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34.番外編 ラドルフのその後【サイド:ラドルフ】【ざまぁ】


 家を売り払ったラドルフは、大金を手にしていた。


 アルは出ていった。ベラは捕まった。キムは捨ててきた。


 もはやラドルフにはなんのしがらみもなかった。


「ふん、それにしても腹立たしい。わしはもう終わりだ」


 ラドルフもまた、やけになっていた。


「せめて死ぬ前にこの金で豪遊しようか……」


 ラドルフがやってきたのは比較的都会にある娼館だった。


「今日は金があるからな、とことん遊べるぞ」


「新人の子が入ったんですが、どうしますか?」


 店の男がそういうので、ラドルフは適当に返事をする。


「ん、まあいいじゃろ……」


 ラドルフの前に現れたのは、キムだった。


「お父様……」


 キムは絶句していた。自分を捨て、家を売り、その次に訪れる場所がここかと……。


「ん? なんだ? キムに似ているな……」


 知ってか知らないでかは分からないが、ラドルフはそんなことを言う。


 昼間からやけ酒に浸っていたせいで、意識がもうろうとしているのかもしれない。


「ちょっと……」


 状況を飲み込めないでいるキムがつっ立っていると、ラドルフが近づいてきた。


 ラドルフがキムを認識できなかったのも無理はない。


 キムは連日の放浪ですっかり別人のように痩せこけ、すたれた見た目になっていたのだ。


 キムの顔にラドルフの酒で蒸れた息がかかる。


「うっ……」


「ぐっへっへ、豪遊じゃー」


 ラドルフは嫌がるキムの顔をみて、心底嬉しそうに嫌な笑いを浮かべるのだった。


 



 娼館を遊びつくしたラドルフは、カジノを訪れていた。


「ふぅ……。なんだか今日は女の子の反応がいまいちだったのぅ……」


 カジノで遊びながらも、ラドルフはどこか夢心地、現実味がなく、浮いた気分だった。


 ドラッグのせいか酒のせいか、それとも現在の境遇によるものか。


 もはやどうとでもなれと思っていた。


 そのおかげか、不思議と上手く勝つことができた。


「ほぅ……わしもまだまだ終わってないな……」


 元手が大きかったこともあって、ラドルフはかなりの大金を手にしてカジノを出る。


「ちょっとあなた、儲け話に興味はない?」


 カジノを出たところで、色気のある女がラドルフに声をかけてきた。


 赤いドレスからすらっとのびた足が、ラドルフの男心を妙にくすぐる。


 思わずラドルフは足をとめて、その女の怪しい話に乗ってしまう。


「儲け話……?」


「そう、ちょっと内緒のいい話があるのよ……」


 女の話はにわかには信じがたい話だったが、もし本当に上手くいけば、一発逆転も夢ではないようなうまい話だった。


 絶体絶命のラドルフにとっては、ぜひともあやかりたい。そんな話。


(ふむ……それだけの金があれば、わしももう一度どこかでやり直せるかもしれん……)


 これに彼は飛びついた。


 もともとカジノで得た金は、降って湧いたようなものだったし、惜しくない。


 とりあえず詳しい話を聞くために女と行動を共にする。


 話し合いは隠れ家のような飲食店で、秘密裏に行われた。


 若く魅力的な女性と、秘密を共有してこそこそするのは、ラドルフにとっては新鮮な体験だった。まるで青春時代に戻ったかのようなわくわく感で、年甲斐もなくラドルフはイキイキしていた。


 何杯か飲んだはずみで、女と宿に流れ込む。


「いいのですか……? わしとは今日出会ったばかりだし、それにあなたがしたいのは金の話だけでしょう……?」


 ラドルフも、自分のようなオヤジに価値などないことは自覚していた。彼女はただラドルフの金にあやかりたいだけなのだ。


「そんなことありませんわ……。それに、あなたもまだ私のことを信用できてないでしょう? だから、ね……?」


 そして夢から覚める時間が来た。


 翌朝ラドルフが目を覚ますと、女と共に金もすべて消えていた。


「あの女……!」


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