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人目はひいてはいけないらしい

「今から『ミランダ』と呼ばせて頂きますよ?私はアーネスト。アーサーの親戚です。実は、怪しい男達が街をうろついています。なんでも、金髪でリーザくらいの身長の女の子を探しておりましてね」

ミランダは私と同じ視線の高さだと認識したようだ。


「もしかしたら貴女を探しているのかもしれません。だから変装してもらいますよ」

「変装?」


「はい。その絹糸のようなクリーム色の金髪は大変目立ちます。この国では見た事がない。ですから、申し訳ありませんが、この国で1番多いダークブラウンに染めて頂きます」

ランプの灯に照らされた髪は普通に金髪に見えるのに、アーネスト伯父さんはクリーム色だと言った。

本当かしら?

疑いの目でミランダを見ると、当の本人は不安そうな顔をしている。


「この自慢の髪を染めないといけないのですか?ダークブラウンじゃなくて、せめてリーザと同じ髪色にしてただけないかしら」


「リーザの赤毛もあまり多くないのですよ。貴女は人目を引いてはいけませんからね。それから、リーザの服はサイズが合わないでしょうから、明日、明るくなったら服を持って来ますよ?」

確かに王女様は私よりも背が低い。

私は167センチほどあるが、王女様はそのハイヒールを脱ぐと、160センチくらい。

それだけ身長が違うと確かに私の服を着るとブカブカだ。


王女殿下がハイヒールを履いていれば同じくらいの身長だから、怪しい男達が探しているのは本当にミランダなのかな?


「ねえ、ミランダと共に運び込んだ荷物は?あそこに服とかが入っているんじゃないの?」

私の疑問に父さんは笑った。


「あれはミランダを隠すために一緒に運んだ小麦粉とかだよ。出国の時に、中身を見せなきゃいけないから、荷車に沢山の輸入品を乗せたんだ。ありとあらゆる品物を積んできた。だから、明日からアーネストの店に置いてもらわなきゃいけないな」

「店の倉庫にも、何かのついでに運んできた品物が沢山あるんですよ。アーサー、できれば小麦とか一般的な品物ばかり買って来てくれればいいのですがね」

と伯父さんは笑った。


「さあ、話はここまでにして、晩ご飯を食べよう」

いきなりミランダとナサニエルが増えたのだから、アーネスト伯父さんは急いで料理を始めた。

スープにサラダ、それからチキンを焼いていく。

伯父さんは特別な物を使っているわけではないはずなのに、すごく凝った料理を作る。

その間に父さんはナサニエルに洋服や毛布を持っていった。


「護身術の心得のないミランダは1人部屋にはできないな。今日からリーザと2人部屋だ」

「ええ?父さん、それはないんじゃない?プライバシーは?」


父さんは怖い顔で私を見る。

「プライバシーより、安全が大切だよ」 


渋々ミランダと相部屋を了承して、晩御飯の後、寝具を持ち部屋に案内した。

「まあ!ここはドールハウスなの?小さいベッドに、小さい机!それにこの小さいドレッサー!なんて可愛らしいの?でも、私は今は遊びたいんじゃなくて、休みたいのです。ですからお部屋に案内してくれるかしら?」


え?ドールハウス??

その言葉に困惑する。


「ここ……私の部屋よ?」

今度はミランダが困惑する番だった。


「そうなのですか?迎賓館のトイレくらいの大きさの部屋だったので、勘違いしましたわ」

ここは町外れの一軒家の牧場だから、当然他所よりも部屋は広い。メリッサなんて自分の部屋がない上に、妹達と共同で使っている部屋はこの部屋の半分もない。

にもかかわらず、迎賓館のトイレくらいの大きさの部屋なの?

一体、どんなところに住んでいたのかしら?


「それ、人前で言ったら2度と口聞いてくれなくなるから気をつけてね」

「何故、口を聞いてくれなくなるのですか?」

本気でわからないのか真面目な顔で聞いてきた。

なんでこんなに察してくれないのだろうか。


「それはね、馬鹿にされている、見下されていると感じる発言だからよ」

「えっ。そんなつもりはございませんでしたわ」


「まず、その話し方。普通とは違うから治さなきゃね。とりあえず、今日はベッドで寝て。明日以降はどうするか話し合いよ」

私は適当にパジャマを出すとミランダに渡した。

ミランダは服を脱ぐと、パジャマを着てベッドに潜り込んだ。

脱いだドレスはそのままだけど……私が片付けてあげないといけないのかな?


何も言わずにベッドに入ってしまったミランダに何か言おうかと思ったけどやめておこう。きっと、すごく心細いだろう。

家族を残して、1人だけ亡命しなければいけないなんてどんな気持ちなんだろうか。

私だったら泣いてしまうかもしれない。そんな状況なのに気丈に振る舞っていたのだから凄い。


私はドレスを手に取った。

なんて滑らかで肌触りの良い生地なんだろうか!

こんなの触ったことない。そりゃ、パジャマを手に取って困惑するはずだ。

きっと『これに袖を通さなきゃいけないの?』って思っただろう。


あまりに違う環境ですごさないといけないミランダが可哀想になった。

だからといって、譲歩はしない。ミランダの正体を隠し通すには、ちゃんと言わないといけない。


仕方がないので、寝具を広げて床に寝転んだ。

明日から1人部屋に戻してもらわなきゃと考えながら眠りについた。



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