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第2話 使用人の朝 後編

ユアさんに懐中時計への篤い思いと当時のお嬢様のお可愛さを語り、ふと時計の文字盤を見る。



「ユアさん、そろそろお嬢様を起こしに行きましょう。」

「うん。私がここを片付けるから先に準備しておいて。」

「はい、よろしくお願いしますね。」



コンコンと部屋の扉をノックする。



「お嬢様ー朝でございます、入らせていただきますよ?」

「いいわよ、入りなさい!」



お嬢様が先に起きているなんて珍しいですね。まあ、今日の予定からすると納得ですけれど。



「おはようございます、お嬢様。それにしても本日は珍しく早起きですね?」

「まるで私が一人では起きられないような言いようね、まあいいわ。」

少し不満そうに私をその緑の双眸が軽く睨んでくる。


「それよりも、ん」と手を差し出すお嬢様。

そのしぐさに私は、そのしぐさも少々お子様のような雰囲気がしますが、

そこもお嬢様のチャームポイントですかね。



「いつもの紅茶ですね。少々お待ちください」

入口付近に控えているユアさんにアイコンタクトで用意するようお願いする。


「お待たせ致しました。では、ここからはユアさんにお任せしますので退出致します。」

「ええ、それでいいわ」

「畏まりました。ではまた後程。」



私の言葉に満足げに頷き、気品あるしぐさでカップにその艶やかなくちびるをつけ紅茶を楽しまれるお嬢様を見ながら、部屋から出て父である執事長に今日の予定を確認しに向かう。





アルが退出したのを確認し椅子に深く身体を預ける。



「今日はついに成人の儀ね」

 「そうですね…ルースお嬢様」

 「この日を待ち望んでいたけれど、いざ当日となると不安だわ。」

 「いくらルースお嬢様とはいえ神にまでわがままは言えません…」

 「そんなことするわけないわ!それにしても言葉遣いは敬ったものだけど、そのからかう態度は変わら

ないのは安心だわ」

 「うん…ルースとは運命共同体という認識…」

 「ええ、ユアがそのことを覚えてくれているなら大丈夫だわ。これからもアルとのことよろしくね。」

 「もちろん…アルのことは私が守り続ける。」



その後は他愛もない内容の会話をしアルが戻るのを待つ。





父から聞いた今日の予定を書いた手帳を開きながらお嬢様に説明し食堂に案内する。

その最中、懐中時計で時間を確認し、まだ余裕があることに心の中で安堵する。



その光景を後ろから眺めて、所々新しい部品に交換されているが、大事にしているのが伝わってくるその時計を見つけて私自身にもう少しその優しさをストレートに伝えてくれないかしらと思いながら、その時計に羨ましいオーラを纏ったジト目で視線を送った。



そして、食事が行われる部屋の前に着く。



「ルースお嬢様をお連れしました。」

すると、部屋の中から旦那様であるジェスタ様のお声が扉越しにこちらへ届く。

「うむ、入りなさい」という言葉を聞き扉を開けお嬢さまをお通しする。



部屋の中には、真ん中に置かれた10人程が一度に使用しても余裕があるサイズのテーブルが一つと家族分の席数である四つの椅子。

そのテーブルの上座に用意された椅子にジェスタ様が座られ、その斜め前に奥様であるサエラ様が座られている。空いている二つの椅子のうちお嬢様の席と王都に住んでいて今はいない長男のノーク様の席と間違えないように案内する。



サエラ様は、ユアさんの伯母にあたる方でもある。

その容姿は、ユアさんと同じ髪色で、その大海原を彷彿とさせる御髪を腰元まで伸ばし、

お嬢様と同じその翡翠のような色の瞳でユアさんとは違い、いつもにこやかで、

暖かな太陽を思わせる笑顔が、その周囲に穏やかな空気を漂わせる。

背丈はお嬢様とほとんど変わらないのですが、服装についてはシンプルだが、気品ある緑を基調にしたワンピース風のドレスを着こなし、その胸元には、母性のかたまりが鎮座されておられる。



そのサエラ様の正面の椅子を引きお嬢様をご案内し終わったことを確認し、

後は、その部屋に元々からおられるメイドの方々に引き継ぎしようと一歩引いたとき、

ジェスタ様がにこやかな表情で言った。

 「アル、君も一緒に食べないかい?」

 「申し訳ございません。私は、ご一緒できる身分ではございませんので」

真面目な顔で固辞する。

といういつものやりとりなので、ジェスタ様も、

 「そうか、なら仕方ないね。すまなかったな、もう下がっていいよ」と一瞬、

目を伏せるも気をとりなおして仰る。

 「では、失礼いたします。」と扉の前で一礼し退出した。



その足で、隣の使用人控室に入ると、すでにユアさんが部屋に置かれた

6人程が一度に仕えるテーブルに突っ伏しているため

テーブルの一角がユアさんの髪によって海のようになっている。



 「アル、私にも紅茶を所望する。」

 「はいはい、いつものですね。」

 


そのころ隣の部屋で食事の配膳待ちをしている三人。



 「父上、またアルを困らせることを言うのね。そろそろ私にもその行動の真意を教えてくれてもいいん

じゃないですか?」

「ルースも今日で成人だしね、わかった。今夜理由を話そう。けっして誰にも漏らしてはいけない秘密

をね。」

 「ええ、話していただけるならそれで構いませんわ。」





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