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第7話 未完の大器、ドラムキング出撃!

 くろにくる うんちく講座 第6回


ドラムキング

 第三世代型の標準となることを目指して設計された試作自在甲冑。特徴は、なんと言っても大きさ。着ぐるみのようなでかい頭を持つが、それが普通の人間のようだったとしても身長40メートルほど。

 人間よりも遥かにシンプルな筋肉配置だったファーストは、ひとつの関節の動作にひと組のUマッスルが対応するイメージだった。セカンドは、ひとつの関節の動作に複数のUマッスルが対応し、且つひとつのUマッスルが複数の関節に対応するような、人体の筋肉配置を参考にしたものだった。ドラムキングはファーストからセカンドへの発展を推し進め、人体よりも複雑だが、総体としての出力を向上させることを目的とした設計である。

 人体を模していたがゆえに、適性があれば自分の体を動かす感覚を転用できるセカンドと、よりシンプルなファーストのOSは、「OS」という呼称ながら実質ドレッサーの操作意図を調整するフィルター程度の機能しか持っていなかった。ドラムキングは人体よりも複雑な筋肉配置となるため、ドレッサーの動作意図を元に、OS側で必要なUマッスルへの命令信号を演算し、加工・出力するという予定だった。

 過去のOSとはプログラムとして求められる内容と複雑さの次元が異なっていることもあり、開発が難航していた。戦闘機なども、コンピュータで制御を行うようになって以降、開発期間・予算面でプログラム開発にかかる部分がかなりを占めるようになっていることからすれば、特にスタッフが能力不足であるとか、そういうわけではないとも言える。

 九七式二七は綿密な設計などには関わっていないが、その目的等を含めて開発を主導していた彼女に言わせると、「怪獣に対抗できる」第一世代JK、「怪獣から人類の生活圏を取り戻し、維持できる」第二世代JKに対し、最低でも「(迂闊に近づけば怪獣の出現を促してしまう)怪獣出現地域を調査できる」、欲を言うなら「怪獣を根絶できる」JKを目指していた。


自在甲冑が人型である理由

 生物の身体構造の各部位は、その恒常性を維持して生存活動を行うために多様な機能を高度に並立させるように発展するのが基本である。無駄は生存競争には不利に働くからである。

 例えば脂肪だけ見ても、余剰エネルギーの貯蔵に衝撃の吸収、体温の保持など複数の機能を成立させている。人体の筋肉すら、非常時には分解されてエネルギーに変換される。

 系統こそ地球産の生物とは異なるが、怪獣の体組織もまた多様な機能を高水準で成立させている。

 では、工学的に作り上げることができない高性能素材の機能を最も有効に生かす使い方は何か、と言うのであれば、元の機能にできるだけ近い使い方をすることである。

 Uマッスルなどを既存の機械装置の代用として用いることもできなくはないが、素材それぞれの品質にばらつきがある上、そういった使い方では折角の複合的な機能の多くが無駄になる。

 筋肉のように発達したものならば、筋肉のように使うのが最も性能を生かせるのだ。

 再接続、再使用可能であるという怪獣の体組織の特性も含めて性能を生かすのであれば、身体の一部は、できるだけその元々の部位のように使うのが高効率ということになる。

 怪獣出現当時、トランスレータなどを含めて前提条件は限定的だが、VRシミュレーションで人体のようなものをそれなりに思うように動かせる技術は確立されていた。

 工学的に作られた人型機械を手や足で操作する装置などで動かすのとは異なり、対応した筋肉を動かすような形であれば、ニューラルコントロールで人型の物体を動かすのは、他の形状のものを動かすよりもむしろハードルは低かった。NCで操作するのなら、人型であるほうがむしろよかったとさえ言える。

 タビーキャットタイプの存在が示すように、哺乳類型の中型怪獣のようなものをNCで動かせないわけではない。

 動物型で怪獣と取っ組み合うのと、人型で持ち替えも可能な武器を持って戦うのと、戦い慣れた場合に想定される損傷などを含めて、総合的に使い勝手がいいのは結局、人型なのだ。



 第7話 未完の大器、ドラムキング出撃!


 常に迎撃地域には一小隊のJKが控えているため、エレナの携帯電話が鳴った時点で戦闘開始は目前だった。

 突貫で最終作業を終えられた騎体を立ち上がらせたチハは、レイコが状態確認を始めとした一連のセットアップ作業をする間、視界に現地の映像も映して確認していた。

 別のワイプ画面ではテレビの映像を映してある。超大型怪獣の出現を受け、周辺の住人には避難が呼び掛けられていた。

 地震などと異なり、世界での例から言って、近々に超大型怪獣が出現するであろう確実性は明らかに高いと思われていた。それゆえに、いつでも避難を行えるようにしておくことはしつこく呼びかけられていた。

 きたじぇの入学辞退者や自主退学者のように、言われるまでもなく遠くへ転居した者たちもいたのだが、そうしたいからといって容易にできることではない。

 山地から現れていたのは、多数の怪獣に加え、超大型怪獣。現地ではすでに激戦が繰り広げられている。

 想定はされていた今回、周辺からのドレッサーの招集などもスムーズであったし、前回多量のU素材を獲得できた結果、これまでの期間で彼女たちが使うためのJKの数も質も充実していた。前線のバスターたちもバックアップ要員も、前回の経験を踏まえて対応の質も向上している。

 運用開始目前だった銃器の内、狙撃砲一式を、急遽サキウのファイティングナードのみが装備していた。

 超大型怪獣を狙って破壊光線を誘発するのはまずいため、まずは乱戦の外側にいる個体を減らす形で援護射撃を行っている。

『本当に、出る気なの?』

 出撃準備を手伝ってくれているエレナからの問いだった。

「略式ではありますけれど、確認は今終わりましたわ。みなさんのおかげで、騎体は間違いなくできていますわ」

 レイコはうれしそうに返した。

『騎体以外はできてないってことだよね? そりゃ、司令だって戦わせる気だったけど、それはきちんとできてからの話で、そもそもドラムキングは元々実戦用じゃないんだよ。レイコちゃんもわかってるでしょ? たしかに、戦えるようになったら儲けものっていうことで最近はいろいろがんばってたけど、元々日常生活レベルの動作ができたら上出来で、そこから設計を詰めるための試作品だよ』

『つまり、そもそも戦力じゃないってことなら、戦って負けてもいいってことですよね?』

 チハが軽く言い、エレナが言葉に詰まったところに、ニナが通信越しに口を挟む

『九七式特殊曹長? だからって、無駄に壊されては困るのよ。電特殊中尉、出撃を許可してもいいかしら?』

 普段の柔和さの消えた、堅い口調だった。

『あなたの判断でしたら。止めることはできません』

 権限だけの話ではない。親が娘を出撃させると言うのに、止められるはずもなかった。

『では、十勝基地司令として、艦上特殊少尉と九七式特殊曹長に、試作騎ドラムキングでの出撃を許可します。これは命令でも義務でもありません。現場に辿りつけたのなら、交戦も許可します。ただしそれにかかっているコストなどはバカになりませんから、どうしようもないようであれば無理な戦闘は避けてください。そのあたりの判断は艦上特尉に任せます』

 これはつまり、操作が満足にできなかった場合、交戦を許可しないということでもある。

 出撃、戦闘を命令しないということは責任逃れにも見えるが、不完全な状態でそれを強いる方が問題だった。辿りつけないのであれば戦いたくても戦えないことに変わりはないのだが。

「武器は現地までの輸送をお願いいたします」

 レイコは言いながら地図を確認し、コンピュータの操作を行う。

『わかったわ。指示します』

 ニナは淡々と答えた。

『チハさん、お待たせいたしましたわ。では、実物ではぶっつけ本番で申し訳ございませんが、試してくださいませ』

「はい!」

 チハは直立姿勢をほぼ維持する形でわずかに全身を動かし、連動の確認を終えると、満足したように頷いて腕を組んだ。

 ドラムキングはその動作を追従し、腕組みをして仁王立ちする。

「これなら、最低限は動かせそうです。今のわたしたちにとっては、ちょうど最大限」

『では、行きますわよ』

「がってんです!」

 チハ/ドラムキングは、ゆっくりとクラウチングスタートの姿勢をとろうとした。

『ダメですわ。忘れましたの? 走る時に気をつけますことは、地面に足をつくときに衝撃ができるだけ出ませんようにしますことと、地面を強く蹴りませんこと。通常のJKでさえ、周囲へ影響が出すぎますの。まずは気持ち遅めでお願いいたしますわ。遅すぎると思いましたら、わたくしが申しますので』

 初めてチハが紅姫に乗ったときと同じ指摘だった。

 身長180センチの人間が100メートルを20秒で走ることをそのままドラムキングのサイズに変えるだけで、時速400キロになる。100メートル30秒相当でも270キロ近い。100メートル10秒換算だと時速800キロ。

 U素材の性能的に、理論上は同等の動作速度自体はむずかしくない。速度が上がれば空気抵抗などは速度に比例する以上に増えるため、実際にそこまで速度は出ない。

 また陸上競技の記録が整えられた環境などで計測されるように、起伏や障害物に満ちた環境ではそんなに速度は出せない。そして人や建造物を壊すわけにもいかないので、不用意に転倒などができないということもある。

 今気にするべきは足を強く地面について深くめり込ませたり、余分な衝撃で周囲に影響を出したりしないようにすることだった。U素材の緩衝性能が桁違いとは言え、騎体の規模も桁違いで、比率ではわずかだとしても発生する衝撃は馬鹿にならない。衝撃になるということはエネルギーのロスでもある。U素材の性質上、衝撃が発生しないということは、それだけ騎体がエネルギーを回収しているということでもある。

「わかりました、艦上先輩」

 チハは返事をすると立ち上がった。

『今、ガイドを表示いたしますわ。多少回り道になりますけれど、建物などが少ないルートになるはずですの。観測班の方たちと協力して無人のルートを確保いたしますけれど、常に足下には気をつけてくださいまし』

「わかりました。では、いいですか?」

 チハは視界に表示された立体矢印に沿ってドラムキングを歩かせて舗装の端まで行くと、フェンスを跨いだ。

 無舗装の地面の上で、スタンディングスタートの構えをとる。

『ええ、よろしくてよ。はじめは様子見がてら、お願いいたしますわ』

「はい! ドラムキング、行きます!!」

 40メートルの巨体は前傾姿勢で一歩を踏み出し、極力衝撃が発生しないように接地させ、次の足を踏み出す。

 始めは恐る恐るでやや不安定だった。

 しかしチハ自体徐々に操作に慣れるとともに、レイコもOSや補助プログラムを書き変えつつ操作に介入していく。

 走行は始めの内、あやうさも見せた。

 しかし段々と足取りはしっかりとして姿勢はぶれなくなり、それでいて加速していった。

『今およそ時速250キロですわ。いかがですの?』

 矢印に沿いながらひと気の無い丘陵地帯を走るチハには意外だった。あたりを見回す余裕もある。

「そうなんですか? 実感なくて、まだまだいけそうですけど」

『どこに人がいるかわかりませんし、転んだりしても大変ですもの、余裕があるくらいでちょうどいいですわ。視点が高いと体感速度は遅くなりますのよ。開けていて建物などがまばらですと、尚更わかりにくいですわね。視点の低い足のカメラからの映像ですと、すごい早さですわ。けれどチハさんは試さないでくださいませ。それで転びましたらことですわ』

「はい」

 チハは気を引き締め直して前方を注視した。当面は人や建造物に損害を出さないことが重要だ。

 ただ移動するだけで、人間にとっては脅威。

 ある意味において自在甲冑と怪獣は同質で、ドラムキングはまさに大型怪獣級なのだ。

 走り出した今、チハは音声通信のみで現地の戦況を想像するしかない。

 戦況は拮抗し、JKと怪獣のどちらも多数の戦闘不能を出しているらしい。


 観測班のカメラのひとつは、ドラムキングを捉えていた。

 牧場や畑、丘陵地帯をあっと言う間に通り抜けて疾走する巨体。

 時折同じ画面に映る人工物などとのサイズの比のおかしさから、それを目にした者は、まるで現実の映像だとは思えなかった。


 迎撃地域では、チハが紅姫で戦った日と同様、怪獣と自在甲冑の双方とも多数が動けなくなっていた。

 超大型怪獣は、大雑把に表現するなら、ティラノサウルスの背中の左右に大きな腕が生えたような姿だった。頭部の額と、背中の首の付け根あたりに大きなクリスタルコアがある。

 怪獣の数で言えば、前回と大きくは変わらない。しかし大型と中型の比率が高く、戦力も整って前回より対処の質は向上しているはずのJK側の被害も拡大している。

 バスター総出の戦場では、黄色主体のダイヤスタイルになっているトリックスター、元ネタアニメの二号ロボのヤルキングの外装になっている登録名「ガンバルオー」に、外付けの甲冑風の装甲がいつもよりも多いヴァルキュリヤの姿もあった。さらにはプリズムシンセの二体どころか、ベールクトまでが戦っている。

 ベールクトは翼のようにも見える背中のブレードを外して地面に突き立て、身軽になっていた。元々が、単騎で遠征するために複数の剣をまとめて携行するための機能なのだ。すでに二本は摩耗したために、新たな二本に持ち替えている。

 離れた位置、なだらかな丘の稜線からはファイティングナードが狙撃砲で援護している。

『ぬるいぬるい』

 サキウは、初めての実戦運用とは思えない精度で、視野に入った端からクリスタルコアを次々と砕いていた。

 撃っている120ミリメートル六十口径長対怪獣狙撃砲は全長約14メートル。戦車の主砲を転用して造られた初期型のため、ライフル砲身ではなく滑腔砲である。

 ファイティングナード自体はファーストJK標準の頭頂高16メートル。絵面としては身長160センチの人間が全長140センチの対物ライフルを撃っているようなものだ。

 比較することがやや不謹慎ながら、数百メートルの射程で狙撃するぶんには、彼女がゲームで慣れている遠距離のヘッドショットに比べればものの数ではない。逆算すれば、人間が数十メートルの距離でライフルの狙撃をするようなものなのだ。

 彼女たちの戦略は、超大型怪獣を刺激しないように、それから離れている怪獣から数を減らしていくことだった。

 トリックスターたちは、序盤は怪獣の数を減らすことを優先してビーム系武器を多用していたのだが、エネルギーの枯渇を考慮し、それぞれ武器を持ち換えていた。

 チャノは実戦用に見えない巨大なピコピコハンマーを器用に振り回し、クマ風中型怪獣の後肢の関節を逆から叩いて外した。

 これは関節を外すという用途に特化した、中身はほぼ金属塊である。

 バランスを失って倒れた怪獣の頭部クリスタルコアを、僚騎がすかさず砕く。

 トリックスターは、群れの後方でゆっくりと歩いている超大型怪獣へ視線を送る。

 コックピットのチャノの視界には、ピンク色に染まる筒状の空間として、超大型怪獣の破壊光線の想定射線が表示されている。

 観測班からの映像などを元にリアルタイムで処理された射線が、各バスターの視界に重ねて表示されているのだ。

 事前に説明され、シミュレーションで試してもある。

 不確定さが強くなると、口から離れるほど広がる円錐形のような形で色が薄くなり、放射されるとなると色が濃くなり、射線が確定的であるほど細くなる。

 問題は、初確認のアメリカの際にそうであったように、距離が空くほど、わずかな動きで大きく軌道が変わることである。

 先ほどから、超大型怪獣がただ歩いて気まぐれに首を動かすだけで、ピンク色の筒はあらゆる方向へと大きく向きを変えていた。トリックスターを貫いて横切ることも、一度や二度ではない。

『この表示、心臓にわるいけど、やっぱりあったほうがいいしなぁ……』

 少なくともシミュレーションでは非常に有用だった。

 怪獣をあしらいながら、あらためて戦場を見回したチャノは眉を寄せた。

『押されてるな……。アレを撃たれないように超大型は刺激しないで後回しって言っても。いいのかな』

 司令部のオペレータのバックアップ含め、各個はじゅうぶんに奮戦している。

『ジリ貧ね~……』

 作り手の趣味で装飾に凝ったランスで複数の怪獣を同時に相手取って捌きながら、ヴァルキュリヤの中、マオウも表情を曇らせていた。

 誰もが最善に近い働きをしているからこそ劇的な改善が見込めず、徐々に数で不利になっている。

『マオウさん、ついでに持たされて遅くなったんですけど、これ、マオウさんでいいですか?』

 通信越しの言葉に、チャノたちは驚きを持って声の主を探した。

 前回も、たまたまいなかっただけで、こういったことがあれば出撃することはわかっている。それでも。

『『ナゴミさん!/ナゴミちゃん!』』

 戦いのさなか、迎撃地域の端に現れた騎体に気がついたバスターたちは、つい視線を送ってしまってもいた。さらにそれにつられるように、次々と視線が集まる。

 そこにいたのは「ザ・ファースト・JK」とも、あるいは単に「ザ・ファースト」とも呼ばれる、世界で初めて作られた自在甲冑「ガンリュー」だった。

 白主体に赤をあしらった人型兵器ともヒーローロボットとも思えるような外装は、長く戦い続けたことにより最初から使われていたものはもう残っていない。

 フレームにしても、長年の戦いに伴い修復や調整などを繰り返し、何割が最初のままかは不明である。だが、紛れもなくそのものである。インターネットなどでは、使っては継ぎ足されていく「老舗の秘伝のたれ」みたいなものと冗談半分で言われることがある。

 長年の運用で動作に伴う外装の分割などに対する見直しなども行われ、デザインは同一ながら、細部の見た目は当初と同じとは言えない。しかし、あくまでアニメのロボットの立体化における解釈違い程度の範囲である。

 最近は実戦の機会はなく、たまにイベントに引っ張り出される程度だったため、見た目は新古品といった雰囲気である。

 ガンリューは、無骨なガトリングと給弾ユニットなどの一式を担いでいた。

 ナゴミは、類人猿がなんとか二足歩行するような独特の歩みでヴァルキュリヤへ向かう。それを受けてマオウも自ら駆け寄り、とりあえずそれを受け取った。

『私でいいのかしら~?』

『推薦します』

 本人の疑問を受けて、すかさず述べたのはサキウだった。

 ふたりはミリタリー系も含めたシューティングゲーム仲間でもあり、マオウが連射系武器を得意とするらしいということは、周囲にもそれなりに伝わっている。

『反対意見が無いなら、時間がもったいないからとりあえず私が使うわね~』

 戦うお姫様にも見える金髪で青いドレス風衣装のヴァルキュリヤがガトリング一式を身に着けるのを確認しながら、サキウが言う。

『司令部、可能なら、ガトリングの射線も各バスターの視界への反映をお願いします』

『了解しました』

 オペレータが答え、少しの間を置いただけで、反映は終わってしまった。

 JK用銃器は、使用者向けに射線が視界に重ねて表示される補助機能も有している。狙撃砲では使われないことも多いが。その機能を利用すれば、超大型怪獣の射線同様に、他のバスターの視界へ反映させることが可能なのだ。

『各バスター、籠縞特尉のガトリングの射線からは離れるようにしてください』

『あぶないわよ~』

 サキウの警告を、マオウは肯定した。

 この銃撃で外装は簡単に吹っ飛ぶだろうが、バスターに被害が及ぶことはまずないはずだ。ただ、カメラなどを壊されるのは避けたかった。

 ヴァルキュリヤはガトリングを構え、楕円形のように広がって進軍する怪獣の群れの、向かって右の縁へ向けて歩み始めた。

 ハリウッド映画などで携行型ガトリング砲を人間が担いで使うことがあるが、現実的には重すぎて不可能である。あくまでフィクションだからできることだ。

 自在甲冑は、人間と同じ体格だったと仮定しても超人的な身体能力を有する。

 ヴァルキュリヤが担いでいる給弾ユニットは、さながら遠距離行軍する軍人の背嚢を思わせるサイズだ。重さはその比ではない。しかし女性型自在甲冑の足取りは軽い。

 逡巡しない射撃は、狙えるクリスタルコアを近い順に次々と砕き始めた。

 より近い他のJKに気をとられている怪獣たちは、いい的だった。

 多少弾が散ろうとマオウは頓着しないので、射線から避難が遅れていたJKが慌てて身を引く。

 マオウは、自覚的にはともかく、下手なわけではない。狙いが標的に近いところで引き鉄を絞り、離れると放すという程度のことはきちんと行っている。弾数あたりの正確な命中率という基準は無視して、連射武器で複数のターゲットを連続で砕いていく速度という点での評価はサキウに勝るのだ。

 今の状況は、いかに速く相手の戦力を削ぐかが肝だ。遅れた分だけ失われるであろう味方の戦力を維持できる。

 ヴァルキュリヤが右へ進み始めたのを見て、ガンリューは左へと移動し始めた。

 形こそ人型だが、ファーストはどうしても動きが不自然になる。

 内部の筋肉配置が人体と異なるがゆえである。そのために走ることも苦手なら、ただ歩くのでもセカンドより遅くなる。

『ナゴミちゃん、みんなに一言とか、無いの~?』

 促すようなマオウの問いに、コックピットのナゴミは困惑した。

 ナゴミにこんなことを言えるバスター仲間は少ない。マオウはファーストJKが主力の頃から戦っているキャリアがあり、年上である。

 特殊大尉は久々にハチマキを巻いてJKに乗っていた。あまりにこの一戦は重いという自覚がある。

 そして今ここが、多数の人命が直接的にも間接的にも懸かった戦いの趨勢を決めかねない、重要な局面だ。

 生きる伝説とすら呼ばれて英雄扱いされており、普段は戦わない自分の参戦。

 バスターたちを鼓舞する象徴として求められることを、ナゴミはわからないではない。

 ザ・ファースト・バスターは表情を引き締め、決意して言葉を紡ぐ。

『えー。いつも、自分は戦わないのに、えらそうなことばかり言ってすみません。不肖、ダイ・ナゴミ、及ばずながら、今日はがんばらせていただきたいと思います』

 脱力してしまうバスターたちをよそに、一体の中型怪獣の近くまで進んだガンリューは、まだ間合いに入ったように見えない距離を残し、両手で掴んだ剣を掲げた。

 テレビ、あるいはインターネット越しに、かつて人類の希望そのものの象徴だったJKの姿が世界に中継されていることをナゴミは知らない。

 セカンドが普及した国では怪獣討伐に使われることが減ったファーストは、弱いのか。

 答えは否である。

 剣を振り下ろすと同時、物理法則を無視してスライドするかのように移動して間合いを詰めたガンリューは、相手の頭部のクリスタルコアを粉砕していた。

 人間の感覚に違和感を惹起する独特の動きだ。

 セカンドの利点は、適性さえあれば、人体のように動かせるようになるまでのハードルは低いことだ。人口当たりの比率で言えば適性のある人間は限られるが、供給されるセカンドJKの数に比べれば、絶対数ではじゅうぶんに過ぎる。

 そのことから、セカンドは一定の質を担保する形で数を揃えて安定運用するのに向く。

 ファーストはただ動かせるだけの適性を持つ人間は多いが、その構造の特異性から、戦える水準で操るためには別種の才能も求められる。はじめからある程度可能な者もいるが、コツを掴み熟達し、自在に動かせるようになるまでに求められるハードルは、セカンドよりも圧倒的に狭く、高いのだ。

 組織での運用を考慮すれば、製作にメンテナンスなどを含め、同一のフォーマットで統一するほうが効率はいい。ただの移動もセカンドのほうが早く、戦闘以外の作業を行うにしてもファーストは不器用で、セカンドのほうが、潰しがきく。

 要するにセカンドのほうが、あらゆる面で使い勝手がいいのだ。

 全体の質で見れば平均値はセカンドのほうが安定して強いのだし、怪獣の討伐を安定して行うこともじゅうぶんできていた。

 そういった事情でファーストは現役を退いていった。

 だが、特定のバスターが操る一部のファーストは、依然としてセカンドよりも強い。

 レイコが紅姫で使っていた「技」は、人類が人体で培った剣術である。セカンドが人体を模しているがゆえに再現できた、セカンドだからこそできる芸当である。当然、ファーストでできることではない。

 ナゴミが剣を縦に横に、あるいは斜めに振るうたび、ガンリューは物理法則に反するかのようにスライド移動などをして立ち位置を変えていた。

 長さに対して質量は三乗で増えるということに伴う圧倒的な質量と、それを動かすに有り余る膂力が生み出す慣性モーメントに重心移動のタイミングなどを合わせることで、人体ではありえない挙動を生んでいるのだということは判明している。

 これは基本構造が人体とは異なる、ファーストJKだからこそ使える、ファーストJK独自のスキルなのだ。

 だが、仕組みが判明した後でも、誰でも使えるものではなかった。

 単純すぎる構造により、ファーストの個体差は動きへ反映されやすいということもある。

 それでもやはり、ファーストバスターごとに持つ独自の技術は、大抵個人に依存するものだった。

 ナゴミのこれだけではない。似たようなものからまったく異なるものまで、ファーストバスターの一部の者たちは、それぞれ独自のスキルを持つ。

 セカンド普及以降を画一的な訓練で定型化された技術を身につけて組織運用を前提とした軍隊の成立と例えるなら、ファーストが現役だった頃は、個の能力と技量が物を言う、武の達人が活躍した時代と例える者もいる。

 ストップモーションアニメのようにも見える独特の動きで、ガンリューは怪獣を圧倒し始めた。

 世界は、かつての人類の希望の象徴が健在であることを知った。

 本人は嫌がっている「ザ・ファースト・バスター」という異名。「ファースト」の由来はただ「JKで初めて戦った」あるいは「JKで初めて怪獣を倒した」というだけだった。しかしやがて、それだけではない意味合いを含むものへと変化していた。

 すなわち、「一流の」「最高位の」。人によっては、「第一位の」という意味合いで使う。それが、あらためて知らしめられたのだ。

 ガンリューの参戦は、個の戦力としては大きい。だがそれ以上に。

『うぉーーッ‼』

『『『うぉぉーーーっ‼』』』

 チャノのテンションが上がり、思わず叫んだのを皮切りに、バスターたちは鬨の声をあげていた。

 生きる伝説の戦いぶりは、さきほどの言葉よりも遥かに雄弁であり、間違いなくバスターたちの士気を高めていた。これまでも間違いなく全力だった、本人たちこそ、その変化に驚くほどに。

 超大型を含めて残り十体ほどまで怪獣を減らしたころ、JK側はガンリューとベールクト、そしてトリックスター他数体になっていた。

 満足に戦えるのは、参戦の遅れたガンリュー、どちらも撃ち尽くしてしまったが銃器を使っていたファイティングナードとヴァルキュリヤ、そして多少は損傷して動きがわるくなっているが、大柄な理由がヒット&アウェー重視で特にバスターの腕も立つベールクトぐらいだった。

 戦場の構成要素が減った分、バスターたちの選択肢は減っている。

 超大型怪獣をできるだけ刺激しないといっても限界があり、事態は緊迫していた。

 司令部のニナは、決断して指示を出す。

『ここまで来たら、最優先で超大型怪獣を仕留めて!』

 大型怪獣も複数残っているが、構っていられなかった。

 だが、わずかに判断は遅かったのかもしれない。

 超大型怪獣の口が開かれ、桃色の光が溜まり始める。

『みんな、倒れてる怪獣の陰へ!』

 ニナの指示は、そもそもシミュレーションでも確認されていた内容であり、ほとんど皆、咄嗟に対応できていた。

 薙ぎ払う形で使われたと想定しても、これまでに行動不能になっていたJKのほとんどは範囲外であり、それは僥倖と言えた。

 しかし。

 超大型怪獣の正面、一体だけ直撃しそうな位置に、跪いた姿勢で動けなくなっているJKがあった。

 その近くにいたガンリューは、何度か武器を変えた結果使っていたベールクトのブレードを振り回してスライド移動し、射線を遮る形で割って入る。

 そしてもう一体、ガンリューからはそれなりに近く、戦線から離れそうだった小型怪獣を追撃した直後だったベールクトは、近くに身を隠せそうな怪獣や地形が存在しなかった。

『ラリサ、来い!』

 ラリサは、思考は挟まず走り出してからナゴミの意図を考えた。

 一緒にそのJKを守る盾になるのか、身を縮めてガンリューの陰で耐えて反撃に移るのか。

 どちらかと言えば正面のほうが装甲は厚いだろうに、武器を手放したガンリューは超大型怪獣へ背を向けて身をかがめた。

 バレーのレシーブのような体勢をとったのを見て、ラリサは察して叫ぶ。

『先手必勝!』

 合流はわずかに遅く、二体はゆっくりと横薙ぎされる光に飲み込まれつつあった。

 照射の初期段階で、ベールクトはガンリューが組んだ両手を足場にして高く跳躍し、光線から抜け出た。それでも外装がただれるように溶けかけている。

 ガンリューは、ベールクトを打ち上げるや、あらためて擱座しているJKをかばうように、超大型怪獣へ正面を向けながら光に飲まれた。

 宙を舞い縦回転すらするJKの中のラリサは、光に包まれるガンリューを視界の端に捉えていた。涙が出そうになるが、今はそれどころではない。

 上を取られた超大型怪獣がつられるように顔を上げた結果、光線の向きは空へと変わった。だが、外装が溶けたガンリューは、すでに原型を留めていなかった。

 軌道を変えた光線に捉えられる前に照射が終わり、ベールクトは落下の勢いに腕力を加え、超大型怪獣の額のクリスタルコアへ右手のブレードを深々と突き立てた。追い打ちとばかりにそれを蹴ってめり込ませ、さらに跳躍する。

 渾身の一撃の衝撃と酷使で右腕の機能は全般に低下していた。

 構わず左手のブレードを両手で構えなおし、騎体の全重量と膂力を以て、今度は首の付け根のクリスタルコアへブレードを叩き込む。

 ベールクトは力尽きたように落下し、追いかけるように超大型怪獣も倒れこんだ。

 双方、完全な機能停止へは至らないが、立ち直って歩けるだけの余力は無いようだった。

 地面に倒れ、あがくように動く超大型怪獣は、素人目にはほとんど脅威は無くなったように見える。

 中継を見る一般人には、安堵した者も多かった。

 巨大な口がふたたび開かれ、光を帯びる。

 傍らに転がるベールクトは、攻撃の反動や落下の衝撃などで、もうまともに動ける状態ではない。

 しかし、バスターはバスターだ。

 さきほどの光線が止むや、トリックスターたちはすぐに超大型怪獣へ向けて駆けていた。

 いくらクリスタルコアを傷つけようが、怪獣が完全に沈黙するまでバスターはけして油断しない。それが「バスター」という総体として、犠牲すら伴ってきた経験の蓄積だ。

 エースたちの集中攻撃は、容赦なく超大型怪獣のクリスタルコアを粉砕した。

 少しして残りの怪獣も掃討され、その場に立っているのは数体のJKだけになっていた。

 ガンリューの外装は原型を失い、溶解した金属などが表層を覆っていた。ナゴミからの通信は無く、司令部はモニタリング装置を通したバイタルサインも確認できていない。

 満身創痍で、まともに戦える自在甲冑はもう無い。ただ、動いている怪獣の姿も無い。

『みんな、ごめんなさいね』

 現場の一同への通信は、ニナからだった。

 謝る必要性など感じないチャノたちへ向けて続いた言葉は。

『デメリットしか無いと思ったから今まで言わなかったんだけど、もうひとつ、群れが向かってきているの。超大型怪獣もいるわ』

 目の前の超大型怪獣たちに集中しきっていたチャノたちがあらためて視線を向けると、たしかに小さく見える姿が多数、遠くに見えた。

 状況は、絶望的だった。

 バスターたちは、まともに動かないJKで少しでもそちらへと移動し始めた。

 さきほどの群れほどの総数はいないが、大型怪獣の比率はさらに高い。とても捌ける数ではない相手に対し、それでも歩みは止めない。

 距離が詰まった頃、戦闘に気をとられて第二波に気づくのが遅れた彼女たちは、今度は後ろから来ていた存在に気づくことができていなかった。

『みんな、どいてーッ!!』

 突然、チハの声が聞こえ、振り返ろうとしたトリックスターとファイティングナードが、駆けて来た巨大な何かを咄嗟にかわそうとしてバランスを崩して転倒した。


『ええと、ええと……炸裂!! ネコキック‼』

 チハの掛け声とともに、左脚を踏ん張ることで急ブレーキをかけて地面を抉りながら滑るドラムキングの右回し蹴りが、一体の大型怪獣の頭部クリスタルコアに直撃した。

 爪先は普段は丸いが、さながらネコの爪のごとく、圧力に応じて硬い棘が露出するようになっており、それがクリスタルコアに横から深々と刺さって粉砕していた。

「チハたち、そのJKでだいじょうぶなのか!?」

『根性で!』

『努力もしましたもの』

『『なんとかしますよ/なんとかしますわ!』』

 チハとレイコは断言し、ネコ風の顔の巨大な自在甲冑は堂々と仁王立ちした。


 蹴られた怪獣に動く気配は無かった。

 周りの怪獣たちが、巨大なJKに警戒する様子を見せる。

 ドラムキングは、でかい頭を通常の人間型に置き換えても身長四十メートル。身長十六メートルの通常のセカンドJKと比較すれば、大人と子供どころではない。

 その巨体は、体長や体高が五十メートルほどにもなる大型怪獣相手にも体格面で見劣りしなかった。


 メインコックピットで腕を組むチハは、少し興奮していた。

「いけそうですね!」

『ええ。では、フェイスオープン、戦闘モードへ』

 同じく手応えを感じているようなレイコの声に合わせ、チハの視界が真っ暗になった。

 すぐにその暗闇に縦に光の線が入り、それが広がって視野が開ける。

 先程までの、やや高めで妙に身体の前面側にあるように感じていた視点は、より人間の顔からの視点に近くなった。

 HMDの片隅に騎体の全体像があり、それが現状の概要を示している。視線を向けると拡大表示された。

 着ぐるみの頭のような大きな頭部がまん中から縦にまっぷたつに割れて左右に展開して肩鎧のようになり、耳のようだった突起も肩から斜めに突き出すような形へ変化する。割れた頭部の中からは人間のような大きさの頭部が新たに現れていた。ややアニメの正義のロボット風の顔は、やはり少しネコ的な意匠が残っていた。

 試験も何もないまま、これが実物での初使用だが、この姿がドラムキングの真の「戦闘モード」なのだ。

 今までの姿には、移動の際に視野を広く確保する、走行時の体感速度を下げる、重心バランスを走りやすいようにするといった意図が含まれていた。

 機能のシフトのコンセプトとしては、タビーキャットタイプに似ている。

 戦闘モードは、視点と全身の重心バランスなどが人体に近くなるだけと言えば、その通りである。

 チハは、事前のシミュレーションでは説明を受けて使用していた。

「やっぱりかっこいいですね!」

『はしゃいでいる場合ではございませんわ。あちらは温存したいので、出し惜しみ無しでいきますわよ。ネコパンチ、ロック解除』

 レイコの言葉の後で、移動モードでは耳のようだった肩の円錐が地面に落下した。

 接続されていた基部には握りが付いており、ドラムキングはそれを掴んで、ボクシンググローブのように構えた。「ネコパンチ」という名称ながら、形状は武器としてはえげつない。

 蹴られて動かなくなった大型を除いて一番近くにいた大型怪獣が、ドラムキングがどういう存在かを確認するかのように近づいて来た。

『申し訳ございませんわ』

 謝罪は、怪獣に向けてだった。

『チハさん、行きますわよ』

「はい!」

 チハが全力で叫んで構えると、彼女の視界、大型怪獣の頭部クリスタルコアに、赤い三角印が表示された。

「どっせえぃーーッ‼」 

 絶叫を伴って放たれたのは、リエルから習った拳突きだった。

 ドラムキングの筋肉配置は人体とは異なるので、あくまで参考にしてチハが動作を再現できるように再構築したものと言える。チハひとりでは困難な動作だが、狙いのブレも含め、レイコが補正することで実現している。

 円錐の頂点は見事にクリスタルコアを貫いて砕き、有り余る衝撃は、全長四十メートルを超える大型怪獣を吹き飛ばしていた。

 現場のバスターたちも、司令部の人間も、中継映像を視聴している者たちも。

 その一撃に度肝を抜かれていた。


 バスターの基礎として、「運動エネルギーは質量に比例し、速度の二乗に比例する」というものがある。

 通常は、後者の重要さを語る意味合いで使われることが多い。

 現実には、運動エネルギー=破壊力と単純化するわけにもいかないが、大雑把なイメージで語るのであれば、質量つまり重さが二倍だと破壊力が二倍だが、速度が二倍なら破壊力は四倍、速度が十倍なら破壊力は百倍という話である。

 そしてもうひとつ、自在甲冑界隈でよく語られるのが、「長さが十倍なら、面積は百倍、質量は千倍」である。

 身長が二倍だと、体重は八倍。ドラムキングの身長は、並のJKの二倍どころではない。

 しかも、腰に溜めた拳を伸ばし切るまでの速さ。

 完了までの時間はリエルに劣っても構わないのだ。チハとしての評価尺度はリエルの動作時間になるため不満があるが、そもそもスケールが軽く十倍以上である。同じ動作時間で完了した場合、「速度」も十倍以上になってしまう。二乗すれば百倍以上だ。

 仮にリエルがそのまま身長十倍になった場合、体重は千倍となり、拳突きの「動作完了までの時間」をまったく変わらずに行えたとすると、その威力は「千倍(質量)×百倍(速度の二乗)=十万倍」となる。現実には、もちろん人体では不可能である。

 しかし、チハとレイコの技術、そして怪獣由来の素材でできたドラムキングは、それ以上のものを実現してしまっていた。


「どっせいッ!」

「どっせいィッ!」

「どッっせいィァーーッ!」

 次々と繰り出されるのは、ひたすら同じ技である。

 ただ、高さに合わせて角度などが異なるだけ。

 狙えるときは直接クリスタルコアを砕き、それでなければ身体ごと吹き飛ばして相手の体勢を崩して距離を取り、あるいは頭部を始めとした各所を殴って衝撃で体型を歪め、あるいは関節を外して動きを阻害していく。

 ネコパンチはクリスタルコアを砕けるが、他の部位に当てても特に大したダメージにはならない、というのが開発陣の想定だった。

 個々の部位で見れば、怪獣の体組織は頑丈だ。クリスタルコアが弱点なのは、ダイヤモンドと同様に、硬いゆえに衝撃を受けた際に変形することができず、脆いことによる。それ以外の組織は、基本的には組織の結合が強靭であり、柔軟性は組織により異なるが、ある程度の変形をしつつも、そうなることによって損傷はしない。甲殻や鱗のようであることが多いUシェルでさえである。

 怪獣とJKに共通する関節の弱さというのは、形状の一致と周囲からの圧力によって収まっている骨格同士の位置をずらしてしまえることによる。組織の結合は維持されていても、他の部位と異なって、変形がそのまま機能不全へ繋がりやすいのだ。

 翻って、先ほどから打ち込まれているネコパンチは、あまりの衝撃で周辺の組織全体へ変形を及ぼすほどのものだった。

 膨大な運動エネルギーが、分散せずに尖った先端へ集中していることにもよる。

 身体の細い末端に、自らの体重をすら乗せるかの如く威力を集中させる格闘技。これもまた、人類が積み重ねて研鑽してきた、怪獣にはできない「技術」なのだ。

 あたりどころによっては動作不全も期待できることを把握してからは、レイコはそれも判断に加味していた。

 チハは、レイコが表示するマークに従って、とにかく技を繰り返す。

 手応えとしての精度は低く、タイミングがずれることもあれば、怪獣が予想外の動きをして逸れることもある。だが、レイコの補正はすべてをフォローし、放たれた拳は魔法のように狙ったところへと吸い込まれていた。

「先輩、すごいです!」

『九割以上はあなたの力ですのよ』

 理屈として間違いではないが、その一割が無ければ台無しである。

 チハが視界に表示された矢印に従ってドラムキングの向きを変えると、今度は怪獣の顔の側面に赤い丸印が表示された。

「とぅァーーッ!」

 気合いとともに繰り出されたのは、回し蹴りである。不安定で咄嗟だった先ほどとは違う。

 直撃したそれは、怪獣の首の関節を外し、猛烈な勢いで吹き飛んだ怪獣は回転しながら何度も地面をバウンドし、最後には滑って沈黙する。そもそもヒットした瞬間に、爪先から飛び出た棘がクリスタルコアを貫徹して砕いていた。


 先日、プリズムシンセのふたりにコンビネーションの仕組みを聞いた後、レイコはチハに説明していた。

「こちらが戦闘モードですわ。より人体のバランスに近くなるので、格闘動作は多少しやすくなるはずですわ」

 画面に表示された姿に、チハが目を輝かせる。

「これはこれでかっこいいですね!」

「今まで試していたのは、移動時、走行時のバランスを安定させるための姿でしたの。まずそちらで歩くことすらできなければ、こちらを試す意味もございませんので、使っておりませんでしたの」

「なるほど」

「歩くことはもうほぼチハさんひとりでできますし、延長としての走る動作も練習すればふたりでできそうですわね」

「はい」

「つい、普通のJKを基準にして、ふたりで自由に動かせるようになろうとしていましたけれど、今の目的は実戦投入ですわ。戦闘の動作は、練習の精度を上げる意味でも、息を間違いなく合わせる意味でも、限定してしまえばいいのですわ。まずは、あなたが習った突きと蹴りだけに」

「でも、実戦で格闘技は使えないって……」

「それは通常のJKではリーチや破壊力が不足するためですわ。ドラムキングは、動かすことさえできましたら、どちらも問題にはなりませんもの。元々、拳や蹴りでの攻撃も想定されていましたの」

「じゃあ、わたしが習ったのって」

「素敵ですわね。きっと生かすことができますわよ」

「はい!」

「ですので、基本はまず二択。精度を上げるために、さらに符丁、いわゆる合言葉のようなものを決めますわ。例えば、わたくしが攻撃する場所と種類を表示しまして、タイミングはあなたに合わせますの。そのために、掛け声を決めていただくなどして。咄嗟の場合の先導はあなたから」


 三角。

「どっせいッ!」

 拳突き。

 三角。

「どっせいッ!」

 拳突き。

 丸。

「とぅァーーッ!」

 回し蹴り。

 二体の怪獣が突然同時に距離を詰めてきたことを受け、チハは一度に相手をしなくていいよう、二体が縦に並ぶように斜め後ろへ身を引いた。

 レイコが指示を表示するよりも早く、

「必殺‼ ネコパンチ‼」

 大型怪獣は額のクリスタルコアを砕かれつつ吹き飛び、後ろの怪獣は巻き込まれて倒れこむ。

 技自体は今までと同じ拳突きである。

 チハの判断で繰り出す場合、「必殺、ネコパンチ」と「炸裂、ネコキック」が合図なのだ。


 青い巨人はタイミングや角度を変え、向かってくる怪獣たちを、ひたすらそのふたつのみで捌いていく。

 どの怪獣もドラムキングを敵と判断し、超大型怪獣を守るようにも動く結果、順次ドラムキングへ向かってくるのは幸いとも見えるが、それは外野でなければ言えない。

 レイコは半透過のHMDと周囲に並ぶモニターに素早く目を通し、数十体の怪獣たちの位置関係や動きを把握し、優先順位をつけてチハへの指示表示と操作補助も並行して行っている。チハの操作技術もだが、レイコの能力も尋常ではない。


 リエルは、同級生たちと訓練校の地下シェルターにいた。

 相対的に怪獣出現地域に近いため、下手に移動するよりも、事態が落ち着いてから移動先を決めたほうが安全という判断により、元々そう決められていたのだ。

 比較的危険とも言えるここに訓練校があるのは、対特殊生物自衛軍基地に近い方が人員や設備等を共有しやすいからであり、広い土地を安く確保できるからでもある。

 地表の施設は最低限の電力消費に移行し、構造上シェルターからの電磁波放射は最低限となっている。結果的に街へ向かう怪獣がこのあたりを通ることはあまり無いはずだった。

 生徒たちには不安そうな者もいるが、気にせずにイベント的に楽しもうという者も多い。

 怪獣は倒されるかもしれないし、途中で方向が逸れるかもしれない。

 直面していないのに心配しすぎてもしょうがないというのは、幼い頃にどうしようもない事態を目の当たりにした者たちだからとも言える。ただの考え無しや感覚麻痺というわけではなかった。

 備え付けのテレビでも映されているし、あちこちで携帯電話を使って中継の様子を皆が固唾を呑んで見守っていた。

 画面の中、格闘術で怪獣と戦っている巨大なJKの身のこなしは。

「榊さん、これ……」

 自分の目を疑っていたリエルにクラスメイトが声をかけた。

 そんなことができたところでJK同士のケンカでしか意味が無い、成績上評価もされなければ、実戦で役に立つことなどない。彼女がくだらない特技だと自嘲していたそれが、今、大型怪獣たちを蹴散らしていた。

 通常のJKではリーチや体格からくる質量と遠心力などにより、ただの格闘術で得られる破壊力はじゅうぶんとは言えない。クリスタルコアは脆いとは言え、仮に大きく不利な体格差でダメージを与えるほど殴ったり蹴ったりすれば反動で騎体にも損傷が生じる。

 主にその両面を補うために武器を使う。それが、格闘技が怪獣相手の実戦では意味が無いという理由。

 ドラムキングの巨体であれば、大型怪獣相手にもじゅうぶんに格闘戦を展開できていた。

 円錐形のナックルガードを使い、武術の達人のように様になる、スケールに似合わぬきびきびした動作で敵の攻撃をいなしていく。

 立ち位置を変える以外の動作、攻撃動作を構成するのは拳突きと回し蹴り、ただそれだけだった。角度やタイミングの使い分け、それのみで見事に捌いている。

 そのJKの姿に、リエルは自分が教えていた時の、真摯に弛まず取り組んでいたレイコと、気絶するまでひたむきに全力だったチハの姿を見出した。

 リエルはチハの発言を思い出す。「無駄じゃないよ。何がどう役に立つかなんて誰にもわからないし、少なくともわたしは誰かが一生懸命がんばったことが無駄だなんて絶対に思わない」

 言われた時、うれしくなかったと言えば嘘だった。ただ、ナゴミやレイコなどと違ってチハはバカだから、何も知らないからこそ言っていると思った。

 チハは今、その身を持って証明してみせていた。

 リエルは思う。チハは気づかないだろう。彼女が真剣にリエルに向けて言った言葉。それはそのまま自分に返る。

 絶対に、絶対に、チハのあのがんばりが無駄になんてならないように。

 リエルは心から思うのだ。

「クナシキ、負けるな……!」


 形としてのドラムキングの体型は、ファーストのようなバランスだ。

 そもそもドラムキングの内部のUマッスルの配置はファーストともセカンドともまったく異なる。

 セカンドでメジャーなHM型やMS型は、四肢を広げた際の内側と外側にそれぞれUマッスルを偏らせたようなデザインだ。それによって各々に得意な動作が生まれている。

 乗り手の得意なスタイルに合わせて得意な動作に安定を求めるのは、逆に苦手な動作を生むことでもある。

 ドラムキングの体型はどっちつかずで、特に重心や慣性のつき方においてファーストのような不安定さがあると言える。それは設計上の要請で、データを収集してより好ましい形へ近づけていくための仮の体型だったことによる。

 戦闘機は初期には安定して飛行する形状を求められた。舵をとらずとも空力によって自動的に安定した姿勢で飛ぶ、そういう形にまず進化した。それは飛行機として自然だし、一般人でも理解しやすいだろう。

 ところが、ある時代から機体の空力設計上はあえて不安定にするということになった。ただ動力で動かすだけでは無茶苦茶に動いて墜落する方向だ。事情を知らなければ見当違いにしか思えない。

 安定した飛行をする働きがあるということは、急激な方向転換などに対する抵抗があるということでもある。そこで、空中戦を行うにあたり急激な機動を要求される戦闘機は、あえて不安定にした上で、ただ飛ばそうとすれば人間による操作では安定させられないほど細かく繊細な操作で修正して無理やりまっすぐ飛ばすということを、コンピュータとプログラムの補助で行うようになった。その補助をわざと外すことにより、不安定であるがゆえに急激な機動が可能になるわけだ。

 ドラムキングの体型は狙ったわけではないが、結果的にそれに近い。安定した動作をさせるのは一苦労だが、使いこなせる限りは動作の応答可能速度は速く、一見無理な動作にも融通も効いた。

 それは、生き物としての人間が自然と身につける、バランスを崩した際にそれを回復しようとするなどの反射的な行動を理性で意図的に抑制・カットすることで、より論理的に効率的な動作を行う、古武術の技術にも似る。


 ついに、超大型怪獣とドラムキングは一対一で向かい合っていた。

 体型も違うので単純な比較はできないが、身長十六メートルのセカンドと体長五十メートル前後の大型怪獣との体格差と身長四十メートルのドラムキングと全長百二十メートルほどの超大型怪獣との体格差は近いと言える。

 だが、ふつうは大型怪獣相手にセカンド四体の小隊で挑む。それも自在に動けるエース込みでの。

 バスターたちがシミュレーションでこなしているように、情報がある相手、慣れた相手であれば、仮に実戦でもセカンドで大型怪獣を一対一で倒せないこともないだろう。

 しかし今回は初見の相手に、ふたりの乗り手が息を合わせなければまともに動けない状況だった。

『チハさん、ネコパンチを放してくださいませ』

『はい、先輩』

 尖っていたナックルガードはすっかりつぶれて原型をとどめていなかった。それが地面に落ちる。

『如意棒の投下を願いますわ』

 レイコの要請を受けて、空中で待機していた輸送ヘリが高度をやや下げて、ワイヤーで吊っていた「如意棒」をドラムキングの頭上で投下した。

 それは正式名称である。チハは初めて見た時、「物干しざおみたい」と言った。青い棒の両端に金色の装飾が付いている。

 そのまま右手でキャッチしたドラムキングは、達人のように棒を構えた。

 仲間をすべて失って距離が詰まった超大型怪獣は、威嚇するように頭を下げてドラムキングを睨み、口を動かした。

 全長は百二十メートル以上あるが、ティラノサウルスのように尾と頭でバランスを取る姿勢で顔を下げると体高はドラムキングの身長より少し高い程度だ。

 その体勢から、相手はいきなり突進してきた。先程までの、起き上がったカンガルー姿勢での歩行スピードとは別次元だった。

『はぁッ‼』

 気合いとともにドラムキングは身を引き、しかしかわし切れずに大きく吹き飛ばされた。

 見ている者たちは息を呑む。

 ドラムキングの左腕の外装は大きく剥がれ、動きもぎこちなくなっていた。

 向き直って威嚇する超大型怪獣の顔面、右眼のあたりには火傷のような抉り痕ができていた。

 衝突の刹那、チハは身をかわしながらも頭部のクリスタルコアを狙って如意棒を突き出していた。その瞬間、如意棒の先端、金色の装飾の部分からピンク色の光が三又状に伸びていたのだ。

 如意棒は、ただの棒ではなくビームジャベリンなのだ。

 エネルギーのロスを最小限にするべく、レイコは交錯の一瞬だけビームを発振していた。

 棒状のものを持つ結果として、大きくは突きと払いという二択に動作を絞ることにも繋がっている。拳突きと蹴りが形になってから、打ち合わせも練習も済んでいる。

 あらためて、ただの物干し竿に見える如意棒を構えるドラムキングに怪獣は警戒する様子を見せた。

 怪獣の背中の腕のようにも見えていた部位は、左右それぞれに長大な爪を伴う三本の巨大な指のような形として広げられた。

 怪獣は軽く横にステップしながら左のクローで鋭い突きを繰り出す。

 ドラムキングはギリギリで外装に傷を受けながらもビームジャベリンを用いて爪の一本を途中で切断した。

 二度、三度と、左右のクローが繰り出されて攻防を繰り返す。

 ドラムキングは先程損傷を受けた左腕の動きが悪く、身のこなしに影響が出ていた。

 クローを弾き、受け流し、先端をもう一本切り落とすことはできたが、ここからどちらが有利にも傾きえる状況にあると言えた。全身の損傷の度合いから言うと、ドラムキングの方が不利とも見える。

 また一度のやりとりの後、お互いの隙を窺うように睨み合っていながらじりじり動いているときだった。

 怪獣が口を開いた。口の中に桃色の光が溜まり始める。

 ドラムキングの背後、離れたところには、戦いに参加できずに傍観し続けていたトリックスターたちがいた。満足に動けないものも多い。

 レイコは把握していた。ドラムキングがかわしても、後ろの誰かに高確率で直撃する。

『このまま撃たせてはいけませんわ‼』

 瞬時に理解したチハは咄嗟に行動していた。レイコも全力で補助する。

 打ち合わせに無い動作は、不完全だった。

 ドラムキングは如意棒を掴んだ右手を怪獣の口に押し当て、力の限り斜め上へと逸らすことを試みる。

 怪獣の口から放たれた破壊光線は、空へと吸い込まれた。

 ドラムキングの右手は手首のあたりから先が完全に吹き飛んでいた。断面は丸く焦げている。

 如意棒も焦げた断面でふたつになり、地面に転がっていた。

 ドラムキングは、押し返すように頭で押されて尻もちをついた姿勢から身を起こす前に、クローで左腕を掴まれて振り回された。

 四十メートルの巨体が腕一本で軽々とおもちゃのように振り回され、ドラムキングの腕は、肩も、肘も、ぐちゃぐちゃに捻じれた。それでもちぎれないのがU素材の頑丈さだ。

 絶叫マシンが可愛いレベルで宙を舞うチハは痛みに顔を歪めていた。弱めとは言え、彼女は騎体からのダメージフィードバックを痛覚で行なっている。

 直後、同じく激しく天地が入れ替わり、強いGに晒される中、レイコは両腕からの痛覚フィードバックを完全に切った。

 ドラムキングは勢いよく放り投げられた。

 巨体はなすすべなく空中で無様に回転し、右腕から落ちる。

 なんとか腕をついて姿勢を起こして立ち上がるが、完全にぶら下がるだけの左腕に、右腕も関節ががたがたで、もう持ち上げることもまともに動かすこともできなかった。

『チハさん、左腕は完全にデッドウェイトですし、どちらにしてもバランスがとりづらいだけでしたら、切り離した方が身軽になると思いますわ』

 緊迫した表情ながらも各種機器で状況を冷静にチェックしたレイコが提案した。

『……はい、先輩、右腕も肘から先、切り離してください』

『かしこまりましたわ』

 放心しているようなチハの穏やかで小さな声を訝りつつ、レイコは手早く自切命令信号を出す操作をした。

 ドラムキングの左腕は肩から、右腕は肘から先が、自切されて地面へと落ちる。

 両腕を失った試作JKは立ち尽くした。


 ※予告※

 両腕を失ったドラムキングは、怪獣に背を向けて歩き始める。

 絶望的な状況に置かれたレイコは、チハの判断に身を任せることを宣言する。

 戦闘が終わった後、損傷したドラムキングの修復には日数が必要だった。

 チハとレイコが代替手段を模索することになった時、とある複座型試作JKが候補にあがる。


 次回、第8話「決着、そして新たなる力」

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