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羊ちゃん捕獲作戦

本日2回目の投稿です

ここからどうやって羊ちゃんの正体を暴くか作戦を練る事になった。


15分後、作戦を実行に移すために私とアーネスト伯父さんが家の外に出る。

羊ちゃんがどうか怖がりませんように。

そう祈りながら羊小屋にいく。


「羊ちゃん。遅くなってごめんなさい。晩御飯を持って来たわ」

そう声をかけると羊ちゃんは出て来たが何だか機嫌が悪いようだ。

ここは作戦通りにいかないと。


「今日はね、シチューなの」

そう言ってシチューの入ったお皿を差し出そうとするが、手が滑ってお皿を落としてしまった。

……これはわざとだ。

演技っぽくて、警戒されていないかヒヤヒヤしながら会話を続ける。


「ごめんなさい!今、もう一度持ってくるわ!でも、父さんに見つからないようにしないといけないの。だから少しだけ移動してもらえないかしら?」

そう聞いて、急いで地面に『はい』と『いいえ』と書く。


すると『はい』に石が転がって来た。

よかった。

私は少し安堵して

「ここだと家からは見えにくいわ」

そう言って小屋の隅に誘導する。


羊ちゃんが決まった場所に立った瞬間、壁際のレバーを引く。


ガシャン!


勢いよく上からと下から柵が出て来て羊ちゃんを捕らえた。

ここは毛刈りや、出荷を嫌がって逃げ回る羊を捕獲する罠がある場所だ。


羊ちゃんは身動き一つせず、顔であろう場所がこちらを向いている。

怒っているのかな?

誰かから逃げているはずなのに私に捕まったのだから。


「ごめんね、羊ちゃん。私には拒否できなかったの」

捕えられた羊ちゃんを見て申し訳ない気持ちになる。

この出来事のせいで、きっと、中の女性とはもう信頼関係が崩壊してしまっただろう。


悲しい気持ちで羊ちゃんを見る。

羊ちゃんも悲しそうだ。


「……不思議な生き物ですね。リーザ、檻を運びましょう」

アーネスト伯父さんは表情を変えずに言う。私は頷くと、手元の綱を引く。

すると、檻が宙に浮いた。

そして、それを台車に乗せると、家の離れに運ぶ。


冷静に近くで見ると、羊に似せるつもりがあるとは思えないクオリティーだ。


両手には羊の前足のつもりである棒を持ち、背は腰の曲がったお年寄りのように曲げて、体中を枯草で覆っている。

手に持つ木の棒は、棒である事を隠すつもりもない様子だ。枯れ草に隠しているであろう人間らしい部分は、かろうじて隠れているが、上出来なのはそこだけだ。


納屋に羊ちゃんの入った檻を運ぶと、そこには父さんと、頭からシーツを被り顔も体も隠しているミランダ王女殿下が待っていた。


王女殿下は、周りが見えるように目の部分に穴を開けている。

その姿を見せてはいけないが、羊ちゃんの正体を確認してもらうための急ごしらえの措置だ。

まるでオバケになりたい子供のようですごく滑稽だ。


「手荒な真似はしたくない。その枯れ草を退けて正体を現せ」

父さんは今まで聞いたことのないくらい、低くて聞くものが恐怖を感じるような声で羊ちゃんに言った。

羊ちゃんが可哀想になる。


普通の女の子だったら泣き出すかもしれない。

すると、羊ちゃんが急に立ち上がった。


その反動で、背中に乗せていた枯れ草が落ちた。


あれ?

そこにいたのは私の想像とは全く違う人だった。

背が高くて痩せた、男性だったのだ。

体に布を巻きつけて、髪はボサボサで無精髭が生えている。

そして枯れ草の塊の中に袋を隠しているようだ。


「ええええ?女性じゃないの???」

びっくりとがっかりで落ち込む私を他所に、男性は両手の棒を放り投げて檻にしがみつく。


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