願いを叶えてくれる悪魔
ある日、願いをかなえてくれる悪魔を呼び出すことに成功した。
対価として、命は奪われないおまけつきである。
「お金が欲しい!」
願いは叶えられた。
目の前に数えきれないほどの札束が現れた。
それに伸ばした手が皺だらけになっていた。
お金の代わりに、時間を取られた。
別の人間も悪魔を呼び出した。
「お金が欲しい!」
∞と表記された通帳を手に入れた。
代わりに、母も、父も、兄弟も、親友も、お隣さんも・・・彼を知る人間がすべて消滅した。
また、別の人間が悪魔を呼び出した。
「お金が欲しい!」
黄金が部屋に積まれていた。
彼は病院のベッドの上からそれを眺めていた。
健康を奪われたのである。
またまた、別の人間が悪魔を呼び出した。
「お金が欲しい!」
多量の株券を手に入れた。
しかし彼はそれが何か理解できない。
知能を奪われていた。
またまたまた、別の人間が悪魔を呼び出した。
悪魔は言った。
「願いを言え。億万長者か?それとも、権力者になりたいか?」
「そんな大それたことは願いません。ただ、静かな池のほとりで、狭い家で妻と二人で暮らし、のんびりと釣りでもしながら余生を過ごせればそれで充分です」
「そんな贅沢を望むとは、なんと欲深い人間だ」
悪魔はあきれ果て、何も奪わずに消え去った。