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21.


騒動がひと段落して、アルは日常を取り戻していた――。

――とはいかず、あれからアルの学内注目度はさらに上がった。


「あれが剣聖さまをも上回ったというアルくんか……」


「さすがだな……カッコいい……」


などと、道行く生徒が噂をしている。


「困ったなぁ……また目立っちゃったよ……」


などと思いながら歩いていると、アルの後ろから一人の生徒が声をかけた。


「あの……剣聖さまですか……?」


「はい……?」


アルは一瞬、ドキッとしたがすぐに「そんなはずはない」と落ち着きを取り戻す。

アルが剣聖エルフォであることを知る人物は、現剣聖のララフしかいないのだ。


「いや、僕は剣聖じゃないけど……? 剣聖はララフ理事長だよね? なにか勘違いをしていないかい?」


アルは振り返り、優しく諭すように言う。


「いえ、勘違いではありません、剣聖エルフォ」


「…………!?」


その言葉を聞いて、アルは驚き、困惑し、焦る。

前世の名を知る人物など、思い当たらない。

それに、そのことを知っているということは……なにかとんでもない秘密を握っている人物だということだ。


アルはその生徒の口を手でふさぎ、人気のないところに連れていく。


「ちょっと……!」





「君……いまなんて!?」


「だから……剣聖エルフォですよね?」


その生徒は、少女のような見た目をした男子生徒だった。

その点はアルも同じだが、アルよりさらに少女の成分が多いように思えた。

背も低く、体型も華奢である。


「どこでそれを……? 君はいったい……?」


アルは素直に疑問を口にすることにした。

考えても妥当な可能性は思い当たらなかった。


「お気づきではないのですか? 私は、あの(・・)ときの斥候です!」


「…………?」


言われても、アルは数秒意味が分からなかった。

あのとき――とはどのときであろうか。


アルはまだ生まれて何十年も経っていないし、こんな知り合い、いた覚えがない。

それに、アルの知る限り、この人生で「斥候」などという言葉とは無縁だった。


ということは――前世。

そこまで記憶をさかのぼり、呼び起こす必要がある。


「…………君は!?」


「ようやく思い出されましたか……」


そう、剣聖エルフォが死んだとき、アルに転生したとき――。

そのとき剣聖エルフォの近くにいたのが――この若い斥候兵の男だ。

だがそれがどうして、アルと同年代の子供の姿をしているのだろう。


「君も…………転生したのか…………?」


「はいそうです。私も、あのときあなたと一緒に、魔法攻撃に巻き込まれて死にました」


「そうだったのか……」


なんとも不運なことである。

アルの中の剣聖エルフォはそう、気の毒に思った。


「それで、君はこの転生についてどう考える……?」


アルは境遇を同じくする者同士、この男子生徒と情報交換をしようと思った。

唯一、同じような数奇な体験をしてきたのだ。

なにかいい進展が図れるかもしれない。


「そうですね……転生したのは何者かによる魔法の効果だと思いますが。その目的まではわかりませんね……」


「そうか……そこは僕も調べているところなんだ。でも、これから協力してやっていけたらうれしいな」


「そうですね。お互いにこの謎を解き明かしましょう」


アルは男子生徒と、握手をかわそうとした。

しかしそのとき、妙な気配を感じたのだ。

あのとき(・・・・)感じたのと同じような――。


「お父様! そいつから逃げてください!」


「…………!?」


アルを制止したのは、ララフの声だった。

アルは急いで男子生徒から間合いをとる。


「……っち、気づかれたか……」


男子生徒はそう唇をかむ。


アルはようやく状況を理解する。

この男子生徒は、いま、自分を殺そうとしていたのだ。

感じた妙な気配というのは、殺気であった。


では、なんのために……?


「そうか……!」


アルの中のエルフォの記憶、意識、人格が、一気に戻ってくる。

今まで記憶に蓋をしていたのだ。

それが、この出来事をきっかけに、溢れ出す。

そして点と点がつながったように、すべてに合点がいく仮説を閃く。


「おまえ、あのときおれを殺そうとしていたのか……?」


アル――ではなくエルフォは、目の前の少年にそう問いかける。


少年――ではなく若き斥候は、答える。


「ああ、そうだ……二度も失敗したがな」


そして、物語は佳境へ!


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