喜ぶミランダもどうかしている。


「今から靴を買ったりしないといけないから、ヤーンさんごめんなさい」

「そうか?じゃあ、ちょっと考えてみてくれ」

「ハハハ」

愛想笑いをして、ヤーンさんの店を後にする。


「いいと思いましたのに」

ミランダは残念そうに呟いた。

「あまりお金が残ってないの」

私を見てがっかりした顔をしているが、それよりも何よりも、自分のドレスは自分で持って欲しい。


でも、ミランダはそんな私には気が付かずに、他のお店も興味深そうに見ている。


ミランダが興味を持つのは、あの薄汚れたカップや、壊れかけの不気味な人形。

それから古臭いデザインのドレス。


何もかも価値観が違う。

流行りのデザインの物や、新しい物には目もくれない。


「あら、遠くに見えますのはアーネストさんですわ」

すごい速さで角を曲がっていく。

おかしいわ、ミランダは歩いているはずなのに、私は小走りで追いかけないといけない。

王族ってあんなに早く歩けるの?


「ミランダ待ってよ」

私も急いでミランダの曲がった方に向かった。


しかし、ミランダのドレスが重くて、動きが鈍い私は、急に現れた目の前の人を避けきれずに、ぶつかって転びそうになるのを、なんとか堪えた。


「やあ、リーザ。今日もアーネストさんの手伝い?」

顔を上げると、そこにはダレルが立っていた。


「ダレル!」

驚いたけと、咄嗟に、ちょっと笑いかける。


「いつもと雰囲気が違うね。なんだか顔色がいいよ」

これはミランダが塗ってくれたリップのおかげだわ!

少し顔が熱くなる。


「今、暇なの?」

そう聞いた後に気がついた。

隣に、シルヴァ嬢といつも張り合っているヘインズ家のヘイリー嬢がいたのだ。

ヘインズ家は、鉱山や製鉄所などを所有している財閥家だ。

喘息持ちのヘイリー嬢は、昨年から空気の良いこの街に住んでいる。


「あら!リーザさん、ごきげんよう。そのドレス……」

ヘイリーは私を見てクスッと笑った。

私は数着の古いデザインのドレスを手に持って走ってきたので、少しバツが悪い。


「何か手伝おうか?」

ダレルが聞いてくれたが、それをヘイリーが遮る。


「リーザさんは取り込み中のようですわ。格好はいつもの茶色のドレスにお団子頭なのに、カラフルな古臭いドレスを手に持っていますもの。イメチェンにしては……フフフ。私達は邪魔しないように、カフェにでも参りましょう?」

そう言って、ヘイリーはダレルに腕を絡める。

今、何もかもバカにされた! 

頭にくるけど、ここで怒ったら負けだ。それに、ミランダを追いかけないといけないからここは我慢!


「そうなの。私ちょっと今忙しくて」

「やっぱりそうですわよね。行きましょう?ダレル。では、ごきげんよう、リーザさん」

作り笑いを浮かべる私を他所に、腕を組んだ2人は『またね』といった雰囲気で私の横を通り過ぎて行った。


2人の背中を見送りながら、気落ちする。

あの2人、付き合っているのかしら?

確かにそんな噂をつい数日前に聞いた。



って、私はダレルが好きなわけじゃない!

決して違う!

カフェに向かう2人を見ていると後ろから声がした。



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